「安い先生がいるんですよね」と言われた瞬間の、あの胸の痛み
「前にお願いした先生、もっと安かったんですけど…」という一言。これ、地味に効きます。なんというか、胸の奥に小さな刃を突き立てられるような気分になります。悪気があるわけじゃないのは分かってます。でも、その一言に、こちらの積み重ねや丁寧に積み上げてきた日々がスルッと無視されたような気がして、やるせない気持ちになるんです。
価格で比べられる現実に、思わずため息
わかってます。価格は大事。私だって買い物するときは値段を見る。でも、こと司法書士業務において、「安いかどうか」だけで判断されるのは正直しんどいんです。安さの裏にある業務の負担や責任を考えると、そう簡単に値段だけで決められるものじゃないのに。
値段＝価値だと思われてしまう辛さ
「安い＝良い」と思われてしまうのは、現場に立つ者としては悲しいものです。たとえば、ある依頼者が過去に頼んだ先生がとても安かったとのこと。でもよくよく話を聞くと、戸籍の不備が見逃されていたり、内容にミスがあったり…。それでも依頼者の頭の中には「安く済んだ」という記憶だけが残っている。やりきれないですよ。
その場で何も言い返せなかった自分
「〇〇先生はもっと安かった」と言われたとき、私は笑ってごまかしました。本当は「それって本当に大丈夫だったんですか？」と言いたかった。でも、言えば言うほど自分が小さく見える気がして、結局黙ってしまった。後からモヤモヤが残って、帰り道の車の中で深いため息が出ました。
なぜ「安さ」が先に出てくるのか
お客様が価格を重視するのは、当然といえば当然。でも、どうしてそこまで「安いかどうか」が先に来るのか。それは、司法書士という職業の中身が、まだまだ社会に知られていないからなのかもしれません。見えない価値は、伝えなければ伝わらないんですよね。
お客様の心理と、私たちの見えない苦労
お客様にとって、手続きは「終わって当然のもの」です。でも、こちらは見えないところで何十通もの戸籍を集め、申述書を書き、期限管理をし、役所とやり取りして…。その裏側はほとんど見えません。だからこそ、「安さ」で比較されやすいのだと思います。
比較されるサービスの本質が伝わらない
同じ「相続放棄」といっても、中身は事案ごとに全然違います。兄弟間で揉めていたり、本籍が複数県にまたがっていたり、特殊なケースでは何度も家庭裁判所とやり取りが必要だったり…。でも依頼者には「同じ手続き」に見える。そのギャップが苦しいのです。
「どこも同じでしょ」と思われる悲しさ
この一言ほどガッカリする言葉もありません。「結局どこでも一緒でしょ？」。いや、全然違うんです。ちゃんと聴いて、丁寧に進めて、もしものときは一歩踏み込んで対応する。そうした姿勢の差があるのに、それが見えづらい。見えづらいから、伝わらない。そして、安い方が「いい」とされてしまう。もどかしい限りです。
実際、安く請け負っている先生はいる
確かに、驚くほど安い料金で受任されている先生もいます。中には「大丈夫か…」とこちらが心配になるほどの額で。価格競争が激しくなると、どうしても「うちも下げなきゃいけないのか」と悩んでしまう。でも、それで本当に良いのでしょうか。
それでも、自分にはできない理由
私も何度か、「うちももう少し下げるか…」と考えたことがあります。でもそのたびに、現実に引き戻されます。今の金額でも、事務員さんのお給料や事務所の経費、そして自分の生活がギリギリ。安売りしてまで仕事を取りたくない。そう思うのです。
時間と責任の重さに見合う対価とは
たった1件の仕事でも、場合によっては丸1日以上かかることもあります。そして、その責任は非常に重い。もしミスがあれば、依頼者の人生に影響が出ることもある。そんな責任の重さに、見合う金額をいただかないと、正直やっていけません。
利益を削れば、誰かが疲弊する
「少しでも安く」と思っても、それはどこかで無理を強いることになります。自分か、事務員か、あるいは両方か。安さを優先するあまり、仕事の質が落ちるようでは意味がない。それは、依頼者にとっても良くないことだと思います。
安さではなく、信頼と丁寧さで選ばれたい
結局のところ、「この人に任せてよかった」と思ってもらえるかどうかが一番大事だと思います。価格ではなく、信頼。安さではなく、安心感。それを選んでもらえるような仕事をするしかないんだと、最近は強く思うようになりました。
「安いから頼んだ」ではなく、「この人だから頼んだ」と言われたい
「他より高かったけど、あなたに頼んでよかった」。そんな一言をもらえたとき、涙が出そうになります。価格競争に巻き込まれるのではなく、自分の価値で勝負できるよう、これからも丁寧に、地道にやっていくつもりです。
自分の強みは何か？と見つめ直す
ただ淡々と業務をこなすだけではなく、依頼者の話をじっくり聴き、不安を一つ一つ解消する。そういう姿勢が、結局は「この人に任せよう」という決め手になるのかもしれません。目の前の人と真剣に向き合う。それが、私の強みです。
まとめ：司法書士の「価値」は値段じゃない
「安かったから頼んだ」ではなく、「信頼できるからお願いしたい」。そう言ってもらえる仕事を目指して、日々奮闘しています。値段で比べられるとやっぱり苦しい。でも、自分の仕事を信じて、前に進みます。同じように感じている司法書士の方がいれば、少しでも共感してもらえたら嬉しいです。
