「あの確認、してませんでしたよね?」——連携ミスが生んだ一週間の空白

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「あの確認、してませんでしたよね?」——連携ミスが生んだ一週間の空白

「あの確認、してませんでしたよね?」——連携ミスが生んだ一週間の空白

士業同士の連携は、信頼と前提で成り立っています。ところがその前提が一つ狂っただけで、すべてがガタガタと崩れ落ちることもある。今回は、他士業との「確認不足」から始まった連携ミスにより、登記申請が一週間遅れたという、私自身の苦い体験を元に、連携の落とし穴と対処法について綴ってみたいと思います。これから司法書士を目指す方、すでに現場で奮闘している同業者の皆さんの参考になれば幸いです。

事の発端:ひとつの連絡漏れから始まった

一見些細なやり取りのすれ違いが、後に大きなトラブルへと発展する――そんなこと、ありませんか?今回のケースは、税理士との連携案件で、相続税の評価額に関する資料の最終確認をお願いしていたはずが、「え?確認依頼なんて来てませんよ」と言われたところから始まりました。私はGoogleドキュメントで共有したつもりだったのですが、税理士側はURLの通知メールを見落としていたようで…。口頭確認もしていなかったことが悔やまれます。

信じて任せたあの瞬間

「あの先生ならきちんとやってくれるだろう」——この油断が命取りでした。相手の力量を信頼するのは大事ですが、「ここまでお願いしてあるから大丈夫」と思い込んでしまった自分の責任も重い。あのとき、念のため電話一本でも入れておけば、こんな事態にはならなかった。忙しさにかまけて、「見なくても大丈夫だろう」という怠慢が、巡り巡って自分の首を絞める結果に。

「先方の仕事」と「うちの仕事」の境界線

登記申請の内容に関する資料が一部未確定だったとはいえ、私の業務には関係ない部分だと考えていたのもミスでした。結局、その資料が整わないと法務局へ提出できず、依頼人には「先生、進んでますか?」と何度も催促される始末。「税理士さんがまだで…」と説明しても、お客様にとっては「こっちの都合」なんですよね。誰の責任か、ではなく「結果として進んでいない」ことがすべて。つらいところです。

スケジュールはすでに詰まりきっている

私の事務所では、毎週の予定がほぼパンパンです。ちょっとした遅れが domino 倒しのように他の案件にも波及していきます。一週間の遅れというのは、たった七日ではなく、その後ろに控えていた複数の仕事の遅延リスクを意味していました。

一週間の遅れが意味するもの

一週間遅れただけで、顧客の信頼度はガタ落ちします。「まだ終わってないの?」「前回の先生はもっと早かったけどなあ」そんな言葉に胸をえぐられつつ、事務員さんと顔を見合わせる日々。案件単体で見ると些細な遅延でも、こちらからすると次の登記準備・決済・面談スケジュールへの影響が大きすぎる。正直、夜中にスケジュール帳をにらんで頭を抱えるしかありませんでした。

登記申請期限と顧客のプレッシャー

今回の案件では法定期限にはまだ余裕があったのが幸いでしたが、「できるだけ早くお願いします」と言われていた案件だっただけに、心理的プレッシャーが強かった。相手の期待に応えられないというストレスが、こちらの集中力をさらに削ぎ、別案件への影響も出始める悪循環。たかが一週間、されど一週間でした。

事務員のスケジュール再調整地獄

うちの事務所は事務員が一人だけ。彼女が作成したスケジュール表を、一から組み直すことになりました。電話連絡、郵送手配、相談日程の変更…。本当に申し訳なかったし、彼女の「またズレましたね…」という声に何も返せなかった自分が情けなかったです。

「連携」とは名ばかりの分業体制

士業同士の仕事は、確かに専門性に基づく分業体制です。しかし現実は「連携」なんて言葉が空虚に感じるほど、境界が曖昧で責任の所在がブレがちです。今回の件で、それを痛感しました。

士業同士でも、以心伝心は通じない

長年付き合いのある先生でさえ、「察して動いてくれるだろう」という期待は禁物でした。お互い忙しく、普段からチャットやメールでのやり取りに慣れてしまうと、細かい前提確認が抜けてしまいます。たとえば「この資料が届いたら進めます」と書いてあっても、「その資料は相手が用意する」と思い込んでいたら、その時点でストップしてしまう。言語化しなかったことは、なかったのと同じ。耳が痛いですが、これが現実です。

相手の「慣れ」による慢心

これは私自身にも言えることですが、「何度もやってるから大丈夫」と思っていると、逆に基本的な確認を怠りがちになります。今回も「またこのパターンか」と流してしまったことが、ミスの温床でした。士業って、慣れた案件ほど慎重にやるべきなのかもしれません。

言えなかった本音、ぶつけられた怒り

ミスの真因を自覚していても、なかなか相手には本音をぶつけづらい。かといって、顧客からの怒りは真正面から受けることになる。中間に挟まれた司法書士のつらさを、今回ほど痛感したことはありませんでした。

「確認しましたよね?」の一言が刺さる

「メール見ましたよね?」「データは共有してありますよ?」と言われて、心の中で「うっ…」とつぶやく。正直、詰められるのもつらいが、詰められる理由があるとさらにこたえる。しかも相手は悪気がないから、余計にしんどい。愚痴りたくもなります。

結局、矢面に立つのはこっち

どれだけ他士業のミスでも、最終的に依頼者が「連絡したのは先生ですよね?」と言ってくるのは当然で、どうにか矛先をかわしつつ、円満に進めようと必死でした。言い訳したい気持ちを飲み込んで、「すみません、こちらでも再確認いたします」と返すたび、心の中では自己否定の波が押し寄せてきました。

この経験から学んだこと

同じ失敗は二度と繰り返したくない。そう思って、今回の件を徹底的に振り返りました。ミスをゼロにすることは難しくても、「減らす」ことはできる。そのための習慣と考え方を見直す良い機会にはなりました。

連携の前提は「過信しないこと」

どんなに信頼している相手でも、「やってくれているはず」は禁句です。これは私自身に言い聞かせる意味で書いていますが、「確認したつもり」が一番危ない。だからこそ、些細な一言でも、しつこいくらいの確認がちょうどいい。過信は甘えです。

共有すべきは成果物ではなく、思考プロセス

「こう考えているから、こうしてほしい」と伝えることで、相手も背景を理解しやすくなります。たとえば「この資料が必要なのは、申請日との関係で…」と理由まで伝えておくことで、相手の行動も変わります。単なるToDoだけでなく、背景と意図を共有する意識が大事だと感じました。

後進に伝えたいこと:連携は「点検」とセットで

これから士業として働く人たちに伝えたいのは、「連携」は夢のような効率化手段ではなく、常に誤解の可能性がある「危うい橋」だということ。その橋を渡るなら、点検が必要なんです。

ミスは防げなくても、被害は減らせる

100%防ぐことは無理でも、被害を小さくすることはできる。たとえば、二重チェック、前日確認、進捗会議など、小さな習慣の積み重ねが、ミスの連鎖を防ぐ唯一の手段です。「やっててよかった」と後から思える仕組みを、今から作っておいてください。

「報連相」以上に大事なのは「疑うこと」

最後に。報連相はもちろん大事ですが、「本当に伝わっているか?」「相手はちゃんと理解しているか?」という“疑い”がなければ、報連相も意味を持ちません。少し疑って、もう一歩踏み込む。その一歩が、今回のような一週間の遅れを防ぐことになると、私は信じています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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