「笑顔で対応」って言うけど、こっちも人間なんです
司法書士って、黙々と書類仕事をしているだけに見られがちですが、実際は人との関わりがかなり多い仕事です。依頼者との面談、電話対応、役所や金融機関とのやりとり…。そのたびに「感じよくしなきゃ」「笑顔でいなきゃ」と、自分を抑えることが当たり前になっています。でも、こっちにも感情はあるし、忙しすぎて気持ちに余裕がない日だってある。そんな日にまで「笑顔で対応してください」と言われると、正直、きついんです。
笑顔はサービス?それとも義務?
いつの間にか求められる「感じのいい専門家像」
いつの頃からか、「先生業」は愛想も求められるようになりました。以前、依頼者に「前の司法書士さんは、もっと愛想がよかった」と言われたことがあります。書類は正確だったはずなのに、印象が悪かったらマイナス評価なんですよね。笑顔がサービスというよりも、もはや義務のように感じる瞬間でした。「感じよくしなきゃ」がプレッシャーになり、仕事そのものが重くのしかかってくることもあります。
ニコニコしてればいいってもんじゃない
たとえば、相続の相談に来た方が、話しながら泣き出すこともあります。そんなとき、「笑顔で対応」は逆効果ですよね。でも「柔らかい表情で接してください」と言われると、無理にでも口角を上げて対応しなければならない気がしてしまう。状況や空気に合わせて自然に表情を変えることは大切だと思うけれど、「とにかく笑っていればOK」みたいな期待には、違和感しかありません。
現実は「笑顔」で済まされない日々
時間がない、余裕もない、でも笑顔
先日、朝から役所2件まわって、帰ってきたら電話3件、メールが10件以上。昼食も取れず、息つく暇もない。そんな状況で、急な来客に「こんにちはー!」と満面の笑みで対応するなんて、できるわけがないんです。でも、無意識に作り笑いしてしまう自分がいて、それがまた疲れる原因になっている気がします。笑顔はエネルギーを使うんですよね。エネルギーが尽きた状態で笑うって、想像以上にキツい。
依頼者の無茶ぶりに、笑うしかない矛盾
「今日中にできませんか?」「すぐ登記してもらわないと困るんです」——。そう言われても、書類が揃ってなければ無理ですし、法務局の締め時間もある。それを丁寧に説明しても、「他の事務所はやってくれた」なんて言われたりして、こっちは苦笑いするしかない。怒っても仕方ないけど、笑顔で対応するのも消耗する。このジレンマ、同業の方ならわかってくれると思います。
自分を抑えて笑ってると、心が削れていく
笑顔の仮面をかぶり続けるのは、思っている以上に自分をすり減らします。「ちゃんとやってるのに報われない」と感じたときほど、笑顔が虚しくなる。感情を押し殺して仕事をしていると、自分が機械になったような気がしてしまいます。どこかで限界を迎える前に、見直さなければならない時期なのかもしれません。
笑顔が疲れるって感じた瞬間
「先生はいいですね」って軽く言わないでほしい
ある日、相続の相談に来た方が「先生はいいですよね、座って話すだけでお金が入るんだから」と言ったんです。もちろん悪気はないのかもしれませんが、グサッときましたよ。その日は朝から書類作成に追われて、昼飯もろくに取れなかった日。ヘトヘトの中で言われた一言に、笑顔で返事はしたものの、心の中では「こっちの苦労、知らんくせに」と叫んでました。
我慢の末に起きた、あるトラブル
穏やかに対応してたのに、なぜか怒られた話
ある登記の件で、相手の誤解を正そうと丁寧に説明していたら、突然「上から目線で感じが悪い」と言われました。言い方も丁寧だったつもりだし、もちろん笑顔も絶やさなかった。でも、相手にとってはそれが逆に「作り笑い」と取られたんでしょうか。もう、どうすればいいのかわからなくなりました。笑顔もリスクになるって、どういうことなんでしょうね。
相手に「舐められる」ことへの恐れ
常に穏やかにしていると、「この人なら押せばどうにかなる」と思われがちです。事務員にも「もっとはっきり言ってもいいのでは?」とアドバイスされることもあります。でも、強く出るのは苦手なんですよ。結果、無理なお願いを断れず、自分だけが疲れていく。このままでは心身ともにすり減っていく一方です。
じゃあ、どうしたらいいんだろう
笑顔でいることが悪いわけじゃない。でも「無理して笑う」のは、自分を壊すことにつながる。だったら、少しスタンスを見直す必要があると思うんです。依頼者にも本音で接することが、誠実な対応なんじゃないかと。完璧じゃない自分を認めるところから、楽になる道が見えてくる気がします。
「笑顔じゃなくても誠実」ってスタンスのすすめ
無理なときは「笑わない選択」もあり
最近は、「今日は余裕がないから、無理に笑わない」と自分に言い聞かせるようにしています。冷たくするわけではない。でも、真剣に向き合う姿勢が伝われば、それでいいんじゃないかと思うようになりました。実際、無理に笑わないほうが信頼される場面もありました。感情に正直なほうが、かえって人間味が伝わるのかもしれません。
事務員さんにも同じプレッシャーをかけていないか
一人だけ雇っている事務員さんに「笑顔でお願い」と頼んでしまったことがあります。でも、自分が笑えない日もあるのに、人にはそれを求めるのは違うと思い直しました。無理な注文だったと反省しています。事務所の中くらい、素の自分でいられる空間にしてあげたい。小さな組織だからこそ、気づけることがあると感じました。
自分を守るためのちょっとした工夫
時間の余裕が心の余裕になる
最近は、意識的にスケジュールに「余白」を作るようにしています。無理に詰め込まず、30分でも空きを入れる。その時間に少し深呼吸して、ぼーっとしてもいい。たったそれだけで、次の依頼者に笑顔で向き合えることもあるんです。余裕のない自分を責めるより、少しだけ整える工夫のほうが現実的です。
笑えないときの「逃げ道」を作っておく
「ちょっと席を外しますね」とか「確認してきます」と言って、その場を離れることもあります。無理に笑いながら話すより、いったん離れて気持ちを落ち着けたほうがいい。これ、逃げではなく「戦略」だと思ってます。感情が荒れているときに無理しても、うまくいかないですから。
「笑顔で対応できない日があってもいい」そう思えたら少し楽になる
司法書士だって人間です。いつも完璧じゃなくて当然。笑顔が出ない日も、疲れてピリピリする日もある。それを「ダメだ」と思うんじゃなく、「そんな日もある」と認めてあげることが、自分を壊さないために必要なんだと思います。笑顔でいられるときだけ、笑えばいい。それでいいんです。
完璧じゃなくていい、そんな司法書士もいていい
誰もがテレビに出てくるような理想の専門家である必要なんてない。無理せず、でも誠実に。自分が心を込めて仕事していれば、きっと伝わる。それを信じて、今日も事務所のドアを開ける。笑顔じゃないかもしれないけど、それでも、やるべき仕事をやっている。それで十分だと思うようになりました。