「何してるの？」がなぜこんなに答えにくいのか
「何のお仕事されてるんですか？」という質問。世間話のように軽く聞かれるその一言が、なぜかこちらの胸にズシンとくる。司法書士という仕事は、説明すればするほど相手の目が泳いでいくことが多く、正直うんざりすることもある。けれど、誤解されたまま放っておくのも気持ちが悪い。そんな板挟みに、今日も心が摩耗する。
日常業務は多岐にわたるけど、一言で言えない
「登記やってます」「相続の相談に乗ってます」と言っても、今ひとつ伝わらない。実際のところ、業務は相談対応から書類作成、法務局とのやりとり、登記完了後の書類送付まで多岐にわたる。それを一言で表現しようとすると、どうしても漠然とした言い回しになる。しかも、その説明すら途中で「？」という顔をされることが多い。
“登記の専門家です”では済まないややこしさ
「不動産登記の専門家です」と言っても、相手の反応は「へぇ～」で終わる。たまに「土地家屋調査士さんとどう違うんですか？」と聞かれたらまだマシなほう。もっと厄介なのは、「それって弁護士みたいなもんですか？」と聞かれるとき。ちがう、と答えると次にどう言えばいいかわからなくなる。この説明のややこしさ、地味に精神を削られる。
言葉に詰まる瞬間に感じる「なんか虚しい」
自分では一生懸命やっている仕事なのに、それを簡潔に説明できないというのは、何かこう、自分の存在価値を問われているようで虚しくなることがある。特に、初対面の人と話す場や、異業種交流会などでは、その気まずさがさらに増す。
自分のやってる仕事に自信がないわけじゃないけど
日々クライアントと向き合い、複雑な手続を整理し、期限に追われながら正確に業務をこなしている。自信がないわけじゃない。でも「何してるの？」と聞かれたとき、自分の口から出てくる言葉が弱々しく感じるのは、自分でも理由がよくわからない。もしかしたら、他人にどう見られているかを気にしすぎているのかもしれない。
“誰かの役に立ってる”感が実感できない日もある
登記が終わっても「ありがとう」の言葉ひとつない日もある。それがこの仕事の宿命なのは理解しているけれど、何かを完了させた達成感を感じる場面が少ない。そんな日が続くと、「自分、何やってるんだろうな」とふと思う。地味で見えにくい仕事ゆえの虚無感は、時に心を重くする。
司法書士の仕事って、そもそも人に説明しづらい
この職業の特殊さは、「知られていない」ことにある。相続、登記、供託、成年後見――それぞれ聞いたことはあっても、具体的に何をしてくれる人かを知っている人はほとんどいない。だからこそ説明しづらいし、理解してもらうまでに時間がかかる。
「司法書士って弁護士とは違うんですよ」から始まる説明地獄
説明しようとすると、まずは弁護士との違いから入らざるを得ない。「裁判はやりません」「登記のプロです」と言っても伝わらない。「じゃあ行政書士とは？」と質問が飛んでくるたびに、こちらも頭を抱える。役割の違いを説明しても、やっぱり「よくわからない」という反応が返ってくる。それが現実。
登記？供託？成年後見？聞いたことはあるけど…
一般の人にとって、これらの言葉は人生で数回触れるかどうかの存在。だからこそ、馴染みがなく、記憶にも残らない。たとえば「供託って何？」と聞かれて説明しても、「ああ、そういうのがあるんですね…」で終わる。そのたびに、何か説明を求められているというより、「知らなくても生きていけること」として処理されている気がしてしまう。
仕事の9割が「知られてないこと」ばかり
登記にしても後見にしても、実務の中身は世間からはほとんど見えない。クライアントにとっても「必要だからお願いする」だけで、その内容や工程を知りたいわけではない。だからこそ、「司法書士って何する人？」と聞かれると、自分のやってることを誰にも伝えられていない気がして、虚しさが残る。
名刺交換のたびに押し寄せる「説明疲れ」
名刺に「司法書士」と書いてあるだけで、「え？それってどんな仕事なんですか？」と聞かれる。ありがたいことではある。でも、同じ説明を何十回も繰り返していると、こちらのテンションも下がっていく。そろそろ、音声ガイダンスでも作りたいくらいだ。
「それって弁護士と何が違うんですか？」の無限ループ
「弁護士とは違うんですよ」と言うと、たいてい「じゃあ何ができるんですか？」という質問に続く。そのたびに、「不動産登記、商業登記、相続の手続き…」と説明するけれど、相手の目は次第に泳ぎ始める。きっと、わかろうとしてくれてはいるんだろうけど、伝える側の疲労感はなかなかのものだ。
簡単に説明しようとして失敗する、あの感じ
何度も経験したことがある。「なるべく簡単に」「一言で伝えるようにしよう」と思って話すと、逆に曖昧になってしまい、結果として誤解される。「法律関係の仕事です」「不動産の名義変更とかやってます」などと言うと、「ああ、不動産屋さん？」と返ってくる。あのズレが、心に刺さる。
なぜ「何してるの？」と聞かれると詰まってしまうのか
この一言に言葉が詰まるのは、きっと自分の中でまだ仕事をうまく言語化できていないからだと思う。日々の業務に追われる中で、自分が何をやっているのかを省みる時間はほとんどない。それゆえに、突然問われると答えが見つからない。
自分の中でも整理できていない“職業観”の問題
「この仕事はこういうものだ」と自分の中で確信を持てていれば、たぶんすっと言葉が出てくる。でも、仕事の中にはグレーな部分や、意味のあるようで意味がないルーチンもある。それらを抱えたまま、「説明」だけを求められると、言葉に詰まるのは当然かもしれない。
「忙しい＝説明できない仕事」になってしまっている
バタバタと書類をさばき、電話を受け、外出して…そんな日々の中では、冷静に「自分は何をしているのか」と考える余裕がない。だから、「忙しいですね」と言われたとき、「ええ、まあ…」とだけ答えてしまう。結果的に、説明力のない人間に見られるのも辛いところだ。
