「ちょっとした気の緩み」が命取りになる世界
司法書士という仕事は、ぱっと見には地味かもしれませんが、実際は一瞬の判断ミスが大ごとにつながる職業です。日々の業務に追われながら、細かな確認を怠ると「えっ、あれ? なんで?」という事態が本当に起こるんです。毎日が綱渡りのようで、常に気を張っていなければいけない。それが分かっていても、人間ですから気は緩む。それが一番怖いんです。
気を抜けないのに、ずっと張り詰めていられるわけがない
気を張っていることに疲れた瞬間に、「これくらいなら大丈夫だろう」と判断してしまうことがあります。とくに、締切間際だったり、ほかの案件とバッティングしていたりすると、つい「このチェックは省略してもいけるかも」と思ってしまう。でも、その「いけるかも」が後で自分の首を絞めるんです。精神的にも肉体的にもギリギリでやっているのに、誰もそのことには気づいてくれないというのも、地味にきついところです。
本当にあった、あの「ヒヤリ」とした瞬間
去年のことですが、登記完了証を依頼者に届けようとした際、ふと目に入った申請書類の写しに見覚えのない間取り図が添付されていたんです。確認したら、全然別の案件の資料が紛れ込んでいた。慌てて止めて、差し替えて…依頼者にはバレませんでしたが、あの時気づかなければ、完全に別人の情報を提出していたところでした。寒気がしました。あれがほんの一瞬の「気の緩み」です。
見落としから始まる地獄:ある登記の書類ミス
これは数年前の出来事ですが、未だに夢に出てくるほど後悔しています。原因は「いつものやり方」で処理したことでした。確認不足のまま提出した書類に、重要な記載漏れがあり、法務局から補正の電話がかかってきたんです。それ自体はよくあることかもしれませんが、その登記は急ぎの案件で、依頼者の予定にも影響が出てしまった。結果として「信用を失った」という実感が残ったんです。
慣れと油断が重なった午後三時
その日は朝から立て込んでいて、ようやく一段落ついた午後三時、なんとか片付けようと焦っていたのを覚えています。「まぁ大丈夫だろう」「どうせ法務局も気づくだろう」なんて気持ちが、頭のどこかにあったんでしょうね。結局、補正に対応するために二度手間、三度手間になり、依頼者からは「適当な仕事」と見られてしまいました。自分が一番情けなかったです。
訂正印ひとつで済まない、信用の揺らぎ
訂正印で修正して再提出すれば済む話、と簡単に考えてはいけません。依頼者にとっては一生に一度の登記かもしれない。こちらが「慣れていること」でも、相手から見れば「不安要素」にしかならないんです。信用は、1回の小さなミスでも簡単に失われます。たとえ取り返したつもりでも、その人の心の奥には「この先生、またミスするかも」という不信感が残り続けるんですよね。
「事務員に任せた」のに…責任はやっぱり司法書士
私のような小さな事務所では、事務員さんが本当に貴重な存在です。でも、どれだけ任せても最終確認を怠ってはいけない。何かあれば責任はすべて司法書士に跳ね返ってきます。私自身、それを身をもって痛感した経験があります。
任せると甘えるの境界線が難しい
「これはあの子がやってくれてるはず」と信じた結果、確認不足で資料にミスが見つかったことがありました。もちろん本人も責任を感じていましたが、結局お詫びに出向くのは私。信頼しているからこそ任せるけど、任せたからといって全てを「見ない」ではいけないんです。どこまで口を出すか、どこまで手をかけるか。そのバランスが本当に難しい。
事務員も疲れている。そりゃそうだ
事務員さんだって人間です。私以上に気を張って入力をして、電話対応もして、急ぎの案件が重なれば休憩も取れない日だってある。そんな中でミスが出るのは当たり前。でも、それを「甘え」と断じるほど、私は鬼じゃありません。ただ、仕事の性質上「言い訳が効かない」ことが多いのが、この職業の厳しさですね。
それでも最後に怒られるのは自分
依頼者は事務員が誰かなんて知らないし、関係ありません。見積書の説明も、登記の補正も、結局は「先生がやったこと」として見られる。それがこの仕事の宿命です。だからこそ、どんなに忙しくても、チェックだけは自分でやらなきゃいけない。でもそれが本当にしんどい。
時間に追われた末路:焦ると事故るのは仕事でも一緒
よく「スピード感が大事」と言われますが、司法書士業務においてはスピードと慎重さの両立が求められます。正直、矛盾してます。でも、依頼者からは早く終わらせてほしいと言われ、法務局からは正確さを求められる。焦るほどミスが増えるのに、時間が足りない。
「午前中には終わると思ってた」は信用できない
「午前中には登記が完了すると思います」と言ってしまったばかりに、午後になっても終わらず、依頼者から怒りの電話がきたことがあります。自分では精一杯やっているつもりでも、登記の進行はコントロールできない部分もあるんです。それでも「言ったよね?」と責められる。つい見通しを甘く見てしまった自分を恨みました。
焦って処理した登記が差し戻されたときの絶望
急ぎの依頼で、昼食も取らずに処理して提出した登記が、翌日に差し戻されたときの絶望感は、今思い出しても胃が痛くなります。「ここまで急いで、なんでダメなんだ」と自分に腹が立つ。でも、誰も助けてくれない。冷たい文言の補正通知書を前にして、ただただ肩を落とすだけです。
ミスの代償と回復にかかるコスト
一度起きたミスは、謝ってすぐにチャラになるわけではありません。対応に時間がかかり、依頼者との信頼関係にもヒビが入り、精神的なダメージも残ります。最悪の場合、取引先や紹介者からの信頼をも失う可能性があります。
修正にかかる時間は想像以上
たった一文字の誤記でも、訂正のためには法務局に再提出し、補正理由書をつけて、関係者全員に報告し…と、何時間、時には何日も無駄になります。それを防ぐために、最初から丁寧にやれという話ですが、現実はそう簡単じゃない。
依頼者の信頼は、一度崩れると戻らない
一度でも「この先生、大丈夫かな」と思われると、その印象はなかなか拭えません。完了後のフォローや丁寧な説明を尽くしても、「ミスをする先生」というレッテルは、しつこく心に残るんです。
じゃあどうする?気の緩みを減らすための小さな工夫
100%ミスを防ぐことは不可能です。でも、ミスを減らす工夫や仕組みなら作れます。私は最近、いくつかのルールを自分なりに試してみています。どれも地味ですが、確実に効果は感じています。
一人でやらない。声に出して確認する文化を
独り言のようでもいいから、書類内容は声に出して読み上げて確認するようにしています。事務員にも「読み合わせしよう」と声をかけます。一度、口に出すだけで、違和感に気づく確率が上がります。二重チェック、大事です。
「疲れてるときはやらない」も勇気ある判断
仕事が詰まっていると、つい「今のうちに処理しよう」となりがちですが、疲れてるときは本当に判断力が鈍ります。無理やりやるより、一呼吸おいて翌日に回す勇気を持つことが、逆に信頼につながると感じています。
午後4時の作業はリスクが高い説
統計を取ったわけではないですが、ミスを起こす時間帯は圧倒的に「午後4時以降」に集中している気がします。集中力も落ちて、疲れも出てくる時間帯。だから最近は、重要書類は午前中に仕上げて、午後は「雑務モード」にしています。
まとめ:ミスは仕方ない。でも連発しない仕組みが必要
どんなに気をつけても、ヒューマンエラーは起こります。問題は、それを繰り返さないこと。自分を責めすぎず、でも改善策を考えること。そのバランスが、この仕事を続けていくうえで一番大切なのかもしれません。
自分を責める前に、環境を見直す
一人で抱え込んでいたり、無理なスケジュールを組んでいたりしていないか。気の緩みは「環境が限界に来てるサイン」かもしれません。忙しさに飲み込まれて、ミスを自分のせいだけにしないでください。自分の身を守るのも、司法書士の仕事の一部です。