「何がそんなに大変なんですか？」──その一言が一番しんどい
「何がそんなに大変なんですか？」──この言葉、冗談のつもりで言われたのかもしれません。でも、その日は本当に疲れていて、気力も尽きかけていて、その一言で心がポキッと音を立てて折れた気がしました。司法書士という仕事は、表に見える派手さもなく、かといってラクなわけでもない。言葉で説明しようとしても、伝わらない。だからこそ、この一言は痛かったんです。
言葉のナイフは、思ったより鋭い
「そんなに大変なの？」と言われるたび、「うまくやれてない自分が悪いのか」と思ってしまいます。みんなそれぞれ大変な中で仕事をしているのはわかっています。でも、自分の大変さが“伝わらない”という孤独感は、想像以上に堪えるんです。相手に悪気がないほど、逆に苦しい。笑って流せる余裕がない時も、あるんです。
外からは見えにくい司法書士の“地味ハード”な日常
司法書士の仕事って、ぱっと見すごく地味です。地味だけど、負荷は重い。ずっとパソコンに向かって書類を作り、法務局や金融機関に走り回り、依頼者と電話で調整。ミスが許されない仕事のわりに、「ただの事務屋さんでしょ？」と思われがち。でも、その“ただの”の裏に、どれだけのプレッシャーと根回しがあることか。
書類の山、電話の嵐、そして誰も感謝しない
朝イチでFAXが数枚届き、その対応に追われつつ、すぐに電話が鳴る。内容は「今からでも登記間に合いますか？」という無茶ぶり。午前中の予定はすべて崩れ去り、後ろにずらした仕事に追われて気づけば昼ごはん抜き。こんな毎日を繰り返しても、誰も「ありがとう」なんて言わない。「やって当たり前」で進むのが、この仕事なんです。
「午前中に登記完了お願いします」に潜む圧力
「午前中に完了させてください」と、軽く言われる。でも、それって昨日の夕方に依頼された案件なんですよ？タイムスケジュールをどう圧縮しても物理的に厳しい。しかも、法務局の混み具合もある。こっちは魔法使いじゃないんです。それでも断れば「対応が遅い」と言われる。逃げ場がないって、こういうことです。
誰にも頼れない、ひとり司法書士のリアル
事務所には事務員さんがひとり。彼女もフルで頑張ってくれていますが、当然すべての判断は私に返ってきます。登記内容の確認、期限の把握、クライアントとの折衝。すべてが“自己責任”。「何かあったら困るのは先生ですから」と言われ続けてきたせいで、どこか常にピリピリしている自分がいます。
事務員がいても、責任は全部こっち
ミスが起きたら、「先生がチェックしなかったのが悪い」となる。そういう空気、ありますよね。もちろん最終確認は私の仕事。でも、人間ですから見落としもある。そういう時に「お互い様」とはならない。ひとり司法書士のつらさは、何かあった時に全部自分に返ってくるという孤独です。
ミスが許されないのに、睡眠時間は削られていく
夜中、寝る前に「あの案件、添付書類これでよかったっけ？」と不安になって、結局またパソコンを開いて確認する。そんな日が珍しくないです。ミスを防ぐには徹底的に見直すしかない。だから、睡眠時間を削るしかなくなる。健康？ 休養？ そんな贅沢、してる余裕なんてありません。
「専門職だから稼げていいですね」と言われて
外から見ると、「司法書士＝安定して稼げる専門職」というイメージがあるようです。確かにそれなりの収入はあります。でも、そこに至るまでのストレスや工数、費用や責任をまるごと無視して“ラクして稼いでる”ように思われると、少し心がすり減ります。
報酬とストレスは、決して釣り合わない
たとえば、相続登記の依頼で一件10万円。高いと思われるかもしれません。でも、戸籍を何十通も取り寄せ、関係者と連絡をとり、書類の矛盾を整理し、法務局とも調整。日数も手間もかかる。その報酬が高すぎると思われるなら、正直、やってられません。
無料相談という名の“無償労働”が日常化している
地域の相談会や電話での問い合わせ、「ちょっとだけ教えてほしい」がどんどん増えています。「その程度でお金取るんですか？」という空気もある。でも、その“ちょっと”の裏には、資格と経験が詰まってるんです。それを“善意”でずっと提供し続けることに、正直限界を感じることもあります。
司法書士を目指しているあなたへ伝えたいリアル
司法書士という仕事に憧れをもっている人へ。「人の役に立ちたい」と思う気持ちは尊い。でも現実は、想像より泥臭く、神経もすり減ります。それでもやっていけるのか、自分に問い直してから進むのがいいと思います。
理想と現実のギャップは、けっこう深い
「法律に詳しくて、困ってる人を助ける仕事」と聞くと、スマートに見えるかもしれません。でも、実際は「納税証明書どこ！？」とか「また銀行から書式変更の連絡！？」という日常の連続です。法改正にも常に追いつかなきゃいけない。かっこよさよりも、地道さに耐えられるかがポイントです。
「人の役に立ちたい」は崩れやすい動機かもしれない
人の役に立ちたいという気持ちは、最初のモチベーションとして素晴らしい。でも、その気持ちだけでやり抜くのは難しいです。なぜなら、感謝されないことも多いし、「ありがとう」の前に「まだですか？」が来ることもあるから。支えになるのは、意外と「自分がこの仕事を納得してるか」だったりします。
それでも続けているのはなぜか
ここまで読んで、「じゃあなんで辞めないの？」と思った方もいるかもしれません。確かに何度も「もう無理かも」と思いました。でも、結局戻ってくるんです、この仕事に。たぶん、どこかで「やっぱり自分にしかできない仕事だ」と思ってるんでしょうね。面倒くさいけど、誇りもあるんです。
それでもやっぱり、やめられない理由がある
苦しい、しんどい、もうやめたい…そんな気持ちを抱えつつ、それでもこの仕事にしがみついている自分がいます。正直なところ、自分でも理由はうまく説明できない。でも、やっぱりこの仕事には、自分なりの意味と、譲れない想いがあるのかもしれません。
たまにくる「ありがとう」が支えになってしまう
依頼者に言われたたった一言の「助かりました、本当にありがとう」。その一言だけで、数週間の疲れが少し溶ける気がします。不思議なもので、それがあるからまたがんばれるんです。たぶん、これが司法書士を続ける人間の共通点かもしれません。
自分の仕事にしかできないことがある
誰でもできる仕事ではない、という自負はあります。責任も大きいけど、その分「自分だからこそできた」と思える瞬間もある。それがすべてを帳消しにしてくれるわけではないけど、前に進む小さな原動力にはなってくれます。だから、今日もまた、登記の準備を始めるんです。
