「先生、やってしまいました…」—依頼人が書類にコーヒーをこぼした日の顛末

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「先生、やってしまいました…」—依頼人が書類にコーヒーをこぼした日の顛末

「先生、やってしまいました…」—依頼人が書類にコーヒーをこぼした日の顛末

地方の小さな司法書士事務所で働いていると、毎日がちょっとしたトラブルの連続です。45歳、司法書士歴20年。これまでいろんな場面に立ち会ってきましたが、今回は「依頼人が書類にコーヒーをこぼした事件」について語ってみようと思います。思わず「うわっ」と叫びたくなる場面でも、顔に出せないのが司法書士という生き物。今日はそんな“あるある”の一幕を、少し愚痴っぽく、でも優しく共有します。

書類の敵、それは油断とコーヒー

大事な書類を目の前にしたとき、人は慎重になる…はずなんですが、現実はそう甘くありません。ある日、ある依頼人が、私の机の上に置かれた登記書類の上に、まるまる一杯のアイスコーヒーをぶちまけてくれました。なぜかその人、緊張して手が震えていたんですね。そして、震える手から紙コップがポトリ。バシャ。そこからはスローモーションのような光景でした。

なぜ紙は液体を吸うのか(当たり前だが悲しい)

紙がコーヒーを吸うのは当然のことです。でも、それが印刷されたばかりの公的書類だった場合、こちらとしては「吸うな!拒め!」と叫びたくなる。あの吸水力、なんと恨めしいことか。滲んで読めなくなった文字、茶色く変色した角。心の中では「終わった…」と思いながら、顔は微笑みを保つのが司法書士のつらいところです。

「机の上に置いておいた自分も悪い」と思える日は来るのか

依頼人が悪気がなかったことはわかっています。でもやっぱり、どこかで「なんであのタイミングでそんな場所にコーヒーを…」と思ってしまう。いや、私だって油断していました。せめてファイルに入れておけば、横に置いておけば、そんな後悔がぐるぐると頭を回ります。反省と苛立ちの交差点。それがあの日の午後でした。

依頼人に過失があっても怒れないのが司法書士

こういう時、感情をぶつけられたらどれだけ楽か。でも、私たちの仕事は感情を抑えることから始まります。相手は緊張していて、謝罪の言葉を何度も口にしている。こちらとしては「もういいですよ」としか言えません。怒るより、諦めて次の対処を考える。そんな癖が染みついてしまっているのかもしれません。

「すみません」よりも「大丈夫です」の言葉が先に出てしまう

依頼人が「…」と消え入りそうな声で言った瞬間、私の口から出たのは「大丈夫ですよ、大したことありませんから」という言葉。でも正直に言えば、大したことはあります。書類は再発行。予定は狂う。でも、その場では相手を責められない。そういう仕事なのだと、自分に言い聞かせています。

事務所内に漂うコーヒーの香りと諦めの気配

濡れた書類をティッシュで抑えながら、事務所に広がるコーヒーの香り。普段なら「ホッとする香り」なのに、この日ばかりは苦々しい。横で事務員さんがさっと雑巾を持ってきてくれる。この一連の動きが、何とも言えない哀愁を醸し出す。沈黙と、軽いため息。それが午後のBGMでした。

再発行の手間と精神的コスト

書類の再発行って、簡単そうに思えるかもしれませんが、実際はなかなかの手間です。特に遠方の役所の場合、郵送依頼か、直接出向く必要がある。スケジュールも狂いますし、何よりも“信用”という目に見えないものが傷ついてしまうのです。

市役所は遠い、窓口は混む、そして待たされる

再発行のため、急遽午後の予定を変更し、市役所へ。車で40分、駐車場は満車。ようやく受付を済ませたかと思えば「30分ほどお待ちください」。その30分が、まるで罰ゲームのように長く感じられます。手元には空になったコーヒーカップの幻影がちらつくばかりです。

再発行には「時間」と「信用」が削られる

書類そのものは再発行できます。でも、依頼人との信頼関係に微細なヒビが入るのが怖い。こちらが悪くないとはいえ、トラブルがあったという事実だけで、不安を感じる依頼人もいます。私は「大丈夫です」と笑いましたが、内心では「もうちょっと信用してくれるかな」と不安もあったのです。

事務員さんの対応力に救われる瞬間

私の事務所にはひとりの事務員さんがいます。この人がまた、よく気が利くんです。私が混乱しているときも、さっと動いて処理をしてくれる。今回の一件でも、彼女の存在に何度も救われました。小さな事務所には、小さなヒーローが必要です。

内心はプンスカでも顔はにっこり

あとで聞いた話ですが、彼女も内心では「やってくれたな…」と思っていたそうです。でも、その場では微笑んで「タオルありますか?」と一言。プロだなあと思いました。私は内心が顔に出てしまいそうで、必死に口角を上げていました。

「コピーは控えとしてちゃんと取ってあります」…ありがとう

そして極めつけは、「先生、コピー控えありますから!」という一言。まるで救世主のようなセリフでした。そうだ、コピーがあるんだった。私はその時、本当に泣きそうになりました。書類に救われるのではなく、人に救われる。そんな瞬間が、司法書士の現場にはあるのです。

こういうときのためにしておくべき備え

今回の件で学んだこと、それは「書類は濡れる」「人はミスをする」「備えは裏切らない」ということ。たったそれだけのことですが、毎日忙しいと忘れがち。改めて、備えの大切さを噛みしめました。

防水ファイルのすすめ

透明なビニールの防水ファイル、あれ、侮れません。1枚数十円で買えるのに、書類を守る力は抜群です。今回も、もしあのファイルに入れていたら…と考えると、次の日すぐに事務用品店でまとめ買いしてしまいました。

クライアント対応マニュアルをつくっておくべきか

事務所内で起こりうるリスクに備えて、簡単な「対応マニュアル」でも作っておくべきかと本気で考えました。特に新人事務員が入ったときのためにも、マニュアル化された安心感は大きい。今後の検討課題です。

紙の限界とデジタル化の希望と現実

今回の事件を経て、「紙じゃなくてPDFだったら…」という気持ちがふつふつと湧き上がりました。デジタル化の波が進む中、司法書士業界も変化が求められていると痛感します。ただ、それにはまだまだ壁が多いのも事実です。

PDFはコーヒーを吸わない、でも印鑑が必要

PDFはコーヒーを吸いません。パソコンの中にあれば安心。でも、登記関係書類には未だに“印鑑”が必要です。デジタルとアナログが共存するこの不思議な業界の中で、完全移行はまだ先の話かもしれません。

電子化が進まない業界のもどかしさ

オンライン申請が導入されても、依然として紙での提出を求められるケースが多い現状。技術はあるのに、運用が追いついていない。そのもどかしさを、今回の件でより一層感じることになりました。

「人の過ちを許す」ことの連続が司法書士業務かもしれない

書類にコーヒーをこぼされても、怒らず、焦らず、諦めずに対応する。それが私たち司法書士の仕事なのかもしれません。毎日が小さな試練。その中でどうやって心を保ち、信頼を守るか。コーヒー事件は、その縮図だったように思います。

怒るより、共にため息をつく

「しょうがないですね…」と共にため息をつくこと。それが一番の解決だったりします。怒っても書類は元に戻らないし、信頼関係はもっと壊れるかもしれません。そんなことを考えながら、私は今日も静かにキーボードを叩いています。

でもたまには怒らせてほしい(心の叫び)

とはいえ、たまには声を大にして言いたい。「いや、マジで勘弁してよ!」と。言えませんけどね。心の中では何度も叫んでます。そんな葛藤を抱えながら、今日も書類とコーヒーの間に立って仕事をしています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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