なぜ「急ぎじゃない案件」は後回しになるのか
司法書士として日々忙しく過ごしていると、「急ぎじゃないから、あとでいいか」と思って後回しにしてしまう案件が溜まっていきます。特に地方で一人事務員とやっているような小規模事務所では、緊急対応や予定外の相談が割り込むたびに、つい「あとでやる」が積み上がる。気がつけば、急ぎじゃないはずの案件が、ずっと終わらず頭の片隅にこびりついてくるのです。
人は「急がないこと」を後回しにする生き物
これはもう性格とかではなく、脳の習性の問題らしいです。「緊急性のないタスクは脳がやる気を出さない」って、どこかの本に書いてありました。確かに、今日中にやらなきゃマズい案件には朝から手をつける。でも「今月中でOK」とか「いつでもいいですよ」と言われた依頼って、なぜか翌月にも残ってたりしますよね。なんなら忘れてたりします。
実務の優先順位は「納期>心理的プレッシャー」
仕事って「早くやったら評価される」より、「遅れたら怒られる」構造になってるんですよ。だから人間、無意識に怒られそうなやつから片付ける。依頼人から進捗確認の連絡が来ると、一気に火がついて作業が進むこともある。つまり、納期よりも「心理的にプレッシャーがかかる案件」が優先されるんです。急ぎじゃない案件って、それがないからどんどん落ちていく。
「今じゃなくていい」が招く落とし穴
「今じゃなくていい」案件ほど、未来の自分への借金になります。しかも金利付きのやつ。あとでまとめてやろうと思って放っておくと、ある日まとめて襲ってくる。「こんなにあったっけ?」と焦るころには、すでに信頼がじわっと削られている可能性もあります。
どんどん積み重なる「そのうち」案件
「そのうちやろう」「時間あるときにやろう」って、便利な言葉なんですよね。でもその「時間あるとき」って、いつなんでしょう。実際、急ぎじゃない相談メールや、後見報告のような年次提出系の書類って、気づけば3件、4件とたまってる。土曜の午後にまとめて処理しようとすると、もうしんどくて無理です。
忘れた頃にやってくるお叱り電話
「すみません、あの件ってどうなってますか?」という電話。あれ、地味に効きます。怒ってなくても、詰められてる感じがするんですよね。たまに「怒ってないですけど…進んでないですよね?」みたいな優しい圧もあって、あれが一番キツい。言われた直後に取り掛かろうと思っても、他の急ぎ案件が詰まってて、さらに後ろ倒しになることもザラです。
「まだですか?」が一番効く
優しい声ほど心に刺さるもので、「全然急いでないんですが…」って前置きがあるほどプレッシャーになるんですよ。「あ、やばい。信頼、失ってるかも」と思って焦って対応するけど、急ぎじゃないからスケジュールにも割り込ませにくい。結局、雑な対応になってしまって、自己嫌悪…このループに何度もハマりました。
気まずさでさらに先延ばしになる悪循環
気まずいと、人は逃げる。連絡をもらった時に「あっ…!」となると、逆に電話を取りたくなくなってくるんです。「先にLINEで謝っとこうか…」なんて考えたりしてるうちに、また時間が経つ。本当に、急ぎじゃない案件ほど心理的ハードルがどんどん上がって、動きにくくなるんですよね。
事務員との連携が遅れの引き金に
ウチは事務員さんが一人いますが、基本的には自分で判断しないといけない場面も多い。だからこそ、曖昧な案件ほど連携ミスが起きやすい。口頭で「あれ、今度でいいよ」と言ったつもりが、相手には「もう少ししたら取り掛かる」と伝わってなかったりする。結果、放置されて「これ、誰も見てない案件…?」ってなって、また私に戻ってくるわけです。
指示が曖昧になる案件はたいてい急ぎじゃない
「この案件、どうしておいて」とざっくり言ってしまうのは、たいてい急ぎじゃないから。急ぎのものは「いつまでに、これを、この順で」と細かく指示しますよね。でも余裕があるときほど、人は曖昧になる。これが放置の種になるって、頭ではわかってるんですけどね…。
「口頭で言ったよね?」という地雷
何が厄介って、「あれ、言ったよね?」が一番危ない。言ったかどうかの記憶も曖昧で、記録もない。事務員さんに責任はないし、怒れない。結局、「まあ…俺がちゃんとやっとけばよかったか」で終わるんです。で、また同じようなことが起きる。地味にストレス溜まります。
本当に忙しいときに限って手をつけにくい
不思議なもので、本当に忙しいときほど、こういう「急ぎじゃない案件」には手をつけにくい。気持ちの余裕がないし、時間も細切れ。5分空いたら休みたいし、15分あったら昼ごはんをゆっくり食べたい。だから、「まとめてやろう」と思ってた案件が、いつまでもまとめられないまま、そこに残り続けるのです。
気力のある朝には緊急案件が詰まっている
一番集中できるのは午前中。だからこそ、午前中には「今日中に終わらせるやつ」が並ぶ。結果として、「いつでもいいやつ」は午後に追いやられ、午後は午後で雑務と来客対応に追われて終わっていく。夜は…まあもう無理ですよね。書類読んでも頭に入らない。
夕方になるともう考えたくない
日が傾いてきたころ、ようやく手が空いて「さて、あの案件でも…」と思っても、もう脳が拒否してるんです。「今じゃない…明日にしよう」って。結果、また明日の午後にまわされる。そしてループです。ちゃんと書き出さないと、いつまでも終わらない。
解決のヒント:先延ばし対策は「見える化」から
ここまで散々「ダメ司法書士あるある」を並べてきましたが、ちょっとずつでもマシにする方法はあります。一番効果があるのは「見える化」です。いま、自分が何を抱えていて、どれが停滞しているのか。それを把握するだけで、少しずつ回り始める感覚があります。
「放置中リスト」を見える場所に貼る
私は「今手がついていない案件リスト」を印刷して、ホワイトボードの端に貼っています。これ、事務員さんにも共有しておくと、「あの件どうします?」と声をかけてくれたりします。見られてる感覚があると、少し気が引き締まります。あと、忘れにくいです。
あえて「未着手リスト」と名前をつける
「保留中」って書くとなんとなく聞こえはいいですが、「未着手」って書くと刺さるんですよね。「まだやってない」って自分に突きつける表現、大事です。優しくするより、ちょっと心がチクリとする言葉の方が自分には効きました。
心理的に刺さる言葉を使うと効果あり
たとえば「依頼人を待たせている案件」とか、「信頼を下げる前にやるリスト」みたいなネーミングにすると、自分の心がザワつく。そのザワつきが、行動に変わるんです。やりすぎるとストレスなので加減は必要ですが、自分に合った言葉選びは結構重要です。
事務員と毎週チェックする「ゆる進捗会議」
毎週、金曜の夕方に15分だけ、「今週触れてない案件」を一緒に確認するようにしました。ガチガチのミーティングじゃなくて、「これ、どうしましょうか?」くらいの雑談レベルで。強制じゃないけど、意外とこれが効いてます。話すと、やらなきゃって思えるんですよね。
まとめ:急ぎじゃない案件こそ信頼の試金石
急ぎじゃない案件をどう扱うかで、司法書士としての信頼は決まる気がします。どれだけ忙しくても、依頼人からすれば「お願いしたことがきちんと扱われているか」が大事。急ぎじゃない案件ほど、丁寧に扱う必要があるのかもしれません。…まあ、言うは易し、なんですけどね。