送信ボタンを押したあとに気づく“あの瞬間”の絶望感
それはまさに「終わった…」という感覚。オンライン申請のボタンを押した直後、ふと目に入った名前の漢字ミス。背筋が凍るとはこのことか、と思う。登記の申請で名前を間違えるなんて、司法書士にとっては致命的。けれど、どれだけ確認しても、そういう時に限ってやらかしてしまう。午前中に相続登記を3件終わらせ、ようやく終業…と思ってた矢先の申請ミス。心が折れる音が聞こえた気がした。
まさかの誤字…それも肝心なところ
誤字といっても、「髙」と「高」みたいな微妙な違い。依頼人は読み方も意味も同じと思っているけれど、法務局はそうはいかない。戸籍や印鑑証明と違えば、即訂正や却下につながる。しかもそれに気づいたのが送信直後。確認画面ではスルーしてしまっていた自分を殴りたくなる。紙なら気づいて赤で訂正していたかもしれないけれど、オンラインは画面を閉じたら終わり。戻れない。
ミスに気づいた後の“胃の痛み”タイム、始まる
一度ミスに気づいたら、もう他の作業なんて手につかない。気持ちは焦るのに、行動が鈍る。確認のために法務局に電話をかける手が震える。職員に「訂正はできませんね」とあっさり言われた時の絶望感といったら。しかも依頼人に説明しなければいけない。ここが一番キツい。「先生、それって大丈夫なんですか?」と不安げに言われると、こちらの信用も揺らぐ気がして心が折れそうになる。
どうしてミスに気づけなかったのか?冷静に振り返る
そもそも、どうしてこんな凡ミスをしたのか。自分では何度もチェックしたつもりだった。けれど、焦っていた。次の依頼も詰まっていたし、事務員が急ぎの書類を抱えていたのも気になっていた。いくつかの小さな要因が積み重なって、集中力が切れていたのだろう。司法書士の仕事は正確さが命。それがわかっているのに、やっぱり人間だからミスは起こる。
疲労?焦り?慢心?原因はいつも複合的
その日は朝から遺産分割協議書の訂正でバタバタしていた。依頼人からの電話は鳴りっぱなし、事務員は役所回りで不在、郵便物は山積み。そんな中、「今日中に終わらせたい」という焦りが出てしまった。そして「これくらいは大丈夫だろう」という慢心。たいていのミスは、こうした複数のプレッシャーや油断が重なって生まれる。精神的な疲労が、一番厄介なのだ。
「確認したつもり」が一番危ない
何度も確認したつもりでも、脳が勝手に正しいと判断してしまう現象がある。たとえば、漢字を見た瞬間に「合ってる」と思い込んでしまうことがある。これは「見慣れたパターン」に対して脳が自動処理してしまうからだ。自分のミスを自分で気づくのは意外に難しい。とくにオンラインはチェック項目が多く、全体を見渡すことが難しいので、確認ミスが起きやすい。
チェックリストを見落とすのも日常茶飯事
申請前には簡単なチェックリストを作っているが、それすらもバタバタしていると目を通すだけになってしまう。「名前・住所・地番・権利者・義務者…」と声に出して読むようにしていたが、ある日「声に出していたけど心が別のこと考えてた」なんてこともあった。確認方法も形式化すると、形だけになってしまう。ルーティンの落とし穴だ。
オンライン申請後のリカバリー手段、あります
絶望しても、まだ手はある。登記が完了していないならば、取り下げ申出書を出してミスを修正することが可能な場合もある。これに気づけるかどうか、そして迅速に動けるかがカギ。落ち込んでいる暇はない。とはいえ、ミスをリカバリーする作業もそれなりに骨が折れる。特に紙を一切使わないオンラインでの修正手続きは、逆に手間が増えることもある。
取り下げ申出書の提出、でもこれもまた一手間
取り下げ申出書を出すには、まずは書式を探し、印刷し、手書きまたは入力で記載。印鑑を押し、スキャンし、オンライン申請システムにアップロード。この工程だけでも30分〜1時間は軽くかかる。忙しい日に限ってこういうことが起こるのがまた腹立たしい。しかも、「すぐに処理してもらえるとは限らない」というのがつらい。法務局からの確認電話待ちで午後が潰れることも。
書類を印刷→署名→押印→スキャン→送信の地味にしんどい流れ
紙の申請よりも楽だと思っていたオンライン。でも、こういうミスを取り消すとなると、一気に手間が増える。うちの事務所では、印刷もスキャンも1台の複合機が担っているが、たまに紙詰まりやスキャン不良が起きると、地味に心が削られる。急ぎのときに限って、そういうトラブルが発生するのもなぜか“あるある”なのだ。
登記官への電話連絡、気が重いけどやらなきゃ
ミスをしたときに一番しんどいのが、登記官への電話。「申請取り下げたいのですが…」と話す時の、あの罪悪感と気まずさ。中には「またか」という雰囲気を出す職員さんもいて、こちらとしては平謝りするしかない。だけど、言わなきゃ処理が進まない。自分のミスを自分で処理する、これが一番の罰ゲームだと感じる瞬間だ。
「ちょっとしたミス」が致命傷になることも
名前の一文字違い、日付のズレ、書類の添付忘れ。どれも「ちょっとしたこと」だけれど、登記の世界では取り返しがつかないこともある。特に第三者が絡む取引の場合、ミスによって相手に損害が出れば、責任問題にも発展する。依頼人からの信頼が一気に揺らぐリスクも高い。だからこそ、毎回“神経質すぎるほど”の確認が求められるのだ。
誤記訂正では済まないケースの怖さ
登記完了後にミスが発覚すると、訂正登記や更正登記が必要になる場合がある。これは手間も費用もかかるし、関係者全員の再押印が必要になるケースもある。しかも訂正理由の説明も求められる。たった一文字の誤字のために、1週間以上のロスが出ることもある。まさに「割に合わない」と言いたくなるが、それが現実。
依頼人への説明、信頼は一瞬で揺らぐ
「先生、お願いしてよかったと思ってたんですが…」という一言ほど刺さるものはない。こちらが必死で謝っても、「この先生、大丈夫かな?」という疑念が一度でも芽生えたら、それを払拭するのは容易じゃない。信頼はコツコツ積み上げていくものだけど、失うのは本当に一瞬。それが怖くて、夜中に一人で反省会をすることも少なくない。
ミスを減らすために、今やっていること・やめたこと
ミスをゼロにするのは無理だとわかっている。だからこそ、できるだけ減らすための工夫を積み重ねている。逆に「やらない方がいい」と思ったことも実は多い。完璧主義になりすぎると、逆に手が止まってしまうこともある。自分に合ったやり方を見つけるのが大事だと思う。
音読チェックと事務員のダブルチェック体制
最近やっているのが「声に出して確認する」方法。声に出すことでミスに気づきやすくなる。そして事務員にも確認をお願いする。二人で見れば、見落としが減るのは確か。ただし、事務員も忙しいときは無理させられないので、タイミングを見てお願いするようにしている。
忙しいときほど、申請は“明日にする”勇気
「今日中に出してしまいたい」という欲に負けないようにしている。忙しい日は、あえて翌日に回す。1日置くと冷静になって見直せることもあるし、朝の方が頭もクリア。実際、翌朝に見直したらミスに気づいた…なんてこともあった。無理して出してミスるより、1日遅れても正確な方がいい。
それでもミスはゼロにならない現実と、折り合いのつけ方
どんなに気をつけても、ミスはゼロにならない。人間だから仕方ない…と思えるまでに何年もかかった。でも、ある程度は“しょうがない”と割り切ることも必要だ。自分を責めすぎると、次の仕事に影響が出てしまう。大切なのは、同じミスを繰り返さないことだ。
自分を責めすぎても仕事は減らない
ミスを引きずっていると、どんどん悪循環に陥る。気持ちが沈むと集中力が落ち、またミスをするというループに。だから、自分を責めすぎないことを意識している。「完璧じゃなくても、ベストを尽くした」と思えるようになれば、少しは楽になる。
「次に活かせる」なんて都合よく考えないとやってられない
正直、「何が次に活かせるだよ…」と思う時もある。でも、そうでも思わなきゃやっていけない。ミスのたびに自分を嫌いになっていたら、心がもたない。多少の強がりでも、「この経験があったから今がある」と思えるように、前を向くしかない。
同業者の“やらかし話”を共有して心を軽くする
同業者と飲みに行って「俺もこの前、取り下げ出したよ」とか「法務局に怒られた」なんて話を聞くと、少しホッとする。自分だけじゃないんだ、と思える瞬間が救いになる。愚痴の言い合いが、意外と一番のメンタルケアかもしれない。