あの一文字のせいで…眠れなかった夜と、朝イチの謝罪電話

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あの一文字のせいで…眠れなかった夜と、朝イチの謝罪電話

たった一文字のミス、それでも夜は眠れなくなる

司法書士という職業は、日々地味で静かな業務の繰り返しに見えて、その実、常に緊張感と隣り合わせです。特に「書類の正確性」に関しては、神経質すぎるほど気を遣います。だからこそ、たった一文字の入力ミス、漢字の変換間違い、名前の読み違い——そんな些細な“ズレ”が、夜も眠れないほどの罪悪感となって襲ってくるのです。

「どうせ誰も気づかないでしょ」が通用しない世界

他の業種なら「ちょっとした誤字」程度で済むかもしれませんが、司法書士の仕事では致命的です。「大丈夫だろう」と思っていた油断が、登記官のチェックで引っかかり、依頼人からの信頼を損ねる原因になる。そんな世界で、私たちは仕事をしています。

ミスの責任はすべてこちら持ち

たとえ依頼人から渡された書類に誤りがあったとしても、それをそのまま通してしまったら、それは「気づかなかった自分の責任」として返ってきます。登記が遅れるのも、相手から不信感を抱かれるのも、結局すべてこちらに跳ね返ってくるのです。

書類一枚で信頼が崩れる現実

信頼関係というのは本当に脆いもので、一枚の書類の中の一文字で、それまで築いてきた関係が音を立てて崩れることがあります。「○○様」が「○様」になっていただけで、依頼人の顔が曇る。それを目の前で見るのは、本当に苦しいものです。

目に焼きついた“あの一文字”

ミスに気づいた瞬間の記憶は、妙に鮮明に焼きついて離れません。手元の控えを見て「しまった……」と呟いた夜。体が冷たくなり、汗がじんわりにじんでくる。誰も起きていない夜に、自分の中だけでどんどん不安が膨れ上がっていくあの感覚、経験した人にしかわかりません。

夜中に目が覚めて、スマホのメモを見返す

何度も何度も、修正点や対処法をメモに書いては消し、書いては消し。確認したはずの資料を、また一から読み直す。自分を責めながら、でも朝までにはなんとかしなければと焦る気持ち。そんな夜が何度あったか、正直わかりません。

「大丈夫」と思ってたのは、自分だけだった

自分では何重にもチェックしたつもりだった。でも、現場では見落としが出る。そして気づいていなかったのは自分だけで、依頼人や役所の担当者の方が先に気づくことさえある。あの瞬間の「やってしまった感」は、言葉では言い表せません。

朝イチの謝罪電話と、その後の空気

ミスが発覚した翌朝。開業以来、何度となく経験してきた「謝罪の電話」。こればかりは慣れることがありません。朝の静けさの中で、手が震えるような緊張感とともに発信ボタンを押す。たった一通話の中に、ものすごい精神力を使います。

お客さんの沈黙が、なによりつらい

「申し訳ございません」と頭を下げても、電話の向こうでしばし沈黙が続くときがあります。その時間が長ければ長いほど、こちらの胸の奥が締め付けられていきます。怒鳴られた方がマシだ、と思うことさえあります。

誠意は伝えたつもりでも、伝わったかは別問題

謝罪は形だけでは意味がありません。でも、どれだけ誠意を持っていても、それが相手に伝わっているかどうかは別の話。声のトーン、言葉の選び方、タイミング。どれか一つでもズレれば、信頼は戻ってきません。

「わかりました」の一言が怖い

本当に怖いのは、「いいですよ」「気にしないでください」ではなくて、「わかりました」という無感情な返事。これはもう、完全に“信用貯金”を失ったな、と感じる瞬間です。あとからその方の紹介がパタッと止まると、ああ、そういうことかと気づきます。

事務員さんにも迷惑をかけた話

一人事務所にとって、事務員さんはまさに戦友です。にもかかわらず、自分のミスで迷惑をかけてしまうこともあります。連携してやっている以上、どちらのミスでも結局“事務所全体の責任”になってしまうからです。

「私が気づけばよかったですね」と言われて逆につらい

やさしい人ほど、「私も確認しておけばよかったですね」と言ってくれる。でもそれが逆につらい。いや、悪いのは自分なんです。気づかれないようにしようとするのではなく、もっと共有して防げたのではないかと悔やみます。

なぜミスは起きるのか?原因と対策を考える

ミスが起きる背景には、単なる不注意だけでなく、構造的な問題や疲労の蓄積、人的リソースの限界など様々な要因があります。原因を掘り下げていくと、司法書士の働き方そのものに問題があると痛感します。

時間がないとミスが出るのは当然

特に繁忙期は、「この日までに」「今日中に」と迫られる中で複数の案件を並行して処理しています。そこに電話、来客、予定外の問い合わせが加われば、集中力はそがれます。これで完璧なミスゼロを目指すのは、そもそも無理があるのです。

一人事務所の限界、限界、限界

正直に言うと、限界です。時間的にも、精神的にも、物理的にも。「一人でなんとかできる」は幻想です。だけど仕事は減らないし、頼れる人もいない。そんな日々にミスが起きるのは、むしろ自然なことなのかもしれません。

確認プロセスは“作業”にしてはいけない

チェックリストを作って「確認した」と満足してしまうと、逆に見落としが出ることがあります。大事なのは、目を通すだけでなく、文脈を理解しながら「読む」こと。わかっていても、時間がなければそれができないジレンマがあります。

「見る」のではなく「読む」確認

一つひとつの書類を、単なる“項目”として処理せず、意味を持った文章として読む。読みながら自分の頭で再構築するくらいの集中力が必要です。それができるときはいい。でも、それができない日もある。だから苦しいのです。

司法書士という仕事に求められる“神経質さ”

もともと細かいことが苦手な人には向かない仕事だと思います。ちょっとした抜け漏れで信用が崩れるこの世界では、ある種の「病的なまでの慎重さ」が求められるからです。でも、それがまた自分自身を疲弊させる要因にもなるのです。

ミスに寛容な世界じゃない

「誰にでもミスはあるよ」と言われても、それが許されない業界もある。私たちはそのひとつの中で仕事をしています。だから、たった一文字のミスが、夜を奪い、心をすり減らしていくのです。

誰も褒めてくれないけど、誰よりも気を使う

誰かのために一生懸命気を配っても、それを誰も見ていない。でも、何かがあったときだけ注目される。それが司法書士という仕事です。だから、疲れます。でも、それでも続けているのはなぜか、自分でも不思議です。

それでも辞めないのはなぜか

「もうやってられない」と思う日も正直あります。それでも、この仕事を続けているのは、時々もらえる小さな「ありがとう」や「助かりました」の一言が、本当に心に沁みるから。あれで、すべてが報われたような気がするのです。

感謝の言葉が、すべてを帳消しにしてくれる瞬間

自分の仕事は、本当に人の役に立っているのだろうか? そう思っていたときに、「あのときは本当に助かりました」と言われた瞬間。涙が出そうになるくらい、救われた気持ちになりました。あれがあるから、また頑張れます。

同業の皆さんへ:眠れない夜は、あなた一人じゃない

同じように、夜中に目が覚めて反省している司法書士は、全国にきっと何人もいるはずです。私もそのひとりです。眠れない夜も、謝罪の朝も、苦しいのは一緒。でも、今日もお互い、なんとかやっていきましょう。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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