地番が似てるせいで、まさかの他人の土地に登記しかけた話
登記の現場には常に緊張感があるものの、忙しさに押されると基本的な確認が疎かになる瞬間があります。今回お話するのは、うっかり他人の土地に登記をしかけてしまいそうになった、冷や汗ものでした。しかも原因は、地番の「似すぎ」にありました。登記簿を開いても、一見同じような数字の羅列。だれもが一度はヒヤッとするような話かもしれませんが、そんな実体験を少し愚痴交じりに綴ってみます。
現場はいつもバタバタ、確認する余裕すらない
地元の小さな事務所で、たった一人の事務員と二人三脚でやっていると、時間の余裕なんてほとんどありません。特に月末、登記の依頼が集中するタイミングでは、正直「地番なんてパッと見で大丈夫だろう」と思ってしまう瞬間もあります。それが後でどれほどの危険につながるかは身をもって痛感しました。
そもそも「地番」ってなんなんだ?住所とはどう違うのか
司法書士になって20年以上になりますが、いまだに「住所」と「地番」を混同している依頼者は後を絶ちません。これは我々専門家でも油断すると迷子になりかねない、やっかいな仕組みです。
「住所」と「地番」の混同が生む混乱
住所は生活拠点としての呼び名、地番は登記上の識別番号。理屈ではわかっていても、例えば「青山1-2-3」みたいな表記と、「地番 青山一丁目2番3」のような地番があまりに似ているせいで、依頼人だけでなく我々も混乱します。特に住所表記で依頼を受けてしまうと、地番の裏付けを取るのを忘れがちになります。
お客様も混乱、司法書士も混乱
「ウチは〇〇番地です」と自信満々に話す依頼者の話を鵜呑みにして進めると、後から地番が違っていたなんてことは珍しくありません。「それ、向かいの家の地番ですよ」なんて訂正すると、不満げな顔をされるのも日常茶飯事です。実際のところ、こうした“ちょっとしたズレ”が登記ミスの火種になるのです。
実際に起こったヒヤッとする体験
忘れもしません。ある土地の所有権移転登記を担当していたときのこと。依頼者は高齢のご夫婦で、「長年住んでいる場所だから間違いない」と言われたのですが…。
依頼者の口頭説明だけで準備を進めてしまった結果
急ぎの案件だったため、現地調査を後回しにしてしまい、いただいた資料も「青山町1番地」と書かれた古い固定資産税納付書だけ。ところが実際の地番は「青山町11番地」。しかも1番地と11番地の土地は、道を一本挟んだだけ。もう気づいたときには登記直前。ぞっとしました。
似たような地番が隣接しているという地獄
こうした地番の並びは、古くからある住宅街や農地整理地区でよく見られます。「〇〇町1番地〜15番地」までが密集していて、しかも番地の順番も整っていない。見た目では判別不能。地番図や公図を確認しないまま作業を進めていたら、完全に別の土地に登記していたところでした。
ミスを未然に防げたポイントとは
運が良かったとしか言いようがありませんが、それでも回避できたのは、登記前の最後の確認作業で気づけたからです。ヒヤリハットを防ぐには、やはり基本がすべてです。
公図の確認、やっぱり基本が大事
法務局で取得した公図を開いて、建物の位置と照らし合わせたところでようやく「あれ?」と違和感に気づけました。忙しいときほど「見なくてもわかる」という過信が出てしまいますが、公図を見ることで誤認を防げるのは事実。基本に立ち返る大切さを痛感しました。
法務局との事前照会が効いた
念のため、法務局にも「この地番で間違いないですか?」と事前に照会したのも幸いしました。経験上、電話一本で済む確認も、後になって登記の修正となれば数時間、いやそれ以上の時間が無駄になる。確認にかける5分を惜しんではいけないと改めて思います。
こういう時、誰が責任を取るべきなのか
今回、結果的には未遂で済んだものの、ヒヤリとした瞬間には「これ、完全に自分の責任だな…」と背筋が凍りました。
「登記申請者」としての覚悟
司法書士は登記のプロである以上、「お客様がそう言ったから」とは言い訳になりません。登記申請者として、内容の正確性を保証する立場です。だからこそ、何があっても最後の確認は自分でやるべきだと肝に銘じています。
事務員の確認ミスか?いや、自分の責任だろう
今回も、事務員が誤って地番を転記していたことが発端だったのですが、それを見過ごしたのは私。結局、すべての責任は代表司法書士にある。それが、この仕事のつらさであり、重さでもあります。
まとめ:気を張りすぎてもミスは起きる。だからこそ仕組みでカバーを
どんなに気をつけていても、ヒューマンエラーは完全には防げません。ただし、確認の仕組みやルーティンをきちんと作っておけば、大きなミスになる前に止めることができます。誰にでも起こりうる地番の勘違い。だからこそ、似たような土地が並ぶエリアでは、二重三重の確認体制を敷く必要があると痛感しました。「ウチの土地じゃなかった」なんてことにならないよう、これからも基本を怠らずやっていきたいと思います。