え、断れない…!?親戚の紹介がもたらす“気まずい相談”の落とし穴

え、断れない…!?親戚の紹介がもたらす“気まずい相談”の落とし穴

親戚からの紹介──断れない空気、ありますよね

司法書士として仕事をしていると、時折「親戚からの紹介なんだけど…」という相談が舞い込んできます。普通の依頼と違って、こうした紹介案件には妙な緊張感があるんですよね。こちらとしては「ややこしい案件じゃなければいいな…」と身構えつつも、親戚付き合いの延長にあるような雰囲気の中で、断るのも角が立つ。そんな“空気”に飲まれてしまうこと、正直あります。

「助けてあげてくれない?」という無邪気な一言の重み

ある日、叔母から「ちょっと相談があるの、○○さんが困ってるらしくて…」と電話がありました。軽い感じで話すものだから「まあ、話だけでも」と受けたら最後、結局がっつり依頼になるという流れ。こちらが“親切心”を出したのを見逃さず、相談者もどんどん前のめりになっていく。「助けてあげて」という言葉、あれって地味に断りづらいんですよね。

紹介されたからには断りにくい“日本的な空気”

断ったら親戚の顔がつぶれる、なんて意識がどうしても頭をよぎる。「なんで引き受けてくれなかったの?」なんて後から言われるのも嫌だし。こういう時、合理的な判断よりも人間関係が優先されるのが田舎ならではかもしれません。都市部ではもう少しドライな対応も許されるでしょうが、地方では“断る技術”が求められます。

田舎ほど濃い人間関係がハードモード

特に地方だと、親戚は紹介した人と紹介された人が普段から顔を合わせる関係だったりします。法務とはまったく関係ないところで「うちのこと、お願いしたんだってね〜」なんてスーパーで声をかけられたりすることも。断る=関係を壊す、そんな感覚になってしまうから厄介です。

地元密着が強みでもあり、弱点にもなる瞬間

地域密着型の信頼関係は仕事の継続には強みですが、それが仇になる場面もあるというのが現実。地元の評判はすぐに広まり、良くも悪くも“噂”が仕事に影響します。無理に請け負えば後で自分が困るし、断れば気まずくなる。そんな綱渡りの中で日々悩むのが、地方司法書士の本音です。

内容を聞いたら…実は結構ややこしい案件

そうして受けた相談、いざ話を聞いてみると「ちょっとお願いしたい」どころではありませんでした。登記だけかと思いきや、相続関係は揉めていて、土地の名義もぐちゃぐちゃ。ひとつ整理すると別の問題が浮かんでくるような、まるでパズルのような状態。こういう案件、ほんとに精神を削られます。

「ちょっとお願いしたいだけ」じゃなかった!

親戚からの電話では「簡単な話みたいよ」と聞いていたのに、フタを開ければ数年越しの未整理相続+借地権問題というコンボ。こちらは事前情報なし、向こうは“身内紹介”の安心感からか資料も揃えていない。おまけに「早く終わらせて」と言われる始末。ええ、毎度のことです。

不動産、相続、借金整理…ぜんぶ乗ってきた三点盛り

以前あったのは、不動産の名義変更かと思いきや、相続人は全国に散らばっており、その一人が自己破産申請中。土地の評価も不明、境界線も曖昧。「これ、どう処理すればいいんだ…」と天を仰ぐ案件でした。しかも紹介だから強く言えない。まさに地雷案件の完成形。

相手は「無料相談感覚」、こちらは「地雷案件感覚」

親戚からの紹介だと、相手の中で“無料相談”のイメージが強いことが多いんです。こちらは通常業務として準備しているのに、「そんなにかかるの?」「え、そんなに手間かかるんですか?」と驚かれる。お金の話をするのも気を遣うし、ほんとに損な立ち位置です。

感情が仕事に入りすぎると、冷静な判断が鈍る

この手の相談は、理屈や法的判断以上に“気遣い”が重くのしかかります。つい自分を後回しにして相手に合わせようとしてしまい、業務が不安定になる。冷静さを保つのが難しくなるんですよね。

「断ったら親戚関係にヒビが…」という見えないプレッシャー

一度「今回はちょっと…」と断ったことがあります。その後の親戚の集まりでは、何とも言えない空気が流れました。誰も何も言わないけど、確実に“察している”感じ。「感じ悪くないように」なんて気を使うのがまたしんどい。

情にほだされると、契約も曖昧になりがち

親戚関係だと「書類は後でいいよね?」「領収書はいらないよ」など、軽く扱われがちです。つい「まあいいか」と流してしまうと、後々トラブルのもとになります。感情に流されると、プロとしての線引きが曖昧になりかねません。

最初の見積もりや説明が“甘くなる”危険性

気を遣いすぎて「費用はだいたいこれくらいで…」と曖昧な見積もりを出すと、追加作業の請求がしにくくなります。しかも相手は“身内価格”を期待していることも多く、金額を明言するのが怖くなる。これは完全に自業自得ですが、後悔するパターンです。

結局、自分が疲弊するパターンが多い

こうして気を遣って、見返りも少なく、精神的にも疲れる。それが「親戚案件」の現実です。最終的には、自分自身が損な役回りになって終わる。そんなことが一度や二度ではありません。

後回しにしても心が休まらない

「ちょっと待ってもらおう」と思って後回しにしても、頭の片隅にずっと残っている。やらなきゃ…でもやりたくない。そのループでストレスだけが積み上がっていく。心身ともに消耗します。

事務員にも気を遣わせてしまう現実

「この人、親戚なんで…」と事務員にも特別対応を頼まざるを得なくなり、結果的に事務所全体の空気も微妙に。本人は無自覚でも、スタッフのモチベーションや効率に影響してしまいます。

「これ、誰のための仕事なんだっけ?」と虚無感が襲う

ある夜、全部終えたあと「これって、本当にやるべき仕事だったのか?」とふと自問しました。感謝もされず、お金にもならず、ただ疲れただけ。そういう案件が多いのも事実です。

どう断るか?逃げ方にも工夫が必要

もう断るしかない…そう思っても、やっぱり難しいのが親戚案件。でも、工夫次第でうまく逃げ道を作ることも可能です。

「今、手がいっぱいで…」はありふれていて効かない

よく使う断り文句ですが、「手がいっぱい」と言われても「ちょっとだけでいいから」なんて返されることも。相手にとっては“親戚”ということで遠慮がない分、説得力のある理由づけが必要になります。

第三者を挟むことでクッションを作る方法

自分が直接断るのではなく、「うちの事務所の方針で…」「他の案件とバッティングしていて…」など、ちょっと外部に理由を持たせると角が立ちにくくなります。人を悪者にするのではなく、仕組みに逃げるのがポイントです。

あえて“別の司法書士を紹介する”戦略

「私より得意な分野の先生がいるので」と別の司法書士を紹介することで、角を立てずに距離を取る方法もあります。相手も「断られた」とは思わずに済むし、こちらも無理なく引ける。うまくバトンを渡す感覚です。

「私より適任な人がいます」——これは逃げじゃなくて配慮

紹介=責任を持って請ける、ではありません。状況に応じて適任者に任せるのも、プロとしての配慮です。逃げたように思われるかもしれませんが、むしろ誠実な対応とすら言えます。無理して関係を壊すより、ずっと建設的です。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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