「この書類、本当に必要?」とつぶやく日々
司法書士の仕事をしていると、毎日のように書類と向き合う。登記簿、委任状、印鑑証明書、住民票…。それはもう当たり前だと思っているけれど、ふと我に返ると「この書類、本当に必要か?」と疑いたくなることがある。特に、法務局から戻された書類に赤字で修正が入っていたときなどは、その気持ちが爆発する。「またこれか」とため息をつきながら、机の上の紙の山を見つめるのだ。
なんでこんなに書類が多いのか、正直意味がわからない
登記業務には確認と証明が不可欠なのはわかっている。それでも、ひとつの登記に対して10種類以上の書類が必要になることも珍しくないと気づいたとき、心の中で「多すぎるやろ」と突っ込んでいた。特に相続登記の場合、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて取り寄せる必要がある。これ、家族構成によっては10通以上になることもあり、事務員さんもヘトヘトになる。
法務局の指定様式、年度で地味に変わるのやめてほしい
ある年、委任状のフォーマットを去年と同じものを使って提出したら「新様式でお願いします」と返ってきた。「内容は同じやん…」と突っ込みたくなる。しかも、新様式が公開されたのはその数日前。こっちは忙しい中、やっとの思いで書類を揃えて提出したのに、またやり直し。正直、やる気を削がれる。
依頼人が見るわけでもない、けど省けない不思議な紙
例えば「登記原因証明情報」。これは登記の内容を裏付けるために必要な書類だが、内容は登記申請書と重複していることも多い。依頼人に説明しても「それって、同じこと二回書いてません?」と不思議そうな顔をされる。いや、ほんとその通り。でも、それが求められているのが現実なんです。
事務所の中では無駄に見える書類との格闘が日常
書類の多さに頭を抱えるのは何も自分だけじゃない。事務員さんも毎日が格闘だ。紙を印刷して、クリップで留めて、確認して、封筒に入れて…。シンプルな作業に見えて、実は気が抜けない。そしてその中に「これ必要?」と感じる書類が混じっていると、モチベーションも下がる。
事務員さんも困ってる、「これってコピーでいいんですか?」問題
印鑑証明や住民票など、原本を出すのかコピーでいいのか、役所によって微妙に扱いが違う。経験の少ない事務員さんだと「これ、原本じゃないとダメですか?」と不安げに聞いてくる。こっちも即答できないことがあり、過去の例を探して確認する羽目になる。これだけルールが曖昧だと、どれだけ経験を積んでも不安がつきまとう。
一枚印刷するにも責任の重さがのしかかる
プリンターから出てきた一枚の書類。印刷ミス一つで取り直し、最悪の場合は提出先に迷惑をかける。ちょっとした確認ミスが「司法書士失格」と言われかねないプレッシャーがある。だから、たかが紙一枚でも、事務所内では重い空気が流れる。
訂正印がズレただけでやり直し、あの徒労感
訂正印を押すときのあの緊張感。位置がずれていた、押し方が甘かった、それだけでやり直し。依頼人がその現場を見たら「そんなことで?」と驚くかもしれない。でも、そういう小さなことの積み重ねが、この仕事のストレスを生んでいる。
電子化が進んだと言われても、現実は紙の山
最近は「登記の電子化が進んでいる」とよく聞く。でも、実感としては紙の量が減った気がしない。むしろ、電子申請の準備のために逆に紙が増えている印象すらある。笑えない矛盾に、いつももやもやする。
オンライン申請のために準備する紙の束という矛盾
電子申請に必要な添付書類。これらはPDFにしてアップロードするが、元はすべて紙で用意しなければならない。結局、紙で集めてスキャンして、また保存して…。何のための電子申請なのか、自問したくなる。
スキャンして送るのに、なぜ元を紙で要求されるのか
しかも、法務局によっては「念のため原本も送ってください」と言われることもある。だったら最初から郵送でよくないか?と突っ込みたくなる。せっかくオンライン化しても、現場では紙の作業がまったく減っていないのが現状だ。
本当に必要な書類と「慣例で続いてるだけ」の境目
これって法律で決まってるの?と感じる書類も多い。よくよく調べてみると、実は「以前からそうしてるから」というだけの理由で続けられているものもある。書類に慣れすぎると、疑うことすら忘れてしまう。
役所によって言うことが違う、ローカルルール地獄
同じ内容の登記でも、法務局Aでは通ったのに、法務局Bでは却下される、そんなことも珍しくない。ルールは全国一律のはずなのに、窓口担当者のさじ加減で変わってしまうようなことがあると、どこに基準を置けばいいのかわからなくなる。
先輩から引き継いだ「一応出しておく文化」の呪い
昔から「一応この書類も出しておくと安心」と言われてきた書類がある。問題が起きないようにと予防線を張る気持ちはわかる。でも、その結果として、必要かどうかわからない書類が増えていく。それが当たり前になっているのが怖い。
悩んでも悩んでも、なくならない書類の波にどう向き合うか
正直、書類の量や意味に納得がいかないことは多い。でも、それを言い続けても仕事は減らないし、登記は進まない。だからこそ、心を保ちながら現実と向き合う工夫が必要になる。
「いらないんじゃないか」と思っても出すしかない現実
どんなに「この書類、いらないのでは?」と思っても、提出先が求める以上、出すしかない。反論しても却下されたら意味がない。悔しさを飲み込んで、とにかく確実に進めるしかない。それが今の司法書士の現実だ。
少しでも気をラクにするためにやっている工夫
そんな中でも、少しでも無駄を減らす工夫をしている。たとえば、過去の案件で不要だった書類を一覧にして「出さなくてもいい場合リスト」を事務所で共有するようにしている。また、事務員さんと「この書類の扱いは今回はどうする?」と事前に相談し、無駄な動きを減らしている。
「やらなくてよかった書類リスト」を事務所内で共有
これは地味だけど効果がある。「このケースでは不要だった」「この法務局では要らなかった」などの情報を蓄積しておくことで、次に同じような案件が来たときに迷わなくて済む。小さな効率化だけど、精神的な負担はかなり減る。
事務員さんとの情報共有でムダな作業を減らす
書類の扱いで混乱が起きないよう、事務員さんと常に情報をすり合わせる。「このパターンはこうだったよね」と確認しながら作業することで、書類の準備がスムーズになり、精神的なストレスも軽減される。
司法書士を目指す人に伝えたい、見えにくい「紙との戦い」
試験に合格すれば、すぐにバリバリ働けると思うかもしれない。でも、実際は紙との戦いが日常の中心にある。やりがいもあるが、その前に立ちはだかる「見えない疲労」の存在を知ってほしい。
合格してからのほうが、地味で地道なストレスが多い
試験の勉強はゴールじゃない。むしろスタートライン。その先には、細かすぎる書類のチェック、変更に対応する柔軟さ、そして終わりなき修正依頼が待っている。それを地道に乗り越えていく日々が、本当の司法書士の仕事だ。
それでも辞めないのは、「ありがとう」と言ってもらえる瞬間があるから
紙に埋もれながらもこの仕事を続けている理由。それは依頼人からの「本当に助かりました」「ありがとうございました」の言葉。その一言が、すべての疲れを少し和らげてくれる。書類は面倒くさい。でも、それ以上に人との関係に意味があると、今は思えている。