「食える資格」なんて幻想かもしれない
「資格を取れば食っていける」──そんな言葉を信じて司法書士を目指した方も多いでしょう。かくいう私もその一人です。実際、試験勉強中は「合格さえすれば人生が変わる」と本気で信じていました。でも現実は、資格を取っただけではお金は降ってきません。むしろ、ようやくスタート地点に立てたにすぎないのです。ここで言いたいのは、資格そのものよりも、資格をどう活かすかが問われるということです。
資格を取れば安泰、という思い込み
「資格さえあれば安定した収入が手に入る」──よく聞く話ですが、これはあまりにも楽観的です。実務の世界では、競合も多く、集客や経営の手腕が問われます。資格は道具にすぎず、それを使いこなすための戦略や努力がなければ、結局「食えない資格」に変わってしまいます。
食えるかどうかは資格じゃなく◯◯だったりする
ぶっちゃけた話、「人付き合い」がうまい人の方が食えてる気がします。地域のつながりや紹介、信頼関係がものを言うこの業界では、真面目なだけでは埋もれてしまうことも。ある意味、「営業力」という資格外のスキルがあってこそ、本当に食えるのかもしれません。
司法書士のリアルな収入事情
私が開業して最初の年、手取りは100万円台でした。勉強中に描いていた理想とはかけ離れた現実に、心が折れかけました。地方では依頼数が限られており、しかも価格競争も激しい。収入の安定にはほど遠く、「食える」かどうかの話以前に「生活できるかどうか」のレベルでした。
開業したら年収1000万?現実はもっとシビア
ネットでは「司法書士は年収1000万も夢じゃない」なんて言われていますが、それは一部の話。特に地方ではそんな数字、見たことも聞いたこともありません。実際は年収300〜500万あたりが多く、事務所維持費や税金を引くと手元に残るのはほんのわずかです。
報酬単価は上がらない、経費は増える一方
報酬はここ10年ほとんど上がっていません。それなのに光熱費や郵送費など、経費ばかりが膨れ上がっていきます。業務ソフトのサブスク料金も地味に重い。これでは「食える」というより「持ちこたえてるだけ」というのが本音です。
田舎では仕事がない?いや、あっても割に合わない
地方には地方なりの仕事があります。が、それがすべて報酬に見合っているかというと疑問です。たとえば相続登記の相談。1〜2時間の聞き取り、資料取り寄せ、登記手続き…で報酬は3〜5万円。手間と時間を考えると、割に合わないと感じることも多いです。
食えるようになるまでに必要な時間とコスト
試験合格までの費用も相当ですが、開業後の立ち上げにもお金がかかります。事務所の家賃、備品、印鑑代、ホームページの立ち上げ…。正直「食えるようになるまで」にかかるコストをもっと冷静に見積もるべきでした。
試験合格までの年数と費用
私は3回目で合格しました。受験料、教材費、模試代、通学の交通費を含めて100万円は軽く超えました。さらに、合格までにかけた時間は数千時間。それでも当時は「食える資格」だと信じて疑わなかった自分がいました。
独学か予備校か、それが問題
独学で通る人もいますが、多くは予備校のお世話になります。カリスマ講師に頼って高額な講座に申し込むも、結果が出るとは限らない。合格するまで「食えない期間」が続くのは、精神的にもなかなかキツいです。
開業後に待っていた現実
開業後、最初の依頼が来るまでの3ヶ月、電話が鳴るたびに「やっと来たか」と身構えてました。が、営業の電話ばかりでヘコみましたね。通帳の残高が日に日に減っていく不安、あれは忘れられません。
名刺配りに回っていたあの頃
地元の金融機関や不動産会社を片っ端から回って名刺を配る日々。最初は怪訝な顔をされたり、門前払いもされました。でもそこで顔を覚えてもらえたから、今があると思っています。
資格を取っても「経営者」にはなれない問題
司法書士は独立開業する人も多いですが、経営のノウハウを持たないまま始めると本当に苦労します。私もそうでした。営業、会計、労務、マーケティング…すべて自分。技術職ではあるけれど、経営者でもある。それができなければ、資格は宝の持ち腐れになります。
集客・営業スキルがなければ食っていけない
どんなに良い仕事をしても、まずは知ってもらわなければ意味がありません。広告、SNS、口コミ、紹介…集客方法を模索し続けています。資格の勉強よりも、こっちの方が難しいと感じることもしばしばです。
「良い仕事」だけでは通用しない世界
誠実に丁寧に仕事をする。それだけではリピートも紹介もありません。「あの人にまた頼みたい」と思ってもらうには、心遣いやタイミング、会話の間(ま)など、実は細かい気配りが重要だったりします。試験には出ない部分こそが勝負どころです。
それでも資格を目指す人へ伝えたいこと
ここまでネガティブなことばかり並べましたが、それでもこの仕事にはやりがいがあります。相続登記が無事終わったときの感謝の言葉や、依頼者のホッとした表情に救われる瞬間も多いんです。ただ、「食えるか」ではなく、「やっていける覚悟があるか」が大切だと、今は思います。
資格を取ることは否定しない。でも…
資格を目指すこと自体は素晴らしいと思います。でも、資格に夢を見すぎないでほしい。現実を知ったうえで、それでもやりたいと思えるかどうか。そこが分かれ道だと思います。
「食える資格」ではなく「食っていく覚悟」があるか
最終的に必要なのは「覚悟」です。資格を取るのがゴールではなく、そこからが本当のスタート。食えるかどうかは、自分がどれだけ動いて、工夫して、踏ん張れるかにかかっているのです。