いつか報われる日を信じて働いてはいるけれど
司法書士という仕事は、誰かの人生の節目に関わる責任ある職業です。けれど、日々の業務は地味で細かく、達成感よりも消耗感の方が大きい日が多いのが正直なところです。「いつか報われるのだろうか」と、ふと立ち止まりたくなる夜もあります。周囲に愚痴をこぼすわけにもいかず、気づけば一人、事務所に残って山積みの書類と向き合っている。そんな日々が続くと、「これ、誰か見てくれてるんだろうか」と思わずにはいられません。
「頑張ればいつか報われる」は本当なのか？
「努力は報われる」と誰かが言っていました。でも、それが本当に報われたと実感する瞬間って、果たしてどれくらいあるんでしょうか。僕自身、開業してから十数年、少なくとも目の前の業務には手を抜かずにやってきたつもりです。それでも「報われた」と感じた記憶は指で数えるほど。むしろ、報われることを期待しすぎて、疲れてしまった時期もあります。結局、自分の中で意味を見出せなければ、どんな努力も空虚になるのかもしれません。
成功者の話は、現場では遠すぎる
本で読むような成功者の物語って、すごくキラキラしていて、眩しいんですよね。でも、地方の司法書士として現場に立っていると、そうした物語があまりにも現実離れしているように感じます。おしゃれなカフェでMacBookを広げている誰かの話と、書類に囲まれて半日役所とにらめっこしている自分の姿は、あまりにも違いすぎて。たぶん僕たちは、そういう派手さとは無縁の場所で、黙々と誰かの人生を支える仕事を選んでしまったんです。
努力しても減らない仕事、積もる疲労
仕事は毎日あるのに、終わったという感覚がなかなか得られない。処理しても処理しても次が来る。それが司法書士の日常です。一つ終えたら安心、という仕事ではなく、連続する義務のように積み重なっていく。事務員さんが手伝ってくれるとはいえ、責任の重さは全て僕の肩にのしかかります。寝ても覚めても仕事のことが頭から離れない、そんな毎日です。
書類の山と、終わらない電話対応
たとえば月末。登記の締切が重なる時期、事務所の机の上はまるで紙の山です。その合間を縫うように電話が鳴り、郵便物が届き、急ぎの相談が舞い込む。誰かと話していても、頭の中では次に処理すべき案件のチェックリストがぐるぐる回っているんです。集中しようにも集中できず、終わらせたいのに終わらない。そんな時間が積み重なると、まるで心の中までぐしゃぐしゃになっていく感覚になります。
「今日は早く帰るぞ」と思った日の末路
「今日は早く帰ろう」と心に決めて、午前中からスピードを上げて作業しても、午後に飛び込みの依頼が入ればすべて崩れます。結果、いつもより遅くなる。そんな日は、「早く帰ろうなんて考えたのが間違いだったのかもな」と自嘲気味にコンビニ弁当を食べながら、ふとカレンダーを見るともう月末。この繰り返しが、僕たち司法書士の「普通」なのかもしれません。
クライアント対応に正解なんてない
書類の整備や申請は正確さが命。でも、人とのやりとりになると、マニュアル通りにはいきません。急に怒り出す依頼人、感情的になって話が通じない相手。こちらがどれだけ丁寧に対応しても、伝わらないことはあります。「こんなに頑張っても、結局は…」と落ち込むこともあります。それでも、顔を上げて次の人に向き合わなければいけない。孤独な仕事です。
報われないと感じる瞬間
どれだけ時間をかけても、どれだけ丁寧にやっても、相手にとってそれが「当たり前」だと見なされるとき。そんな瞬間に「報われないな」と感じてしまいます。とくにミスが一つでもあると、それまでの努力が一瞬で無に帰すような気がしてしまう。評価されるのは失敗の数、ではないかと感じることさえあります。
感謝されることよりも、文句の方が記憶に残る
不思議なことに、「ありがとう」と言われたことよりも、「なんでこうなってるんだ」と怒られたことの方が強く記憶に残るんです。感謝の言葉はふわっと消えてしまうのに、怒号や文句は、夜になっても耳に残っている。それが原因で眠れない夜もあります。あんなに時間をかけて準備したのに、たった一言で全部が否定されるような気がしてしまうんです。
ふとした瞬間に「自分は何のためにやってるんだろう」と思う
コンビニの駐車場で一人おにぎりを食べながら、ふと「なんでこんなに頑張ってるんだろう」と思うことがあります。車の中で一息つくのが、唯一自分の時間。誰のために？自分のために？いや、もうそれすらもよくわからない。ただ、「やめたら全部止まる」からやっている。それだけのような気もしてきます。
それでも辞められない理由
こんなに大変で報われないと感じても、辞めようとは思わない。不思議な話ですが、それが現実です。きっとこの仕事に、何かしらの「意味」や「役割」を感じているから。代わりがいないという責任感もあります。誰も褒めてくれなくても、自分だけは知っている。今日も誰かの不安を取り除いたんだと。
辞めたら誰が引き受けるのかという現実
この町で登記や遺産の手続きを頼める司法書士は限られています。僕が休めば、誰かが困る。それが現実です。「代わりなんていない」と思い込むのもどうかとは思いますが、実際に依頼が詰まっているのを見ると、責任の重さに背中が伸びる。「辞めたい」と思っても、その一歩を踏み出せない理由が、ここにあります。
「ありがとう」の一言が、妙に効く日もある
たまに、ふっと「本当に助かりました」と言ってくれる人がいるんです。それだけで、何日か分の疲れが取れるような気がする。その一言のためにやってるんじゃないか、なんて思える瞬間もあるから不思議です。もしかすると、報われるって、そういうささやかな出来事の積み重ねなのかもしれません。
司法書士を目指す人へ伝えたいこと
もしあなたが司法書士を目指しているなら、僕から伝えたいことがあります。華やかさはないけれど、人の生活に深く関われるやりがいはある。だけど、それは同時に孤独と向き合うことでもあるということを、忘れないでください。
夢や希望だけじゃ食べていけない
資格を取れば安泰、なんてことはありません。むしろ、スタート地点に立っただけ。そこから先は、集客や信用、人間関係の綱渡りが続きます。夢や希望だけでは空回りしてしまう現実に、早く気づくほど楽になります。知識だけじゃなく、粘り強さと自己管理が求められる世界です。
でも現実を知った上での覚悟は力になる
厳しい現実を先に知っておくことで、自分を守ることができます。現実を直視してもなお「やりたい」と思えるなら、それはきっとあなたの武器になります。覚悟を持って進めば、不安や孤独ともうまく付き合えるようになります。僕も、そうして今日までやってこれました。
苦しいこともあるけど、悪いことばかりでもない
すべてが辛いわけじゃありません。人との関わりの中で心温まる瞬間もありますし、自分の力で解決できたという達成感もあります。苦しいことばかりのように感じる日もありますが、それでも「やっててよかった」と思える瞬間が、確かにあるんです。
それでも僕らは、続けていく
報われるかどうかは、結局自分の感じ方次第なのかもしれません。報われなかった努力が無駄だったとは限らないし、そこに意味を持たせられるかどうかは、自分にかかっている。そう思うようになってからは、少し肩の力が抜けました。毎日完璧じゃなくても、今日もやれた。そう思えるだけで、少し前に進める気がしています。
報われない努力の中に、確かなものがある
僕らがしている努力は、誰にも気づかれないかもしれません。でも、確かに誰かの生活の一部になっています。小さな感謝、小さな信頼、それが積み重なって、いつか「やっててよかった」と思える日が来る。そう信じて、今日もまた、報われるとは限らない努力を続けていきます。
「意味があるか」ではなく「意味を持たせるか」
努力に意味があるかどうか、それを決めるのは他人ではなく、自分です。誰かに評価されなくても、自分の中に意味を持たせることができれば、やっている価値はある。報われることを期待するより、意味を見出すこと。その方がずっと、自分を救ってくれる気がします。
