「ついで仕事」の罠に気づいていますか?
「ちょっとだけ」「ついでにこれも」。そんな軽い気持ちで手を出した仕事に、まるまる半日を奪われたこと、ありませんか?司法書士の仕事はそもそも細かくて繊細。なのに、「これも今のうちにやっておこう」と思った瞬間から、予定が崩れ、段取りが狂い、気がつけば夕方。自分でも「何やってたっけ?」と振り返るのが怖くなるような、そんな一日が定期的に訪れます。
一つ一つは小さい。でも時間が消える
「ハンコを押すだけ」「FAXを送るだけ」「電話を1本折り返すだけ」。どれも大したことなさそうに見える。でもそれが連鎖して、終わってみれば2時間経過。しかも集中を切られるたびに、元の作業に戻るのがしんどくなる。小さな用事が次から次へと波のように押し寄せて、気づいたら溺れてるんですよね。
「1分だけ」の積み重ねが1時間になる
私自身、朝イチで登記のチェックを始めようとしたのに、まずは事務員さんから「この書類の返送先が不明です」と聞かれ、その場で依頼人に電話。それが終わったと思ったら、メールが鳴って補正依頼の確認、ついでに別件の委任状も見直して…。全部「1分で終わる」と思ってたけど、結局それだけで1時間消えました。
タスクが断片化して集中できない
人間の脳って、一度中断されると、戻るのにエネルギーが必要なんです。特に登記識別情報の確認や添付書類の精査のように集中力が必要な作業は、一度止まるともうダメ。中途半端に「ちょっとだけ他のこと」を挟むと、もう本来の仕事に戻れない。気力も削られて、イライラだけが残る。ほんと地味に効いてきます。
予定通りに進まない原因のほとんどは「ちょっとしたこと」
「今日こそは溜まった申請書を一気に仕上げよう」と意気込んでも、午前中に来た電話と3通のメール、それに関するちょっとした書類確認で昼前にはもうクタクタ。残っていたのは「結局今日も何も進まなかった」という自責の念と、焦りだけ。問題は、大きなトラブルじゃなくて、こういう小さい作業なんです。
午前中が気づいたら全部潰れていた話
ある日、「午前中で3件分の登記申請を終わらせるぞ」と予定を立てました。でも9:10に1件目の電話、9:25に依頼人来訪、10:05に補正依頼のメール、11:20に市役所からの確認電話…。最終的に申請書を1行も触らずに昼になりました。予定が予定でなくなる、それが現実です。
「あのついで対応」で午後の予定がずれ込む
午後も「これだけ片付けてから申請を」と思ってFAX対応や封筒の宛名書きをしているうちに、銀行との調整電話が入って、結局今日中にやりたかった仕事に手をつけられず。業務終了後、居残って作業する羽目になる。そんな日が月に何度もあります。
なぜ「ちょっとしたこと」は後回しにできないのか
後回しにすればいいのは分かってる。でも実際には「今やった方が早い」「今返さないと失礼かも」「忘れるかもしれない」といった感情に飲まれてしまい、結局すぐやってしまう。だからこそ、意識的に「やらない」選択肢を持たないと、いつまで経っても仕事は終わらないんです。
依頼人対応の“今返さなきゃ”という圧
依頼人からのメールや電話。ちょっとでも放っておくと「この司法書士、対応遅いな」と思われてしまうんじゃないかというプレッシャーがあります。特に相続関係はデリケート。問い合わせがあればすぐに返信したくなる。でも、そのたびに自分の作業は中断され、結局どれも中途半端に終わる悪循環。
メールの返信、電話の折り返し、書類のチェック
たとえば「〇〇様の戸籍に不備があります」との連絡が来た場合、それだけなら1分で済みそう。でも実際には戸籍を見直し、原本と照合し、本人に連絡して説明して…と20〜30分はかかる。その後、また気持ちを切り替えて別件に戻るのがつらいんです。
断ると悪印象になるという恐怖
「今対応できません」「確認は明日になります」と言えればいい。でも、相手の表情が曇るのを見るのが怖い。そんな心理が、つい「今やります」に繋がる。でもその代償は、自分の業務時間の圧迫です。わかってはいるんですけどね…。
自分で全部やった方が早いという思い込み
事務員に頼めばいいのに、「いや、これは自分でやった方が早い」と思ってやってしまうことが多すぎます。結果、自分の手はどんどん塞がれて、どこにも進めない。任せるには手間がかかる。でもその手間を惜しんでいるうちは、何も変わらないんですよね。
人に任せるのが面倒くさくなる罠
説明する手間、確認する手間、それを考えると「自分でやった方が早い」。でも、それって結局ずっと自分がやる羽目になるだけ。特にルーチン系の作業こそ、時間をかけてでも最初に教えておくべきなんです。後回しにすると、未来の自分が苦しみます。
でも結局、そのせいで全体が遅れる矛盾
その場ではすぐ終わっても、蓄積されてくると全体の時間を奪われます。「ちょっとしたこと」ばかりを処理してると、肝心の仕事に着手できない。気がつけば納期ギリギリ、夜中の作業。そんな毎日を繰り返してる自分が情けなくなります。
「ちょっとしたこと」こそ、システムで処理すべき理由
一見小さな作業こそ、仕組み化する価値がある。毎日繰り返すものほど、習慣化・自動化の余地があります。すべてを完璧にこなすのではなく、「仕組みで回す」ことで、本当に必要な仕事に集中する時間を確保することができます。
タスクの切り替えコストを無視してはいけない
マルチタスクは非効率だとよく言われますが、司法書士の仕事においては特にそう感じます。補正書類を作っている途中に別件の相談が入ると、頭を切り替えるのに時間がかかる。そのたびに集中力が分断され、生産性が落ちていく。だからこそ、断る勇気と、仕組みの導入が必要なんです。
集中を妨げる「ついで仕事」の心理的負担
「このくらいならやっておこう」「これも終わらせておこう」という気持ちは一見前向き。でもそれが蓄積して、結果的に本来の仕事が遅れ、ミスが生まれ、夜遅くまで働くことになる。そんな悪循環に、私たちは意識的に抗わなければなりません。
ツール導入で救われた実体験
私が導入してよかったのは、依頼人とのやりとりをGoogleフォーム+スプレッドシートで整理することでした。紙のメモや口頭指示だと忘れるし漏れる。見える化するだけで、無駄な確認の時間が減りました。最初は手間でも、後がラクになる。まさに「未来の自分を助ける仕組み」でした。
スプレッドシートとチャットボットの使い分け
進捗管理や依頼情報の整理にはスプレッドシート、簡易なFAQや確認メッセージにはチャットボット。この組み合わせで、事務員さんも私も「何度も聞く」「何度も調べる」が減りました。ちょっとした改善だけど、累積すると大きな差になります。
ルーチン化しただけで時間が浮いた話
月末の請求書送付をテンプレ化し、ルーチン作業として事務員に任せたことで、私の時間が2時間ほど浮きました。手放す勇気、大事ですね。「自分しかできない仕事」に集中するために、やらない努力も必要だと実感しました。
「やらない勇気」もまた仕事の一部
忙しいからといって、全部を自分で抱えていては潰れます。だからこそ、「やらないことを決める」ことが、最も効果的な業務改善かもしれません。司法書士という仕事は責任が重く、つい何でも対応したくなります。でも、その気持ちに流されていては、いつまでも余裕なんて生まれません。
全部に応えようとすると、自分が壊れる
私たちの仕事は「人の不安」に応える仕事でもあります。でもそのすべてに100%のスピードと正確さで応えようとすれば、自分のキャパはすぐに崩壊します。だからこそ、自分の健康や家庭とのバランスも含めて、「引き受けない勇気」が必要なんです。
時間は有限。誰も「ついで」では動けない
「ついでにやっておきますよ」と言いたくなる気持ちは分かります。でもそれを繰り返すと、いつか本当に必要な仕事ができなくなります。自分を守るためにも、時間を守るためにも、「これは今じゃない」と言うことは、けっして悪いことではないと思います。
司法書士の仕事は「効率」で測れない部分がある
依頼人との信頼関係や、手続きの正確さなど、司法書士の仕事には「非効率だけど大事なこと」がたくさんあります。だからこそ、それ以外の部分で効率化する必要がある。全部を頑張るのではなく、「頑張らないところ」を決める。そんな働き方が、これからの自分には必要だと思っています。