まさかの感謝に胸が熱くなった夜 ― 手続きを終えた依頼人からの一通のメール

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まさかの感謝に胸が熱くなった夜 ― 手続きを終えた依頼人からの一通のメール

手続きの山に埋もれたある一日

その日も、いつも通り朝から書類の確認、登記申請、電話対応に追われていた。事務所の中は静かだけど、頭の中はいつも戦場だ。45歳、地方で司法書士として独立して15年。手慣れた仕事のはずなのに、ひとつ終わっても、またひとつ増える案件。結局、達成感よりも疲労感のほうが先にやってくるのが常だ。

終わらない登記と終わらせなきゃいけない心

「この登記、急ぎでお願いします」と言われれば、つい「わかりました」と答えてしまう。でもその「急ぎ」が、すでに抱えている他の“急ぎ”と重なると、心の中で小さくため息が漏れる。自分の気持ちを整える暇もなく、ただミスなく、淡々と処理するしかない。感情を挟む余地なんてどこにもない。

ミスが許されない緊張感

司法書士の仕事は「当たり前に完璧であること」が前提になっている。何か間違いがあれば、信用を失うだけじゃない。依頼人の大事な財産や権利にも影響する。だからこそ、どんなに疲れていても集中力は切らせない。…と言いたいけれど、現実はギリギリだ。眠気と闘いながらパソコンとにらめっこする夜も珍しくない。

人間らしい感情を出す余裕もない

本音を言えば、誰かに「よく頑張ってるね」と言ってほしい時もある。だけど、この業界ではそれを言葉に出すのはどこか気が引ける。事務所でただひとり、無言で処理し続ける姿は、自分でも「機械みたいだな」と思うことがある。だんだん、自分の気持ちに鈍感になっていくのが怖くなる。

事務員さんの小さなため息に気づかない自分

一緒に働いている事務員さんも、当然ながら疲れている。けれど僕は、それを「自分よりは楽だろう」と無意識に思っていたかもしれない。ある日、彼女がファイルを机に置いたときのわずかなため息に、ふと我に返った。「俺、いままで何見てたんだろうな」と心の中で呟いた。

夜遅く、メールの通知音が鳴った

時計は22時を過ぎていた。もうすぐ今日も終わる…とパソコンを閉じかけたそのとき、スマホが鳴った。LINEでもなく、通知でもない、メールだった。最近は依頼人からの連絡もほとんどLINEに移っているから、珍しい。何かミスでもあったかと、胸がざわついた。

依頼人からの件名に一瞬身構える

「〇〇の件、ありがとうございました」そう書かれた件名を見て、逆に不安になった。「何か問題でもあったのか?」と、最初は思ってしまった。こんな夜にメールを送るなんて、急ぎのクレームじゃないか…と、身構えながら本文を開いた。

開いてみると「ありがとうございます」の一言

そこには、丁寧な言葉で感謝の気持ちが綴られていた。「不安な気持ちだったけど、先生が丁寧に説明してくれて安心しました。無事に手続きが終わり、本当に感謝しています。」たった数行だったけど、読んだ瞬間、胸がじわっと熱くなった。

感謝のメールにこみあげた涙

「自分の仕事って、こんな風に誰かの心に届くんだろうか」と、最近ずっと思っていた。仕事はこなせていても、誰かの役に立っている実感は薄かった。でもそのメールが、その思いをすべてひっくり返してくれた。誰かの生活の一部に、確かに自分がいた。その事実に涙がこぼれた。

たった数行に詰まった救い

感謝の言葉って、こんなにも救いになるんだなと改めて感じた。全員がこんなメールをくれるわけじゃないし、期待すべきものでもない。でも、今の自分にはそのたった一通が、何よりの栄養になった。

誰かの役に立てていたんだという安堵

「今日も誰かのために動けた」と思えたのは、いつぶりだっただろう。つらい日々が続いても、「意味のあることをしてるんだ」と感じられる瞬間がある。それがあるから、また明日もやっていけるのかもしれない。

普段は見えない「ありがとう」の価値

僕らの仕事は、終わった瞬間から忘れられることが多い。登記が終われば、次の段階へと人生は進む。でも、ときどきこうして立ち止まって感謝の言葉を届けてくれる依頼人がいる。それだけで、自分の存在が肯定された気がした。

報酬より響いた一文

正直なところ、報酬額よりも嬉しかった。「自分じゃできなかったことを、代わりにしてくれてありがとう。」たったそれだけで、報われるんだと感じた。お金じゃ買えない、仕事の本質に触れた気がした。

誤解されがちな司法書士の立ち位置

司法書士の仕事は、士業の中でもどこか地味な扱いを受けがちだ。派手な訴訟もなければ、テレビにも出ない。でも、誰かの人生の節目にそっと寄り添うこの仕事の価値を、自分たち自身がもっと認めていいんじゃないかと思った。

愚痴ばかり言ってた自分が恥ずかしくなった

日々の大変さに押されて、つい「しんどい」「やってられない」と愚痴ばかり言っていた。でも、この感謝のメールを読んで、それが恥ずかしくなった。誰かのためにやっているつもりが、実は一番自分のためになっているのかもしれない。

でも、やっぱり仕事はつらい

とはいえ、現実は甘くない。翌朝になれば、また書類が山積みで、またため息をついてるかもしれない。それでも、「つらくてもいい、意味があるなら」と思えるだけで、少しだけ前に進める気がする。

それでも続けられる理由ができた

感謝のメールは一瞬の出来事だったけど、そこに込められた想いは、長く残る。「この仕事、やっててよかったな」と思えるたびに、また少し強くなれる。今日も愚痴りながら、それでも頑張ろうと思う。

これから司法書士を目指す方へ

これを読んでいる司法書士志望の方へ、声をかけたい。正直、華やかな世界じゃないし、孤独で泥臭い仕事だ。でも、ふとした瞬間に「やっててよかった」と思える。そのための努力だと思えば、きっと乗り越えられる。

きれいごとじゃない、でも捨てたもんじゃない

理想だけで突っ走れる世界じゃない。けれど、真面目に向き合えば、ちゃんと誰かに届く。それが司法書士という仕事だと、僕は思っている。苦しい時ほど、その意味がよく見えてくるから不思議だ。

苦しいときこそ、支えになる瞬間がある

「何のためにやってるんだろう」と思うこともある。でも、そんなときに限って、誰かの言葉が救ってくれる。自分ひとりでは気づけなかった価値を、相手が教えてくれることだってある。

感謝されない日々の先にあるもの

すぐには報われない。でも、その積み重ねが、ある日ふと報われることがある。その時初めて、「ああ、続けててよかったな」と心の底から思える。そんな夜があるから、司法書士という仕事はやめられない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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