また書類がない!?“失くし屋さん”が多すぎる職場のリアル

また書類がない!?“失くし屋さん”が多すぎる職場のリアル

「またないの?」から始まる一日

朝イチの業務開始、コーヒー片手に書類を探すところからスタートする日。もう何度目だろうか。「先生、あの相続の戸籍って…昨日机にありましたよね?」と事務員が言う。いや、それがもうどこにもないんだよ。お決まりのやり取り。探せど探せど出てこない。こんな小さな紙切れ一枚に、事務所全体が振り回されるのは日常茶飯事。これが司法書士事務所の“あるある”なんだ。

失くす人はなぜ毎回、同じように失くすのか

不思議なことに、書類を失くす人は決まって同じタイプだ。性格がやさしい、気が利く、でも机の上はちょっとカオス。大事な書類を無意識のうちに別の資料に挟んでしまう。「ここにあるだろう」と思い込んだ場所にはなく、だいたい全然違う棚から出てくる。本人は悪気がない。でも、こちらとしては時間のロスとストレスが蓄積される。

どこかにあるはず…は幻想

「どこかにあるはずです」——この言葉が何よりも怖い。なぜなら、“どこか”は基本的に無限だから。あるかもしれないけど、見つけるまでの時間がもったいない。しかもそれが、お客様から預かった大切な書類なら、なおさら胃が痛くなる。私も「ないと思ってたらプリンターの裏にあった」なんて経験があるけど、そう毎回奇跡は起きない。

紙文化の罠にハマり続ける日々

司法書士業界はいまだに紙が主役。デジタル化が叫ばれて久しいけど、紙文化は根深い。登記の添付書類、委任状、戸籍謄本…。すべてが「原本必須」で、スキャンしても“それだけじゃダメ”な現実がある。紙がある限り、紛失のリスクは消えない。そしてその責任は、誰よりも“代表者”である私が取らされる。

デジタル化できない書類の多さ

例えば、戸籍の原本。これはスキャンして保管したとしても、提出は紙。自治体によってはコピーさえ認められない。たまにお客様から「全部メールで送れませんか?」と言われるが、実際はそうもいかない。紙を扱うということは、失くすリスクとずっと付き合い続けることになる。

スキャンしても、原本探しが終わらない

「スキャンしたならいいじゃない」と思われるかもしれないが、そう単純ではない。法務局から「原本見せて」と言われたらアウト。スキャンしたはずのファイルが見つかっても、原本が見つからなければ提出できない。結局、紙がないと仕事にならない。スキャンは安心材料にはならないということだ。

事務員の「どこかに置きました」問題

ウチの事務員は真面目でよく気がつく。でも、「とりあえずここに置いておきました」っていう場所が毎回違う。書類が行方不明になるのは、だいたいこの“とりあえず”のせい。後から聞いても、本人も思い出せないことが多く、結局私が一から探す羽目になる。

善意で動いてくれるのはありがたいけれど

彼女は本当に一生懸命やってくれている。それは間違いない。でも、「ちょっとキレイにしようと思って」整理されたファイルのせいで、どの分類にも当てはまらない書類が未分類ボックスに入っていたりする。ありがたいんだけど、怖い。いや、マジで怖い。

結局、自分で探す羽目になる現実

「先生のデスクにありましたよ」と言われて見ると、ない。「もしかしたらシュレッダーしちゃったかも」と言われると、もう目の前が真っ暗になる。最終的には私が、デスクの下、棚の裏、コピー機の周辺まで全部ひっくり返して探すはめになる。時間が吸い取られていく音が聞こえる気がする。

「片づけた」は、片づけた人しかわからない

書類の整理って、本当に“本人ルール”の世界。何が「片づいている」のか、定義は人によって違う。共有の棚に入れたつもりが、個人の引き出しに移動されていたり。「念のため別に保管しておきました」って、それ、誰も気づかないから。いやほんと、頼むから一言メモでも残してほしい。

自分も失くす側だったこと、忘れかけてた

若い頃、実は私も同じように書類を失くしていた。封筒に入れたままコピー機の上に放置、役所に持って行ったつもりがカバンの奥…。思い出すと冷や汗が出る。でも、今は“怒る側”になってしまった。失くされるたびに、若い頃の自分を棚に上げて、説教をしてしまっている。

新人時代の黒歴史に思いを馳せる

司法書士補助者時代、よく先輩に怒られた。「お前、また戸籍なくしたのか!」って。いや、失くしたんじゃなくて机の下に落ちてただけです…なんて言い訳も通じなかった。今思えば、あの頃の自分は“他人事”だった。責任が軽かったから、深刻さもよくわかっていなかったんだと思う。

怒る側になった今の葛藤

立場が変わると、見える景色も変わる。「自分が何とかするしかない」と思うようになってからは、失敗の重みが違う。でも、怒っても仕方ないのも分かってる。怒るとお互い気まずくなるし、仕事も進まない。でも、笑って許せるほど、こっちも余裕がない。だからつい愚痴っぽくなる。

それでも前に進むために

書類は失くなる。それはもう、どうしようもない部分もある。でも、失くすたびに一つずつルールを増やしてきた。「戸籍は必ずコピーを先に取っておく」「原本を移動するときはポストイットで通知」など。小さな工夫でしかないけれど、積み重ねが安心につながる。

怒らずにやれる日は、ちょっと自分を褒めてやる

失くされたときに怒鳴らなかった日。それだけで、今日はよくやったと自分に言ってあげたい。感情の爆発を抑えて、理性的に「次から気をつけようね」と言えたら、それだけで成長。たとえ書類が失くなっても、信頼関係が失くならないようにしたい。

完璧を目指さない。失くしても次に活かすだけ

書類を100%失くさないなんて無理。だったら失くしたあと、どうフォローするか。どう次に同じことを繰り返さないようにするか。それが大事。完璧じゃなくていい。愚痴はこぼしてもいい。でも前に進む。それが、司法書士という仕事を続けるコツなのかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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