休むことが怖いあなたへ——“がんばりすぎ症候群”の正体

休むことが怖いあなたへ——“がんばりすぎ症候群”の正体

「休む=悪」と感じてしまう自分に気づいた日

ある日、久しぶりに午後からの空き時間ができて、ふと近所の喫茶店にコーヒーを飲みに行ったときのことです。誰にも迷惑をかけていないのに、なぜか落ち着かない。スマホをチェックして、メールも電話も来ていないのに「何かやるべきことを放置してるんじゃないか」とそわそわする。まるでサボってる罪人のような気持ちになる。冷静に考えれば、15分の休憩すら後ろめたく感じてしまう自分に呆れましたが、その瞬間に「これ、かなりまずいな」と気づいたんです。

ちょっとコンビニに行くだけでソワソワする

たとえば、事務所の備品が足りなくて近所のコンビニに行くだけでも、時計を見ながら急いで戻ってきてしまう。「こんな時間に外出してていいのか」「依頼者から電話が来たらどうしよう」と、まるで留守にしているのが罪のように感じてしまうのです。昔はこんなことなかったのに、いつのまにか“仕事中に一息つく”ことすら悪だと思うようになっていた自分がいました。

仕事が減る不安と、休めない矛盾

もっと怖いのは、実際にはそんなに急ぎの仕事がない日でも、休むことに強い不安を感じることです。「ここで休んだら仕事が来なくなるかも」「努力を止めた瞬間に信頼を失うかも」と、勝手に不安が膨らんでいきます。結果的に、無意味にパソコンの前に座り続けて、疲れとストレスだけが溜まっていく。これでは本末転倒です。

“がんばりすぎ症候群”という呪い

この状態を、私は勝手に「がんばりすぎ症候群」と名づけました。無理して頑張っている自覚はないのに、休むことができない。そんな状態が、じわじわと精神と体をすり減らしていきます。司法書士という職業には、特有の“頑張って当然”という空気があるような気がします。

頑張って当然、止まったら終わり——誰が決めた?

「頑張ってなんぼ」「努力が信頼につながる」というのは、確かに間違ってはいません。でも、それが“365日ずっと走り続けること”とイコールになってしまうと危険です。誰かにそうしろと言われたわけでもないのに、自分で自分を縛ってしまう。自営業だと特に、その傾向が強くなりがちです。

司法書士という職業の「孤独さ」

特に地方で一人事務所を運営していると、相談する相手がいません。何か判断を迷っても、自分で決めるしかない。その中で「とにかくやるしかない」と追い詰められ、立ち止まることへの恐怖がどんどん強くなってしまう。孤独と責任の重さが、がんばりすぎ症候群に拍車をかけているのです。

「相談=お金をもらう罪悪感」の裏側

司法書士の相談は、無料ではありません。でも、相手が困っているのを見ると「お金を取ってまで話を聞くのは申し訳ない」と感じてしまう瞬間もあります。これは仕事なんだと自分に言い聞かせながらも、心のどこかで“楽して稼いでいる”ような罪悪感が顔を出す。その心理がまた、頑張り続ける理由になってしまうのです。

事務員さんがいても休めないのはなぜか

うちの事務所にも事務員さんが一人います。信頼もしているし、とてもよくやってくれている。でもそれでも、自分が不在のときに何かあったらどうしようという不安が拭えません。結局、自分が“全部把握していないと落ち着かない”状態に陥っているのです。

「任せる不安」と「自分でやった方が早い病」

任せたくても、「あとで確認するのも手間だな」「結局、自分でやった方が早いな」と思ってしまう。その結果、手放すことができず、どんどん自分の仕事が増えていく。そして、事務員さんも「口出しされるなら最初から任せてくれなきゃ…」と気まずくなる。完全に悪循環です。

人を雇っても気が休まらないリアル

「人を雇えば楽になる」と思っていたのに、実際には管理や気遣い、教育と、やることが増えました。もちろん支えてもらえる安心感もあるけど、その分、責任も増える。「自分が倒れたらこの人の生活も…」と考えると、ますます休めなくなってしまうんですよね。

“ちゃんとした司法書士像”に振り回されている

「ミスをしない」「いつも元気でいる」「親切で誠実である」。こういった“理想の司法書士像”に、気づかぬうちにがんじがらめになっていました。でもそれって、本当に必要な姿なんでしょうか?

理想像に追い詰められて壊れていく現実

理想を目指すのは大切ですが、完璧を追い求めすぎると、心も身体も壊れてしまいます。過去に一度、目の前が真っ白になって立ち尽くしてしまったことがあります。あのときは本当に危なかった。何もしていないのに、動悸と涙が止まらない——あれが限界のサインでした。

「ミスできない」と思いすぎて思考停止

「登記を間違えたら一巻の終わり」と思い詰めて、頭が固まってしまう。逆にミスを招くという悪循環に陥ります。慎重であることは悪くありませんが、余裕を失うとすべての判断力が鈍ります。休むことは、実はリスク管理にもつながっていると後になって気づきました。

罪悪感から自由になるための第一歩

じゃあどうすればいいのか?私が実践して少しずつ効果を感じた方法をご紹介します。たいそうな方法ではありません。でも、小さな意識の変化が大きな転換点になりました。

「休む勇気」を持つためにやったこと

いきなり休暇を取るのは難しい。だから私は“強制的に何もしない時間”をスケジュールに入れました。最初は抵抗がありましたが、徐々に「この時間は何もしなくていい」と脳が覚えていきます。休むことに罪悪感を抱かない練習、これが第一歩です。

意図的に“何もしない”時間をカレンダーに入れる

Googleカレンダーに「何もしない15分」とブロックを入れるようにしました。これだけで、「この時間は義務的にサボっていい」と脳が納得してくれるようになります。予定にしてしまえば、むしろ守りやすいんです。ルールに弱い自分には、これが合っていました。

同業者との「ネガティブ雑談」の効能

気を許せる同業者と“愚痴を言い合う時間”を作りました。「ああ、自分だけじゃなかったんだ」と思えるだけで、気持ちが少し楽になるんです。ポジティブな相談も大事ですが、同じだけネガティブを共有することにも意味があると感じています。

それでも休めないときに自分に言い聞かせていること

休もうとしても、どうしても落ち着かないときがあります。そんなとき、私は意図的に“極端なこと”を自分に言い聞かせるようにしています。ちょっとブラックですが、案外効きます。

「今日死んでもどうせ仕事は残る」と思ってみる

本当にそうなんですよ。自分がどれだけ頑張っても、突然倒れたら仕事は止まるし、誰かが何とかしてくれる。逆に、そんなもんなんだなと思えば、少しは気が楽になります。無責任に聞こえるかもしれませんが、そうやって自分の背負っているものを軽くしてあげることも大事です。

責任感よりも、自分の持続性を優先してもいい

結局、自分が壊れてしまったら何も残らない。だからこそ、今の自分を持続可能に保つことが何よりの責任だと、今は思っています。頑張りすぎない自分を許せるようになること、それが本当の意味でのプロ意識なのかもしれません。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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