午前中に終わるはずだった登記が、なぜか深夜に──その日、何が起きたのか

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午前中に終わるはずだった登記が、なぜか深夜に──その日、何が起きたのか

午前中で終わるはずだった登記申請、その日のはじまり

この日は、午前中に一件の所有権移転登記を片付けて、そのまま午後は机の整理でもしようかと思っていたんです。朝8時半、事務所に着いた時点では、今日の流れは完璧だと思っていました。書類も整っている、依頼者からのヒアリングも済んでいる、あとは申請するだけ。ところが、司法書士の仕事というのは、そう簡単に「予定通り」進まないことが多いんですよね。

スケジュールは完璧だったはずなのに

事務員さんとも「今日は早く終わりそうですね」なんて軽口を叩いていたのですが、その油断がダメだったのかもしれません。登記原因証明情報や添付書類に目を通して「念のため」のチェックをしていたら、嫌な予感がふつふつと。依頼者から提出された書類の一部に、不自然な日付があったんです。

小さなほころびに気づいたのは昼過ぎ

午前中のうちにすべて提出する予定だったのに、その確認作業でどんどん時間が過ぎていき、気づけばお昼過ぎ。結局、その不自然な日付を確認するために、依頼者本人に連絡を取ることになりました。ところがこの方、電話に出ない。メールも返信がない。このあたりから、じわじわと胃が重くなるような感覚が襲ってきました。

予定が狂い始めた瞬間──地味に効く「確認不足」

司法書士の仕事において「たぶん大丈夫」は禁物です。確認不足が後のトラブルにつながるというのは百も承知。でも、どこかで「今日はサクッと終わってほしい」という気持ちがあったのも事実です。そんな焦りが、事態をややこしくしていくわけで。

登記原因証明情報のミス、気づいたときには…

日付の矛盾は、よくよく確認すると贈与契約書と登記原因証明情報の間で発生していました。贈与契約は4月10日になっているのに、登記原因はなぜか4月5日。このままでは登記できないし、後から訂正となれば法務局から補正指示が来る。気づいたときには、「あー、今日終わらないな」という諦めの境地に。

関係者に連絡するも、つながらない午後

契約書に署名したのは親子。高齢のお父様と、県外に住む息子さん。お父様は固定電話のみ、息子さんは平日の日中は仕事で電話NG。まさかとは思ったけど、やっぱり連絡つかず。この時点で時刻は15時。このままでは今日中の申請も怪しくなってくるという最悪の流れ。

「ちょっと待ってください」の繰り返し

ようやく夕方17時過ぎに、依頼者のお父様から折り返しが入りました。「息子に聞かないとわからんのですわ」と言われ、また待機。その間、私は再度書類を確認しながら、どうリカバリーできるかを考え続けていました。いくら「早く終わらせたい」と思っても、相手がある仕事では自分一人ではどうにもならない現実に直面します。

書類の差し替え?修正?まさかの再捺印

結局、契約日を訂正した登記原因証明情報を新たに作成し、依頼者の自宅まで再捺印をお願いしに伺うことに。しかも、お父様が高齢で車がないため、こちらが訪問。ここで私は悟りました、「今日は帰れない」。書類の差し替えが一つでもあると、登記申請の全体スケジュールが崩れます。しかも、その1枚のために2時間消えることも。

事務員も私も疲労困憊、それでもやらねばならぬ

訪問・印刷・説明・再チェック──気力と体力の勝負です。事務所に戻ったのは夜の20時を回った頃。事務員さんも残ってくれていましたが、さすがに顔が死んでました。申し訳ないと思いながらも、私は「あと少しだから…」と呟いていた気がします。

ふたりで手分けするしかない現実

私が新しい登記原因証明情報を作り直し、事務員さんが電子署名の準備。申請前の最終確認でチェックした回数は、数え切れません。それでも人間ですから、どこかにミスが潜んでいるかもしれないと疑ってしまう。そんな緊張感の中、PCに向かう手がやたらと重く感じられました。

外出と連絡と印刷の無限ループ

この仕事、ほんとに「地味な手間」が多すぎるんです。印刷して捺印もらって、またスキャンして、PDF作って、それをチェックして…とやってるうちに、軽く1〜2時間消えます。これは効率化でどうにかなるレベルじゃない、制度と現場の狭間で潰れそうになる瞬間です。

法務局への提出は夜、そこからが本当の地獄

なんとかすべて揃えて、登記・供託オンライン申請システムにログイン。もう21時を回っていました。夜間でも申請できるのがオンラインの強みなんですが、こんな時間に使うことになるとは…という複雑な感情。

オンライン申請が思いのほか手間取る

添付書類のサイズが大きすぎてアップロードできない、という謎の現象に遭遇。PDFを軽量化しようとしたら、今度は画質が荒くなって文字が潰れる。時間と戦いながらも、法務局の担当者に迷惑をかけないように、というプレッシャーも地味にのしかかります。

添付ファイルが開かない?エラーに振り回される

なんとか申請ボタンを押しても、返ってきたのは「エラー:ファイル形式に不備があります」の文字。ふざけんな、と思いながらも再度確認。結果、PDFのバージョンが古くてダメだったとのこと。誰も教えてくれないこんな仕様に、深夜の事務所で一人ツッコミ入れてました。

「PDFのバージョンが古い」なんて知らんがな

フリーソフトで作ったPDFが、なぜか受付エラーに。Adobe Acrobatで再保存してようやく通る。こんなの、若手や新人だったら泣きますよほんと。何年やってても「知らない仕様」がちょいちょい出てくるこの業界、ほんとに地雷原です。

再アップロードとメール地獄

修正後のファイルを何度もアップロードし、申請を繰り返す。その間、依頼者からの「進んでますか?」メールが届く。いや、こっちが知りたいくらいですよ…と、愚痴の一つも言いたくなります。深夜に鳴るスマホ通知ほど、心を削るものはありません。

ようやく完了…時計の針は深夜1時

ようやく「受付完了」の文字が表示された時、時計は深夜1時を回っていました。達成感というより、「なんでこんなことになったんだろう」という虚無感。机に突っ伏して、しばらく動けませんでした。明日はまた別の依頼が待っている。この繰り返しの中で、司法書士は生きてます。

達成感よりも虚無感が勝つ瞬間

1日をかけて、たった一件の登記。それでも、間違えてはいけない、手を抜けない。達成感なんて二の次で、まずは「終わってホッとした」という感情だけが残る。そういう仕事なんだと思います。

今回の反省と、次回への備え

この失敗から学べることは何か?と自問しました。やっぱり、最初のチェックをもう少し慎重にやっていれば…という後悔が残ります。でも、完全なチェックなんて存在しない。だからこそ、「うまくいかない前提」で動ける準備が必要なんだなと改めて思いました。

なぜ見逃したのか?自己分析してみた

原因は「楽をしたかった」からかもしれません。午前中に終えて、少し余裕を持ちたかった。でもそれが慢心になってしまった。司法書士として、「早く済ませたい」という感情がどれだけ危ういか、思い知らされました。

似たミスを防ぐためのルールづくり

事務所内で、「登記原因と契約日付の照合は二重チェック」をルール化しました。小さな一手間が、大きなロスを防ぐ。その実感を、今回の出来事で骨身に染みて感じたんです。

若手司法書士・受験生に伝えたいこと

この業界、ミスの一つで1日が潰れることなんて珍しくありません。でも、落ち込む必要はありません。むしろ、それが日常です。失敗しながら、少しずつ自分なりのリズムを作っていくしかないんです。

仕事は好きでも、うまくいかない日はある

「司法書士は地味で堅実な職業」と思われがちですが、現場は泥臭くて、予測不能で、しんどいことの連続です。でも、その中に少しだけ、自分を必要としてくれる人がいる。それだけで、続ける意味はあると思います。

だからこそ、「仕組み」でカバーしていこう

精神論ではなく、「凡ミスを防ぐ仕組み」を持つこと。これが大事です。疲れているときほど、チェックリストやルールが自分を守ってくれる。今回の件も、その積み重ねの大切さを痛感した出来事でした。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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