定年がない仕事?司法書士のリアルな終わり方
司法書士という職業には、いわゆる「定年退職」という概念が存在しません。会社員のように「65歳で退職」なんてきれいな区切りがないんです。その自由さが魅力だと言われることもありますが、実際に現場で働いていると、むしろ「いつ辞めていいか分からない」ことに戸惑いや不安を感じることもあります。僕自身、45歳になった今、「この仕事、いつまで続けるんだろうな」と考える機会が増えてきました。
そもそも「定年」という概念があるのか
司法書士には法律上の定年は存在しません。開業していれば、体が動く限り働けます。だから80歳を超えても現役の先生もいらっしゃる。ただし、それが本当に良いことなのかは人それぞれです。僕は20代の頃、「定年がないなんて、最高じゃん」と思っていましたが、実際に40代半ばに差しかかると、果てしなさに軽くめまいがします。
70歳を過ぎても現役の先生はざら
僕の地域でも、70代の先生がいまだにバリバリ現場に立っている姿をよく見ます。それは本当に尊敬すべきことだし、頼れる存在でもある。でも、ふと考えるんです。「自分も70歳になって、登記や相続の相談に応じてるのかな」って。正直、今の仕事量を70代でもこなすなんて想像するだけで怖いです。
やめ時がわからない、これは本当にツラい
会社勤めなら、定年退職という名の「終わり」が強制的に来るけど、僕らにはその線引きがない。だからこそ、どこで仕事をやめるか、自分で決めなきゃいけない。ところがこれが本当に難しい。事務員にも「先生って、いつまでやるんですか?」って冗談交じりに聞かれたことがありますが、冗談じゃなくて答えが出ない。
体力と気力の限界、でも仕事は減らない
最近、本当に疲れが抜けません。夜遅くまで書類作って、朝は早くからお客様対応。昼ご飯すらコンビニおにぎりをデスクでかじる日々。仕事量が減る気配なんて微塵もないのに、体力だけが確実に落ちていく。これで10年後、いや20年後まで続けられるのかって、不安になります。
「あと何年このペースでやれるのか」毎日考えてしまう
独立してから20年近く、ずっと同じようなペースで走ってきた。でも、このまま同じスピードで進み続けるのは無理があります。お客様の期待に応えたい一心で頑張ってきたけれど、ふと我に返ると「あと何年持つんだろう」とつぶやいてしまう。こういう弱音、なかなか人には言えないんですよね。
疲れが抜けない朝、でも登記は待ってくれない
一番つらいのは、疲れて起きた朝に「今日は重要な登記案件が3件」とか予定が詰まっているときです。休みたいと思っても、登記の締切は待ってくれない。自分が倒れたら、事務員にも迷惑がかかるし、依頼者にも不信感を与えてしまう。だから休めない。でも、本音は「誰か代わってくれ…」だったりします。
定年がないのは自由か、不安か
司法書士の世界では、「働きたいだけ働ける」という言い方をされることが多いけれど、それって本当に自由なんでしょうか。裏を返せば「辞めたくても辞めにくい」ということでもあると思います。僕みたいな小さな事務所の開業司法書士にとっては、定年がないことが「不安定さの象徴」に思える瞬間もあるんです。
働きたいだけ働けるメリット
働く意欲があれば年齢に関係なく続けられるのは魅力です。年金に頼り切らず、収入を得られるという意味では安心材料にもなります。やりがいを感じ続けられる人にとっては、この制度は理想的なのかもしれません。実際、元気に働く高齢の先生の姿は、本当に励みになります。
老後資金が不安すぎて辞められない現実
とはいえ、現実は厳しいです。年金だけじゃ生活が成り立たないという不安は常にある。開業していると退職金もないし、老後資金は完全に自己責任。だから、「本当は仕事を減らしたいけど、収入が減るのが怖くて辞められない」というジレンマに陥ります。僕自身、貯金があっても不安です。
年金+司法書士業の併用は可能なのか
年金を受け取りつつ、司法書士として働くことは一応可能です。ただし収入によっては年金が減額されたりするので注意が必要です。そのへんの制度もまたややこしくて、勉強し直すのが面倒だったりする。結局、「働けるうちは働いておくか」という思考に陥りがちです。
「辞めたら一気にボケそう」なんて声も
ある先輩司法書士は「仕事辞めたら一気にボケる気がして怖い」と笑っていましたが、それも冗談に聞こえません。確かに、毎日緊張感を持って仕事していることで、頭も体も保っているんじゃないかという感覚はあります。でも、ボケないために仕事するって…ちょっと寂しくもありますよね。
開業司法書士は“いつ辞めても自由”という呪い
独立していると、「誰にも迷惑かけないから、辞めるのも自由でしょ」と言われます。でも、それが逆に重荷になったりもする。辞めるも続けるも自分次第というのは、自由のようで孤独でもある。周りに相談できる人がいないと、判断を間違えそうで怖くなるときもあります。
退職金もない、引き継ぎ先もない
会社勤めなら、辞めるときに退職金が出たり、後任に引き継ぎして終わる。でも開業司法書士にはそれがない。事務所をたたむときは、全部自分で片づけなきゃいけないし、長年支えてくれたお客様にもお別れの挨拶をするのはとても心苦しい。仕事の終わらせ方って、案外むずかしいです。
廃業=ひとりブラック企業の解散
僕たち開業司法書士は、自分が社長であり、従業員でもある存在。つまり、辞めるというのは「自分が作った会社を自分で潰す」ことでもあります。これは精神的にきついです。事務所を閉める=自分の人生の一時代の終わり、なんですよね。そんな覚悟、簡単には持てません。
「あと何年働くのか問題」に向き合うために
じゃあどうすればいいのか。僕なりに考えているのは、「何歳までにどうなっていたいか」を逆算して考えること。明確なゴールを持つことで、少し気持ちが楽になることもあるんです。計画通りにいかないのが人生ですが、目標があるだけで、今の仕事にも意味を見出せる気がします。
60代、70代で仕事量をどうコントロールするか
今のうちから少しずつ仕事量を調整する訓練をしています。たとえば「この件数以上は受けない」「午後は絶対に外回りしない」といった自分ルールを決める。事務員さんにも負担がかからないように共有しておく。無理を減らすことで、長く続けることも可能になると信じています。
自分の中に“勝手な定年”を決めるという考え方
法的な定年はなくても、自分の中で「この年齢で一区切りにする」と決めておくと、気が楽になります。その通りにいかないかもしれません。でも、そういう“区切り”を決めることは、精神的な支えになります。僕は今のところ「65歳で第一線を退く」とざっくり考えています。
「65歳まではがんばろう」と決めたら少し楽になった話
僕自身、「65歳までは続ける」と思ったことで、漠然とした不安が和らぎました。何も考えずに働き続けるよりも、終わりを意識することで、今やるべきことが見えてきます。あと20年、と思えば、一つひとつの案件にも丁寧に向き合える気がするんです。
司法書士を目指す人に伝えたい現実
司法書士はやりがいのある仕事です。でも「一生現役」でいられるからこそ、いつ辞めるのかという課題がついてまわります。もしこれから司法書士を目指す人がいるなら、この“終わりのなさ”についても考えておいてほしい。それが、現実としての「働き方のリアル」なんです。
やめ時のない仕事には覚悟がいる
定年がないからこそ、どこで終わらせるかの決断はすべて自分次第。それって本当に難しいです。人生設計にも影響しますし、家族にも負担をかけるかもしれません。でも、そういう不安も含めて覚悟しておくことが、司法書士として生きるうえで大切なんだと、僕は思います。
でも“誰かの人生を支える”というやりがいもある
大変なことばかりではありません。司法書士の仕事は、誰かの人生の転機に立ち会える仕事でもあります。「先生がいてくれてよかった」と言われたときは、本当に報われた気持ちになります。その言葉があるから、もう少しだけ頑張ってみようかなって思えるんです。
自分の理想の“終わり方”をイメージしておくこと
理想的な終わり方は人それぞれ。でも、「こうやって終われたらいいな」というイメージがあると、日々の判断にも軸ができます。僕は、自分の事務所をそっと閉めて、最後はゆっくりコーヒーを飲みながら笑っていられたら、それで十分幸せだと思っています。