「うまくやろう」と思った瞬間、肩に力が入っていた
司法書士として15年以上やってきましたが、最近ようやく気づいたことがあります。「うまくやろう」と思えば思うほど、なぜか空回りする。自分の中で「こう振る舞えば信頼されるはず」「ここはミスできない」と意識した時ほど、不自然になり、逆に信頼を損なう結果になることが多かったのです。肩に力が入った自分は、振り返ると決まってミスをしていました。
完璧主義が足を引っ張る、あるあるな日常
たとえば登記の申請ミス。提出直前まで何度も確認し、「間違えないように」と神経をすり減らしていたはずなのに、なぜかポカミスが発生する。完璧を目指すあまり、自分のチェックのリズムが崩れていたんです。事務員さんの方が、淡々と処理して正確だったりすると、余計に凹みます。
“こうあるべき”が積もると、しんどさしか残らない
「司法書士はこうあるべき」という自分なりの理想像が、どんどん自分を縛っていきました。お客様の前では常に冷静で、正確で、丁寧で、失敗せずに…と考えるうちに、本来の自分の感情やペースが見えなくなっていた気がします。結果として、業務が終わる頃にはクタクタで、自己嫌悪だけが残る。
無意識の期待が、行動を鈍らせる
意識していなくても、「相手からどう見られるか」を気にする気持ちは、心のどこかに常にあります。そして、それが行動を迷わせ、決断を遅らせ、かえって信頼を損ねることにもなります。自分で自分にプレッシャーをかけている構造ですね。
事務作業ひとつにも「段取り」を気にしすぎて
例えば、相続関係の戸籍収集。経験上スムーズにいくことは分かっているのに、「依頼者から早く結果が欲しいと思われてるかも」「途中で何か抜けがあったら…」と心配になって、逆に動きが遅くなる。事務員さんが「いつも通りやれば大丈夫ですよ」と声をかけてくれて、ハッとすることもありました。
期待通りに動かない現実に、余計イライラする
「自分はちゃんと準備した」「これだけやったのに」と思えば思うほど、現実が期待とズレた時の落胆が大きくなります。たとえばお客様の対応にしても、「誠意を尽くせば通じる」と思って対応していたのに、相手の反応が冷たかったとき。無意識の見返りを求めていたことに気づかされ、モヤモヤが残りました。
「ちゃんとやらなきゃ」が口グセになると
真面目な人ほど、「ちゃんとやらなきゃ」が口グセになります。でもその言葉の裏には、「失敗したくない」「評価されたい」という不安が隠れていることが多い。私はそれに気づかず、「真面目にやってるのに報われない」という気持ちをずっと抱えていました。
うまくやる努力が、逆に信用を失うこともある
あるとき、不動産の売買登記の立会で、私は「トラブルが起きないように」と事前準備に全力を注ぎ、説明資料もいつも以上に完璧に仕上げました。でも、実際の場面で時間を気にしすぎて、お客様のペースを無視して進行してしまった。結果、「堅苦しくて怖かった」と言われてしまったんです。うまくやるつもりが、逆効果でした。
依頼者の反応に振り回される日々
依頼者がちょっと無表情だったり、質問が多いだけで、「何か不満があるのか?」と不安になってしまう癖があります。終わってみれば満足していただいてるケースがほとんどなのに、その最中は「失敗できない」という思いでいっぱい。疲れます。
「言わなくていいことまで言ってしまった」後悔
丁寧に説明しようとするあまり、つい余計なことまで話してしまって、相手が混乱してしまったことも。情報量を増やすことが“うまくやる”ことだと勘違いしていた時期がありました。本当に必要なことだけを、分かりやすく伝える方が、よっぽど信頼されるんですよね。
事務員さんの方が、案外サクッとこなしてる現実
これは本当に毎日感じます。私があれこれ頭でっかちに考えて手が止まっている横で、事務員さんは淡々と作業を進めている。そして正確。しかも早い。見ていて「どうして自分はこうなれないのか」と思う反面、「たぶん余計なことを考えすぎなんだろうな」とも気づきます。
なぜかこっちの方がミスが多い、という皮肉
「うまくやろう」と身構えた途端に、かえって視野が狭くなり、小さな確認を飛ばしてしまうことがあります。反対に事務員さんは、「いつも通りやればOK」と割り切っている分、ミスが少ないんですよね。皮肉な話ですが、自然体でいることの強さを日々感じます。
“自分だけ特別”なつもりが、ただの空回り
自分だけが責任を背負っているつもりで、「自分はもっと努力しないと」「人より上手くやらなきゃ」と思っていた時期がありました。でもそれって、ただの空回りなんですよね。周囲と比べるより、自分の役割に集中すればいいんだと、ようやく最近になって思えるようになりました。
焦るときこそ、力を抜くしかない
今でも忙しさに押されると、つい「早く片付けなきゃ」「ミスしちゃいけない」と焦ってしまいます。でもそんなときほど、意識的に一呼吸置くようにしています。少し立ち止まることで、自分の中の“うまくやらなきゃ”がリセットされて、作業もスムーズになる。魔法のような効果です。
成功してる司法書士って、力抜けてる人が多い
いろんな先輩司法書士と話していて思うのは、本当に成果を出している人って、肩の力が抜けている人が多いということです。淡々とやるべきことをやっているだけ。でもそれが、依頼者からの安心感や信頼につながっている。自然体の強さ、ですね。
「自分のペースでやればいい」に辿り着くまで
この境地にたどり着くまで、だいぶ時間がかかりました。周囲の目や評価に左右され、自分を見失いそうになったことも多かった。でも結局、背伸びせず、自分のペースで誠実に対応することが、最も信頼される道なんだと今は感じています。
それでも、まだ「うまくやりたい」と思ってしまう
ここまで書いておいてなんですが、やっぱり今でも「うまくやりたい」と思う瞬間はあります。人間ですから。でも、その気持ちを否定せず、「そう思ってるな」と気づくことができれば、それだけで少しラクになります。完璧じゃなくても、十分やれてるんです。
性格なのか、業界の性質なのか
真面目で責任感の強い人が多いこの業界。だからこそ、「うまくやろう」と頑張りすぎてしまう人も多いんじゃないかと思います。けれど、ミスを恐れて何もしないより、時に不器用でも動いてみる方が、依頼者には伝わるものがあると信じています。
“下手でも真摯”の方が信頼される不思議
結局、依頼者が見ているのは“上手さ”じゃなくて、“誠実さ”なんですよね。不器用でも一生懸命な姿勢の方が、人を動かします。私もたまには噛んだり、資料を忘れたりします。でも「すみません、すぐ直します!」と真摯に対応する方が、案外評価が高かったりします。