家族の修羅場は想定外?依頼者の“身内ドラマ”に振り回される日々

家族の修羅場は想定外?依頼者の“身内ドラマ”に振り回される日々

依頼者の「家族問題」に巻き込まれるという職業リスク

司法書士の仕事は登記や相続など、法律上の手続きを淡々とこなすものだと思われがちです。ですが、実際にはそう簡単にはいかない場面が多々あります。特に相続や家族信託の案件では、依頼者の家庭事情にずぶずぶと巻き込まれてしまうことがしょっちゅうです。こちらとしては書類だけ見て処理したいのに、「ちょっと愚痴を聞いてくれませんか?」という展開が待っています。最初は「聞くだけなら…」と思っていたら、いつの間にか感情の渦に巻き込まれてしまい、事務作業が全然進まないなんてことも珍しくありません。

登記や相続の相談が、なぜか家庭の揉め事に発展する

「相続の相談なんですけど…」と静かに始まった面談が、10分後には「実は長男が昔から勝手で…」という愚痴に変わっている。そんな経験が一度や二度じゃありません。話しているうちに依頼者の感情が高ぶり、過去の因縁や兄弟との確執があふれ出してくるのです。こちらとしては法的な手続きの流れや必要書類の説明をしたいだけなのに、いつの間にか家庭内のドラマの傍観者というか、下手をすると巻き込まれ役にまでなってしまうんです。

「ちょっと聞いてほしい」が長くなる地獄のはじまり

「先生、ちょっとだけ聞いてもらっていいですか?」と言われると、断りづらいんですよね。善意で耳を傾けてしまうと、そこから先が長い。気がつけば1時間、全く本題に入れないなんてこともあります。相手も「これは相談の一部だ」と思って話しているので、途中で止めるのも難しい。けれど、こっちは1件あたりのスケジュールを詰めて動いているわけで、予定がどんどん崩れていくんです。

本題が見えなくなる「家族の歴史」語り

「うちの母は苦労しててね」「妹が昔から甘やかされてて…」という話を延々と聞かされることがあります。これは完全に心理カウンセラーの領域です。たとえば、ある高齢の依頼者は登記の話に来たはずが、気づけば自分の戦後の人生史を語り出し、こちらが話を戻そうとしても「それでね、昭和30年頃に…」と続いてしまう。気持ちはわかるけれど、こちらも仕事で動いているので、笑顔で聞き流すしかありません。

司法書士は“話を聞いてくれる人”扱いされがち

「お金払ってるから少し話くらい聞いてくれるよね?」という無言の圧を感じることがあります。こちらが誠実に対応しようとすると、いつの間にか“なんでも屋”のように見られてしまうのが悩ましいところです。特に年配の方は「相談=人生相談」と捉えてしまいがちで、業務の範囲外にズレていってしまうことも多々あります。

士業の肩書きが生む、謎の信頼感と依存

「先生」と呼ばれる立場ゆえか、妙に信頼されてしまい、「他人には言えないことだけど…」と打ち明けられることが増えてきます。あるときは、離婚した娘の話を延々とされ、まるで家族会議の進行役をさせられているような気分に。こちらの肩書きに過度な期待を持たれても困るのですが、それをやんわり断るのも難しいのが現実です。

感情のはけ口にされるつらさ

仕事としての“相談”ではなく、“怒りや不満の捌け口”として話されるケースもあります。「こんなに私ばっかり損してる!」と泣き出す方、「先生ならわかってくれるでしょ?」と詰め寄ってくる方…。その気持ちを受け止めるのが仕事かもしれませんが、正直こちらも人間なので、毎回引きずられるのはしんどいんです。

業務が進まない…感情に振り回される現場の現実

時間も労力も予定も、すべてが依頼者の感情に左右されてしまう。司法書士の仕事の中でも、特にこうした「人間関係に巻き込まれる」業務は、精神的な疲労感が残ります。書類作成よりも、むしろ「人と感情の調整」が本業なのではと思ってしまうことさえあります。

「書類の話」だけで済むケースは稀

たとえば「名義変更の相談です」と電話があっても、来所されたとたん「実はこの不動産をめぐって親戚中が揉めてまして」と話が広がるケースがほとんどです。感情の整理がついていない依頼者と対話しながら、冷静に必要事項を聞き出すのはなかなか骨の折れる作業です。

兄弟げんかの仲裁を求められる違和感

「兄と話が通じないんです。先生から言ってもらえませんか?」と頼まれたことがあります。いや、私はあなたの代理人ではありませんし、家庭裁判所でもないんです…。けれど、断ると「冷たい」と言われかねない。そういう微妙な圧力との闘いもまた、この仕事の“目に見えない重さ”です。

「先生ならどう思います?」にどう答えるか

「この件、どう思います?」と聞かれたとき、正直一番困ります。感情的な問題に対して法律的な視点から答えると「冷たい」、逆に共感すると「先生もそう思いますよね!」と妙な解釈をされてしまう。どう転んでも地雷のような質問で、慎重な言葉選びが求められます。

感情的な親族に対応する心理的消耗

ある依頼では、面談中に相手の兄弟が怒鳴り込んできて、事務所の空気が凍りついたことがありました。冷静に話を進めるどころではなく、まるで家庭内の紛争処理官のような立ち回りを求められました。こうした場面は稀とはいえ、何度経験しても慣れることはありません。

事務員では対応できない“家庭内の爆弾”

普段は明るい事務員も、家庭トラブルが絡んでくる案件では対応に困ってしまいます。あるとき、依頼者が怒鳴り始めて事務員が泣きそうになったことがあり、私が慌てて前に出た経験があります。事務所の安全確保や、メンタルケアも含めて“想定外”への備えが必要だと痛感しました。

家族に巻き込まれるリスクを減らすために

こうした“感情の渦”に巻き込まれないよう、ある程度の線引きが必要です。とはいえ、相手の気持ちも考えなければならず、そのバランスにいつも悩みます。どうにかして「聞きすぎない」「巻き込まれない」術を身につけたいと日々模索しています。

初回面談で「一線」を引く工夫

最初の段階で「この件については法的な手続きに関することだけをお手伝いします」と丁寧に説明するようにしています。決して冷たくせず、でも曖昧にせず、線を引く。この“あいまいな線引き”こそが、平穏な業務を守るための小さな防波堤になるんです。

「業務の範囲外です」の言い方にも気を使う

「それはちょっと専門外です」ではなく、「こういった内容については、他の専門家をご紹介する形になります」と言うようにしています。相手の感情を否定せずに、でも仕事の範囲を明確にする。それが、無駄に引きずられずに済むコツだと感じます。

巻き込まれたときの逃げ道を用意する

どうしても感情の嵐に巻き込まれてしまったときのために、信頼できる弁護士やカウンセラーとゆるやかに連携を取るようにしています。自分一人で背負い込まないこと。それも、長く続けていくためには必要なことだと、つくづく思います。

弁護士やカウンセラーとの連携という選択肢

「それは法律相談の範囲ですね」「心理的ケアが必要な状況かもしれませんね」とやんわり導くには、専門家の存在がとてもありがたいです。紹介できる“出口”があることで、依頼者の感情をこちらで抱えすぎないようにする。それが、司法書士としての持続可能性にもつながっているのだと思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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