“心の余白”が仕事を変える:焦りが招くミス、ゆとりが生む成果

“心の余白”が仕事を変える:焦りが招くミス、ゆとりが生む成果

忙しすぎる日常に“心の余白”なんてあるわけがない

「余裕を持って仕事をしましょう」なんて、他人事のように聞こえる。地方の司法書士事務所を一人で回していると、毎日が〆切と電話と確認作業に追われて、「余白」どころか心の中はいつも満杯。まるでギュウギュウに荷物を詰めたカバンのように、何か一つでも追加されればパンッと弾けそうな日々。そういう時に限って、ミスが起きる。焦ってるときほど、人は自分の限界に気づかない。

予定表はパンパン、心はギリギリ

朝の予定表はいつも真っ黒。お客さんとの打ち合わせ、法務局への書類提出、金融機関との連絡調整、そして事務員さんへの指示……それらをこなすうちに午前中は一瞬で過ぎる。トイレに行くのも忘れて、気づいたら夕方ということもある。そんなスケジュールの中で、急な電話や訪問があると一気に崩壊する。

「30分の余裕」が命取りになる現場

ある日、30分だけ時間が空いた。少し休もうかと思ったけど、「今のうちにあの書類も確認しておこう」と思ったのが運の尽き。確認作業を焦って進めた結果、依頼人の住所を1桁間違えて登記申請してしまった。訂正の手続き、法務局とのやり取り、依頼人への謝罪と再説明……あの30分の「余裕」は、数日分の負担に化けた。

電話とメールの挟み撃ちで思考停止

ちょうど登記の確認をしていたタイミングで、保険会社からの電話と金融機関からのメールが立て続けに入った。返信を優先するうちに、何をしていたか頭が真っ白になり、誤った登記原因日をそのまま記載して提出してしまった。ミスの自覚すら、しばらくしてからでないと気づけなかった。

「余裕がない」は口癖だけど、現実

自分でも「余裕がない、余裕がない」と何度言ったかわからない。でもそれは、ただの言い訳じゃなく、本当にそうだった。常に時間に追われていると、人の話も頭に入ってこないし、確認事項も流れ作業になる。集中力が切れてくると、根本的な判断ができなくなる。

スケジュール管理より先に気力の限界

GoogleカレンダーやToDoリストで予定を管理していても、そもそも詰め込みすぎれば意味がない。体力と気力が追いつかなくなる。前日の疲れを引きずったまま朝を迎え、やることが山積みで、休む間もなく夜になる。そんなサイクルを繰り返していると、いくら仕組みを整えても限界が来る。

焦りが判断力を狂わせる——小さなミスが命取りに

忙しさがピークを越えると、冷静な判断ができなくなる。ちょっとした確認ミスが、大きな手戻りになることもある。しかも、それが司法書士の仕事では信用問題に直結する。焦りが積み重なった先にあるのは、依頼者の不信感と自分自身への苛立ちだ。

不動産登記でやらかした「あの日」

ある依頼で、住所移転登記の直後に抵当権設定を依頼された。焦って書類をそろえたつもりが、住民票の取得日が古くて却下された。再取得、再提出……依頼人から「え、まだ終わってないんですか?」と冷たい声が飛んできて、穴があったら入りたかった。

確認不足、連絡漏れ、結局すべて自分に返ってくる

事務員さんに任せきりにしていた部分を確認せず、そのまま提出。相手方の銀行から訂正依頼が入り、結局こっちの信用が落ちる羽目に。外注でも、最後に責任を取るのはこっち。自分で自分の首を絞めたような気分になる。

人に責められない分、自分で自分を追い込む

「まあ、忙しいからしょうがないですよ」と言われたけど、それが一番きつい。誰も責めないと、自分が一番自分を責める。なんで確認しなかったんだ、なんで焦って動いたんだ、と。

“焦り”はプロの敵——経験があっても防げない

何年やっても焦りはゼロにならない。むしろ、慣れが油断を生んで、焦りがとんでもない落とし穴になる。経験値で乗り切れるはずが、「こんな初歩的なことを……」と自分で驚くようなミスをする。

心の余白があると、逆に業務が早く終わる不思議

面白いことに、ゆとりがあるときほど仕事はサクサク進む。逆にバタバタしていると、手戻りや確認ミスが増える。不思議な話だけど、実際そうだ。これは経験的に確信している。

事務員の笑顔がヒントだった

ある日、事務員さんが「今日はなんだか落ち着いてますね」と言ってきた。自分では意識してなかったけど、その日は朝に時間が取れて、深呼吸してから仕事に入っていた。ゆとりがあると表情も言葉も穏やかになって、それが周りにも伝わる。

ゆっくり話すだけで、全体の流れが整う

お客さんと話す時も、ゆっくり丁寧に話すと自然と相手も安心するし、こちらも落ち着いて話ができる。結果として、手戻りが減る。事務所全体の空気も柔らかくなる。

「急いでないときほど仕事が進む」現象の正体

心に余裕があると、脳の処理がクリアになる。優先順位が自然に整理されて、どこから手をつけるべきかが見えてくる。結果的に、同じ時間でも効率が段違いに良くなる。

頭が整理されていれば、手も早く動く

焦っているときは、手が止まりがち。逆に冷静なときは、処理速度が上がる感覚がある。まるで見通しのいい道路を走っているように、次々と仕事が片付いていく。

「余裕を作る」なんて言うけど、どうやって?

心の余白が大切だとわかっていても、現実にはそんな時間どこにあるの?というのが正直なところ。業務量は減らないし、人手も増やせない。だからこそ、「作る」のではなく「守る」発想が必要になる。

仕事量を減らすのは現実的じゃない

特に地方の小さな事務所では、すべての業務が自分に集まる。断れない案件もあるし、減らす選択肢がそもそも存在しない。減らせないなら、せめて順番ややり方を変えて負担をコントロールするしかない。

結局、全部自分がやらなきゃいけないという現実

誰かに任せられればどんなに楽かと思うけど、登記の最終確認や判断はやっぱり自分。責任が重くのしかかる分、どうしても「一人ブラック企業」みたいになる。でも、自分で自分を壊したら元も子もない。

“詰め込まない”覚悟——スキマ時間を死守する

意識してスキマ時間を入れないと、1日が崩れる。昼休みを死守する、15分の移動中に意識的に何もしない、そういった「やらない時間」を守ることで、かろうじてバランスが取れる。

心の余白がある司法書士は、信頼される

バタバタしていると、依頼者にもそれが伝わる。「この先生、大丈夫かな?」という不安を与えてしまうこともある。逆に、どっしりと構えて落ち着いた雰囲気があると、それだけで信頼が生まれる。

焦って説明されても、お客さんは不安になる

早口で説明されたり、資料をパラパラとめくりながら「これで……あ、違ったかな」なんて言われたら、不安にもなる。司法書士の役割は「安心を提供すること」でもあると思う。

「先生落ち着いてますね」と言われた日のこと

珍しく朝から心に余裕があった日に、依頼者から「なんだか落ち着いていて安心しますね」と言われた。その一言で、こちらの心もさらに落ち着いた。心の余白は、相手にも伝わる。

忙しいけど、余白を死守するための3つの習慣

完璧にはできないけど、心の余裕を作るために自分なりに続けていることがある。小さなことでも、継続することで確実に違いが出る。

1日1回、パソコンを閉じて深呼吸

たった1分でもいいから、手を止めて深呼吸する。パソコンの画面から目を離して、椅子に深く座り直すだけでも、気持ちが切り替わる。

「やらないことリスト」をつくる

何でもかんでも「やることリスト」に入れてしまうと、頭がいっぱいになる。逆に「やらないこと」を先に決めておくと、行動に迷いがなくなり、結果的に効率も上がる。

完璧を目指さない勇気

登記の正確さはもちろん必要だけど、それ以外の業務や日常のやりとりで「完璧」を求めすぎると自分が潰れる。「まあ、こんなもんで十分」と思えるラインを決めることが、続けるためには大切だと感じている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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