心臓が跳ねた夜――提出前に見つけた“あの一文字”
まさかの誤字――深夜のPC画面に浮かぶ「一文字」
もうすぐ提出できる…そう思っていたその夜、モニターの片隅に浮かぶ一文字が目に入ったとき、まさに心臓が「ドクン」と跳ねました。ずっと見直していた書類に、まさかの誤字。しかも、契約書の冒頭、依頼人の氏名の誤字。頭が真っ白になり、疲れも一気に吹き飛びました。地方の司法書士事務所で、僕のようにほぼ一人で回している場合、こうした“最後の砦”は自分しかいません。
提出直前のあの焦り、司法書士なら誰もが一度は経験している
誤字脱字を見つけた瞬間って、実は一種のトラウマになります。「なんで今気づいた?」と自分を責めても時間は戻らないし、明日提出しないと間に合わない。でも差し替えの時間はもうないかもしれない。そんな焦りが、一気に押し寄せてくるんです。
「もう大丈夫」と思った矢先に訪れる地獄の瞬間
本当に怖いのは、「大丈夫」という油断です。何度も見直して、安心してコーヒーまで淹れたその瞬間に限って、なぜか誤字が現れる。まるで、「お前、まだ気づいてないのか」と書類に試されているような気がします。
なぜあの誤字に気づけなかったのか?
それなりにチェックしたつもりでも、見落とすんです。人間の目は慣れると情報を補完してしまう。事務員がいれば二重チェックできますが、うちの事務所は基本ワンオペ。結局、自分との戦いになります。
チェック体制の限界:一人事務所の悲哀
事務員さんは本当に頑張ってくれてるんですが、すべての書類に目を通してもらう余裕なんてないんです。僕も「確認しました」と言い切るけれど、どこかで甘えているのかもしれません。一人事務所って、効率はいいけれど、ミスを防ぐための“余白”が少ないんですよね。
「見直したはず」の罠:脳が勝手に補正してしまう現象
人間の脳って本当に厄介で、何度も同じ文を見ていると、間違いがあっても正しいと認識しちゃうんです。たとえば「住所」の「所」が「書」になっていても、頭の中で補正されてしまって気づかない。これはもう、意識しても限界があります。
責任の重さと、その夜の動悸
司法書士という職業は、ミスがそのまま依頼人の不利益になる。だからこそ、たった一文字の誤字でも、背負うものが重すぎると感じてしまう夜があります。あの夜の動悸は、今思い出しても冷や汗が出るほどです。
「間違いは許されない」という呪いのようなプレッシャー
司法書士は「間違えちゃダメな職業」です。どんなに優秀でも、たった一度のミスで信頼がガラガラと崩れ落ちる。そう思ってしまうから、どんどん自分にプレッシャーをかけてしまう。夜になるとそのプレッシャーが倍増して、動悸となって体を襲うんです。
心臓の鼓動が止まらない――一睡もできない夜
あの日は布団に入っても眠れず、心臓がドクドクと鳴る音だけが耳に残っていました。ミスのリカバリ方法を頭の中で何度もシミュレーションして、結局夜が明けてしまった。あのときほど、「もうやめたい」と思ったことはありません。
その一文字が引き起こす現実的なリスク
「誤字くらい」と思われるかもしれませんが、登記や契約文書では一文字が命取りになります。クライアントの信頼、法務局での処理、すべてが狂う可能性があります。
依頼人からの信頼失墜の可能性
登記簿に誤字があると、訂正のための手続きが必要になり、そのたびに依頼人の時間と費用が奪われます。「この人に任せて大丈夫?」と不安を抱かせるのは一瞬。その信頼を取り戻すのに、何倍もの努力が必要です。
法務局での不受理や補正指示によるタイムロス
法務局では誤字があると容赦なく補正指示が飛んできます。その都度、再提出やクライアントへの連絡などが発生し、スケジュールは一気に後ろ倒し。信頼もスピードも損ないます。
どうすれば“あの夜”を防げるのか?
完璧な対策は存在しませんが、少なくとも「あれをしておけば…」という後悔は減らせます。チェック体制、休息、ルーティン、それぞれがミス予防の一歩です。
紙に印刷して読む、それだけで精度は段違い
画面で見逃していた誤字も、紙に印刷して読めばなぜか目に入る。これは司法書士の先輩にも言われていましたが、あの日以来、僕も徹底するようにしています。
第三者チェックの重要性:事務員の役割と限界
誰かに見てもらうだけで安心感が違う。でも、その“誰か”がいない事務所はどうするか――それが現実です。
優秀な事務員がいても、最後はやっぱり自分の責任
事務員さんは丁寧に見てくれるけど、責任を取るのは自分。だからこそ、最終チェックは他人任せにできない。その重みを感じながら仕事をするしかないのです。
ネガティブな気持ちとの付き合い方
自己否定、落ち込み、不安――司法書士の仕事には常につきまとう負の感情。でも、それとうまく付き合うことも、またこの仕事の一部です。
「もうこの仕事向いてない」と思った時の対処法
ミスが重なると、自分がこの仕事に向いてないんじゃないかと思ってしまう日もあります。そんな時は、一度手を止めて、あえて業務から離れる。意外とそれだけで、冷静になれるものです。
ミスを恐れて前に進めなくなる“麻痺”との戦い
失敗を恐れて次の案件に手を付けられない…そんな経験、ありませんか?僕はあります。だからこそ、敢えてルーティンで体を動かすんです。気持ちが追いつかなくても、手を動かせば次第に前へ進めます。
私が実践しているチェックリストとリズムの整え方
日々のチェック体制は、ルール化することでだいぶ安定しました。感覚でやるとミスが出る。だからこそ、自分なりのリズムが大事です。
ルーティンに頼る:人間は疲れるとダメになる
決まった手順、決まった時間にやることで、精神的にも安定します。疲れている時ほど、ルーティンのありがたさが身にしみます。
提出前日は無理をしない:完璧よりも“安定”を重視
昔は「ギリギリまで粘って仕上げる」のが美徳と思っていました。でも今は、前日はもう仕上げた状態にしておく。その方が、余裕を持って対応できます。
司法書士という職業の「見えない重圧」
誰かに理解されにくいけれど、確かに存在するこの仕事の重圧。その正体と、僕たちがどう付き合っているのか、少しだけ共有したいと思います。
小さなミスが命取りになる世界で働く意味
この仕事は、信用の上に成り立っています。その信用は、小さな積み重ねによって得られるもので、失うのは一瞬。だからこそ、細かいことに気を張り続ける必要があります。
他人には理解されにくい、「終わらない不安」
家族に話しても、友人に話しても「そこまで気にすること?」と言われる。けれど、やっている本人にとっては、毎日が“綱渡り”のような気分なんです。
それでもやめない理由
こんなに大変なのに、なぜこの仕事を続けるのか?と聞かれることがあります。その答えは、実はとてもシンプルです。
依頼人の「ありがとう」が、心に残るから
やっぱりこの仕事をしていて一番うれしいのは、依頼人の安心した顔を見る瞬間です。「助かりました」と言われると、あの動悸の夜も、少しだけ救われる気がするんです。
ミスを乗り越えて見える、自分なりの成長
間違えたこと自体は悔しい。でも、それを踏まえて改善したこと、自分の中で“次はこうしよう”と前向きになれた時、「少しは成長できたかもしれない」と思えるんです。
司法書士を目指す方へ伝えたいリアル
華やかに見えることもある司法書士の仕事。でも実際は、孤独で地味で、ミスとの闘いの日々。それでも、続けている人間がいる。それだけは、伝えたいんです。
試験よりも、日常業務の方がはるかにしんどい
合格してからが本番です。勉強よりも、プレッシャーや責任の重さの方が、僕には何倍もしんどかった。だからこそ、続ける価値があるとも思っています。
でも、「それでも続けている人」の言葉に救われる時がある
僕も何度も「もう無理」と思いました。でも、同じように悩みながらも続けている仲間の声に、何度も励まされました。この記事が、誰かの“深夜の動悸”に寄り添うものになれば幸いです。