昨日は怒鳴ってごめん──翌日、机にそっと置かれた菓子折りの意味

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昨日は怒鳴ってごめん──翌日、机にそっと置かれた菓子折りの意味

ある朝、机の上に置かれていたもの

朝、事務所に着いてデスクに向かうと、そこには小さな紙袋がちょこんと置かれていました。中身は和菓子の詰め合わせ。包装紙には、丁寧な手書きのメモで「昨日はすみませんでした。いつもありがとうございます」とだけ書かれていました。前日の自分の振る舞いを思い出し、胸がギュッと痛くなりました。感謝の気持ちに触れたはずなのに、それ以上に、申し訳なさと情けなさがこみ上げてきました。

前日の激しい口調と、その原因

きっかけは本当に些細なことでした。登記書類の一部に記載ミスがあったんです。大きな影響は出ませんでしたが、修正のために予定していた法務局訪問をずらさなければならなくなり、イライラが爆発してしまいました。

些細なミスが引き金に

事務員さんも人間ですから、ミスくらいあるのは分かってます。でも、仕事が立て込んでいて精神的に追い詰められていた僕は、その小さなミスを許す余裕を持てませんでした。「何でこんな簡単なこともできないんだよ」と怒鳴ってしまった自分を、今は本当に恥ずかしく思っています。

忙しさに余裕をなくす日々

この業界、ひとつの案件の重みが大きい分、スケジュール管理や精度に神経を使います。地方の小さな事務所だからといって、責任が軽くなるわけじゃありません。忙しさの中で、僕自身が「人に当たってはいけない」と分かっていながらも、心の余裕をどこかに置き忘れてしまっていたのです。

怒鳴ってしまった自分への後悔

家に帰ってから、何度も頭の中で再生されたのは、彼女が小さくうなずきながら「すみません」と答えていた姿でした。あの時の表情が、申し訳なさというよりも、どこか呆れや諦めを含んでいたように感じられて、ずっとモヤモヤしていました。

「言い過ぎたな」と夜に思い返す

晩飯のカップラーメンをすすりながら、「やっちまったな…」と反省している自分がいました。あんな言い方をして、信頼関係が壊れたらどうしよう。せっかく慣れてきてくれた事務員さんに辞められたら、正直、僕の仕事は立ち行かない。そんな現実的な不安と、何より人としての後悔が入り混じった夜でした。

責任感と感情の板挟み

「所長」と呼ばれる立場になっても、感情のコントロールが上手くなるわけじゃありません。むしろ責任の重さに押し潰されそうになる場面が増えることで、余裕のなさが表に出てしまう。司法書士の仕事は、技術や知識だけでなく、感情を律する力も必要なのだと痛感します。

翌日の菓子折りが突きつけた現実

「謝るべきはこっちなのに」──それが率直な気持ちでした。相手から先に歩み寄ってくれるということに、安心よりもむしろ居たたまれなさが勝りました。あの菓子折りには、謝罪以上の何かが込められているような気がしてなりませんでした。

感謝なのか、気遣いなのか

もしかしたら、あれは「これ以上怒らないでくださいね」という防衛だったのかもしれない。でも、少なくとも僕の怒りを「仕事上のことだから」として受け止めようとしてくれた、そんな優しさも感じられました。だからこそ、自分の未熟さが本当に悔しくなったんです。

「謝罪」はどちらからすべきだったのか

翌日、僕は「昨日はごめん」と口にしました。でもそれは、菓子折りという“先手”を打たれたからできたことです。もしそれがなかったら、僕は自分のプライドを守るために謝らずにいたかもしれません。情けないけれど、それが現実でした。

司法書士という職業の人間関係の難しさ

登記や相続といった“書面の世界”を扱う司法書士ですが、結局のところ仕事の根幹にあるのは「人間関係」です。依頼人だけでなく、所内のスタッフとの関係が崩れれば、業務全体の質が下がります。技術職でありながら、人間関係職でもあるという自覚が必要だと改めて思いました。

信頼関係と感情のコントロール

スタッフとの信頼関係ができていれば、たとえミスが起きてもその後のリカバリーは早いです。でも、信頼を壊すのは一瞬。僕のように感情を爆発させるタイプは特に気をつけなければなりません。

部下との距離感が難しい

距離が近すぎても甘えが出るし、遠すぎれば冷たい印象になる。ちょうどいい距離感を見つけるのは本当に難しいです。特に一人事務員体制のような小規模事務所では、お互いの精神的なバランスが業務全体に大きく影響します。

優しさが仇になる瞬間もある

普段は「無理しなくていいよ」とか「ありがとう」と声をかけているつもりでも、たった一度の怒鳴り声でそのすべてが吹き飛ぶこともある。優しさの上に成り立つ関係性は、実はとても脆いんですよね。

ひとり事務所の孤独と限界

相談できる相手が近くにいない、というのは精神的に大きな負担です。経営者であり実務者であり、そして人間関係の管理者でもある。この3つを一人で回すのは、本当にしんどい。

助けがほしいけど、任せるのが怖い

仕事を任せたい、でもミスが怖い。そんな葛藤の中で、結局自分で抱え込んでしまう。その結果、キャパオーバーで余裕がなくなり、感情が爆発する……という悪循環。これ、僕だけじゃないはずです。

「怒る」しかない場面の虚しさ

ちゃんと伝えようとしても響かないとき、「怒る」という手段に頼ってしまう。でも、それは本当に必要だったのか? 伝える技術の未熟さを、怒りでごまかしていないか? 怒ったあとに残るのは、決まって虚しさだけなんです。

これから司法書士を目指す人へ伝えたいこと

この仕事は、黙々と書類を作っていればいい、というものではありません。むしろ人間関係の方が難しいです。依頼人、事務員、同業者──それぞれとの関係が、自分の仕事に大きな影響を与えるという事実を、ぜひ知っておいてほしいです。

技術よりも、人間関係力が問われる

どれだけ登記が完璧でも、チームとの関係が壊れていたら意味がありません。正確性と同じくらい、相手を思いやる力、謝る勇気、謝らせない配慮が求められる。僕は、最近ようやくそのことを実感しています。

書類の知識より大事な「謝る力」

「すみません」「ありがとう」が自然に言えること。それが、仕事をうまく回す鍵になると本気で思います。知識は学べるけど、性格はそう簡単には変えられない。だからこそ、心の柔らかさを持ち続けることが大事なんです。

「理想の自分」と「現実の自分」のギャップ

「こんな司法書士になりたい」と思っていた自分と、怒鳴ってしまう自分との間には、大きなギャップがあります。でも、だからこそ自分を見つめ直すチャンスにもなるんです。

優しくありたいけど、優しさだけでは回らない

理想は「厳しさと優しさのバランス」だけど、それを実現するのは本当に難しい。だからこそ、毎日の中で少しずつ、反省と成長を繰り返していくしかないのかなと思っています。昨日より少しマシな自分を目指して。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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