書類、ちゃんとあるだけで泣きそうになる日が来るとは。

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書類、ちゃんとあるだけで泣きそうになる日が来るとは。

書類が揃っているだけで感動するようになった理由

この仕事を始めた頃は、書類が揃っているのなんて当たり前だと思っていた。むしろ、それを前提に段取りを組んで、効率よく処理を進めていくのが司法書士の腕の見せどころだと信じていた。でも最近は違う。完璧な書類一式を持ってくる依頼人に出会うと、それだけで涙が出そうになる。感動というより、安心と脱力と…ちょっとした驚きだ。書類が揃っているだけで仕事の8割が終わっているように感じる日もある。

昔は当たり前だと思っていた「書類がある」こと

新人時代は「書類がない=仕事にならない」とすら考えていなかった。依頼があれば、書類は一式ある。そういう世界観だった。でも、経験を積むにつれて「ちゃんと書類を用意してもらうこと」の難しさが身にしみるようになる。書類が揃っていなければ、何も始まらない。手配、確認、取り直し…。すべての段取りが狂う。それでも、こちらが悪いような雰囲気になるのがまたしんどい。

最近は「揃ってる」だけで感謝してしまう現実

「このファイルに全部入ってます!」と自信満々に渡される瞬間は、内心で身構える。でも、ほんとに全部揃っていた時には、もうそれだけで「神」だと思ってしまう。特に役所関係の書類や古い戸籍が完璧に揃っていると、こちらの心が崩壊寸前のときほど「今日はもう頑張らなくていいかも」と思える。そんな日が稀にある。

なぜ書類は「揃わない」のか

これはもう、現場に出れば出るほど実感する。依頼人が「揃えたつもり」でも、こちらから見たら足りない、間違っている、期限切れ…というのは日常茶飯事。丁寧に説明しても伝わらないことも多い。そもそも、「書類を揃える」という作業が人によって全く別の意味を持っているように感じる。

依頼人の認識とこちらの基準のズレ

たとえば、「戸籍って持ってきてくださいね」とお願いしたとする。依頼人は直近の戸籍だけを持ってくる。でもこちらが必要なのは、出生まで遡る戸籍一式。説明しても「え?これだけじゃダメなんですか?」と驚かれる。そんなやり取りが毎回ある。「戸籍」とひとくくりにしても、我々と一般の人とでは、その言葉の定義すら異なる。

「揃えたつもり」と「本当に揃っている」の違い

依頼人の中には、本当に真面目に「全部揃えました」と言ってくれる方もいる。でも、いざ確認すると、提出先が違うとか、最新じゃないとか、コピーだったとか。書類の世界では“95%正解”は“不合格”と同じなんだ。これが伝わりにくい。けれど、伝えるのがこちらの仕事。毎回、説明して、フォローして、胃に穴が開きそうになる。

現場で起こる書類トラブルあるある

もうね、書類っていうのは「揃ってて当然」ではなく「揃わないもの」として考えておいたほうが精神衛生上よろしい。いくつか印象的だった出来事を挙げてみる。

戸籍が一通足りない:なのに本人は満面の笑み

ある高齢のご夫婦が「全部取ってきました!」とファイルを持参。笑顔で「これで大丈夫ですよね」と言われたので開けてみたら、出生からの戸籍が1通だけ足りない。しかもそれが、全体のつながりに関わるキモの部分…。説明すると「え、でも役所でこれで大丈夫って言われましたけど?」と返される。いや、役所の人が何を基準に言ったかは分かりませんが…と何度思ったことか。

印鑑証明の期限切れに気づいた瞬間の絶望

期日ギリギリで登記の提出準備をしていて、最後に印鑑証明を確認したら、発行から3ヶ月超えてた。そこで提出しても差し戻されるから、また一からやり直し。しかも依頼人は県外に住んでいて、取り直すのに日数もかかる。そういうとき、自分のミスでもないのに、全部自分の責任のように感じてしまうのがつらい。

「これでいいですか?」と出された紙が住民票だった話

これはもう笑うしかなかった。依頼人が「印鑑証明取ってきました!」と満面の笑みで差し出した紙。確認すると、住民票。しかも、旧住所のまま。何度も「印鑑証明」と伝えていたはずなんだけど…。混同してる人は少なくないけれど、そのたびに「いや、それ違います」と伝えるのも疲れてくる。相手は悪気がないだけに、怒れないし、余計に胃が痛い。

事務員も泣いている

うちの事務員は本当によく頑張ってくれている。でも、書類関係のトラブルで最も被害を受けているのは彼女かもしれない。電話での確認、役所とのやりとり、再取得の手配…彼女の仕事の半分は「想定外のフォローアップ」だ。そりゃあ泣きたくもなる。

一緒に探す、問い合わせる、気づいたら半日潰れている

たった一通の書類がないだけで、どれだけの時間が削られるか。事務員と一緒に市役所に電話、管轄外なら他の役所にも連絡。役所は昼休みだったり、担当が不在だったり。結局、午前中の予定がすべて崩れる。「これって本来、依頼人がやるべきことじゃ…?」と思ってしまうが、現実はそううまくはいかない。

それでも「お客様には優しく」と言われる矛盾

事務員が丁寧に説明しても、相手が逆ギレすることがある。「それくらいそっちでなんとかしてよ」と言われたりもする。こちらは専門職だから、当然丁寧に対応する。でも、心の中では「これ以上どうしろと…」と叫んでいる。優しさと理不尽の狭間で揺れる毎日だ。

それでも続けていく司法書士の矜持

それでも、この仕事を辞めたいかと聞かれれば、答えは「NO」だ。どれだけ理不尽な状況でも、うまくいった瞬間の達成感は格別。書類が全部揃っていて、スムーズに手続きが終わった日には、心の底から「この仕事やっててよかった」と思える。

書類が揃っていた時の安心感と達成感

必要なものが全部揃っていて、何も問題なく進んだときの気持ちは、まるで宝くじに当たったかのような喜びがある。「今日はもう残業しなくていいかも」と思える日、それだけで一週間の疲れが吹っ飛ぶ。書類があるだけで、こんなにうれしいとは思わなかった。

「今日はもう閉めよう」と思える奇跡の日

ほんとに稀にだけど、「すべてがうまくいった日」がある。書類も完璧、依頼人も協力的、事務員も笑顔で帰れる。そんな日は、「もう今日は仕事終わりにしていいでしょ」と心から思える。年に何回あるか分からないけれど、その日のために頑張っているのかもしれない。

やっぱり、ちゃんと揃えて持ってくる人には感謝したくなる

「これで足りてますか?」と心配そうに聞いてくれる依頼人、そして本当にちゃんと準備してくれている人には、頭が下がる。こちらも自然と丁寧に対応したくなるし、「いい仕事をしよう」と思える。お互いの信頼関係は、こういう小さな誠意の積み重ねで築かれていくのだと、改めて感じる。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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