書類を集めるだけで精一杯──そんな依頼人に、司法書士ができる本当のサポートとは?

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書類を集めるだけで精一杯──そんな依頼人に、司法書士ができる本当のサポートとは?

書類が揃わない現実──依頼人の“いっぱいいっぱい”を侮るな

「これだけ集めてください」とお願いした書類が、なかなか揃わない。最初のころは「時間がないのかな」と思っていたけれど、何人も同じような状況を見てきて、ようやく気づいた。書類を一つ一つ集めるという行為が、依頼人にとっては“人生の重荷”になっていることもある。特に相続や離婚の案件では、気持ちが追いついていない中で動いている方が多い。こちらが思っている以上に「ただの紙一枚」が重いこともある。

そもそも「書類を集めるだけ」がどれだけ大変か

戸籍、印鑑証明、固定資産評価証明書……我々からすれば慣れた単語も、依頼人にとっては初耳のものばかり。窓口での説明がよくわからなかった、家族に頼まないと動けない、平日に役所へ行く時間が取れない。そういった小さな“できない”が積み重なって、やる気もすり減っていく。こちらは「集めれば終わる」と思っているけど、依頼人には「何から手をつければいいかわからない」状態なのだ。

思うように進まないもどかしさは誰のものか

書類が揃わないと、仕事が進まない。こちらは待つしかなく、案件のスケジュールがどんどん後ろ倒しになる。電話で進捗を確認すると「すみません…まだで…」という返事。苛立ちをぶつけてしまいそうになるが、それをぐっとこらえるのが本当にしんどい。「頑張ってるのはわかるけど、もうちょっと早く…」と言いたくなる気持ちと、「急かしたら逆効果になるかも」という葛藤が、いつも胸の中にある。

「またこれが足りません」──言いたくないけど、言わざるを得ない現場

こちらからの指示不足で抜け漏れがあった場合でも、最終的に「まだ必要です」と伝えるのは本当に心が痛い。「またですか…」という反応を見るたびに、なんとも言えない罪悪感と、でもやらねばならぬという責任が重くのしかかる。毎回「今回で全部そろうはずです」と祈るような気持ちで伝えているが、実際にはイレギュラーが多すぎて、そうはいかないのが現実だ。

伝える側の苦しさ──何度も言うことのストレス

一度伝えたことを何度も繰り返し説明するのは、精神的に消耗する。「この前も言いましたよね?」とつい口に出そうになってしまうこともある。とはいえ、依頼人にとっては“初めての体験”なのだから、忘れてしまうのも無理はない。言い方ひとつで信頼関係は崩れる。わかってはいても、忙しい時期にこれを何件も抱えていると、正直こちらもいっぱいいっぱいになる。

依頼人の表情が曇る瞬間に耐えられない

「あと一枚必要です」と言った瞬間に、依頼人の顔が一気に曇る。あの瞬間が一番つらい。なんとかしてあげたい気持ちと、でもルールは守らなければいけないという現実。まるで小さな絶望を突きつけているような気分になる。

書類が届かない=信頼が揺らぐ瞬間

何度も「まだですか」と聞かれると、依頼人も不信感を抱き始める。こっちだって好きで遅らせているわけじゃないけれど、それは伝わらない。書類の一枚が、信頼を崩す“最後の一滴”になることもある。

じゃあ、どこまでこちらが手を出すべきか

手を出せば依頼人は助かる。しかし、そのぶんこちらの仕事は増えるし、依頼人の自立を妨げるリスクもある。全てを代行するわけにはいかないし、そもそもできないことも多い。では、どこまでが適切な“寄り添い”なのか。日々そのバランスを探り続けている。

“代行”の限界と“手助け”の境界線

役所で取得できる書類は代理で取れる場合もある。でも、全てではないし、依頼人自身が動かなければならない場面も多い。「代わりにやってほしい」と言われたときに、どこまで応じるか。線引きは案件ごとに異なり、明確な基準がない。しかも情がからむと、つい“やってしまう”。

本来業務外のことを、ついしてしまう心理

たとえば、戸籍の読み解き方を電話で丁寧に説明したり、役所の営業時間を調べてあげたり。「ここまでやる必要あるかな」と思いながらも、結局やってしまう。依頼人の反応がいいと、つい「まぁいいか」と甘くなる。

「やってあげたい」と「やらされている」の違い

前者なら、まだ気持ちよくできる。後者になると、だんだんストレスになってくる。小さな積み重ねが、「もう限界かも」と感じる瞬間を生む。やってあげたい気持ちが義務感に変わったとき、自分がどれだけ無理していたかに気づく。

最後に:自分を責めすぎないことも、プロの条件

うまくサポートできないとき、自分を責めてしまうことがある。でも、それは決して手を抜いていたからではない。限られた時間と体力の中で、できる限りのことをやっている。寄り添いたいという気持ちがある限り、その姿勢自体が“プロとしての証”だと、最近は思うようにしている。

「うまくやれなかった」の積み重ねに潰されないために

自分を追い込みすぎると、いつか壊れる。依頼人のためにも、自分のためにも、「できなかったこと」ではなく「できたこと」に目を向けることが大切だと、最近は本気で思うようになってきた。

司法書士という仕事の“人間くささ”を抱きしめて

感情に振り回される日もある。愚痴をこぼしたくなる日もある。それでも、人と向き合う仕事をしている限り、この人間くささこそが一番の武器だと思いたい。誰かのために動ける、疲れても立ち上がれる。そんな司法書士であり続けたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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