辞めたい気持ちは、毎日やってくる
この仕事、やってると本当に「なんで自分はこれをやってるんだろう」って思う瞬間が1日に何度もある。とくに朝起きたとき。枕元にスマホを置いたまま、目覚ましを止めてからしばらく天井を見て動けなくなる。今日も書類、今日も電話、今日も役所対応。毎日同じようで、でもトラブルの種は決まって想像の外からやってくる。そういう日々に疲れ切って、正直、もう辞めたいって思ってしまうこともある。
「またか…」と心の中でつぶやく朝
朝一番、事務所のドアを開けた瞬間に「また今日もか」とため息が出る。誰に言うでもなく、ただ自分に対してボヤくようなそのつぶやきが、もはや日課になっている。机の上には、昨日処理しきれなかった登記関連の書類と、期限が迫った相続関係の依頼の山。昨日までに終わらせたかった案件も、なぜか今日に繰り越されている。そして、今日も新しい依頼が来る。だから、終わりが見えない。
机の上に山積みの書類
開業してからというもの、机がスッキリしたことは一度もない。むしろ、年々その山は高くなっているような気すらする。片付けても片付けても、また次の山が届く。行政書士や弁護士とは違って、司法書士の業務って「黙々と地味にこなす」部分が大きい。誰にも気づかれず、でも手を抜けば依頼者に迷惑がかかる。このプレッシャーが地味に効いてくる。
事務員も限界、でも頼られる
事務員のAさんも、毎日よく働いてくれている。ただ正直、こちらも任せきれない仕事が多い。登記の内容や法務局対応の細かなニュアンスは、結局自分で判断しなければならない。そうなると、彼女に頼める仕事の幅も限られてくる。だから、こっちがパンパンになってしまう。でも、彼女の「先生、大丈夫ですか？」という一言に救われる日もある。
電話が鳴るたびに、胃が痛くなる
司法書士にとって、電話は魔物だ。依頼かもしれない、クレームかもしれない、法務局かもしれない。どれも外せない。でも、鳴った瞬間に心臓が「ドクン」と大きく跳ねる。昔はもっと冷静に出ていた気がするが、今は違う。何か不備があったのではないか、説明が足りなかったのではないか…不安ばかりが募る。
やりきれなさと戦う毎日
書類を整えても、スムーズにいくとは限らない。法務局の判断ひとつで補正が入り、クライアントのスケジュールは狂い、こちらも精神的に削られる。それでも、誰も責めない。自分が引き受けた仕事だからだ。毎日「やってられない」と思いながら、気づけば机に向かっている。そんな日々の繰り返しだ。
感謝されない、報われない気持ち
依頼者が帰るとき、ほとんどが「ありがとうございました」と言ってくれる。でもその言葉が、どれほど重く受け止められているかはわからない。たまに「え、これだけ？」と言われることもある。そう言われると、もう立ち直るのに時間がかかる。「ここまで調べて、ミスなく手続きしたのに…」と心の中でつぶやきながら、次の案件に進むしかない。
登記が終わっても「それだけ？」
とあるお客様に登記完了書類を渡した時、「あれ？これだけで終わり？」と笑いながら言われたことがある。悪気はなかったのだろう。でもその一言が、心にグサリと刺さった。こちらは数日かけて調整して、何度も法務局とやりとりして、ようやく完了させた登記だった。だけど成果物は紙一枚。伝わらないのが、この仕事のつらさだ。
クレームだけは一丁前に届く
登記が早く終わっても何も言われないが、逆に少しでも遅れたりするとすぐに連絡が来る。「まだですか？」「ちゃんとやってるんですか？」。そんな言葉に返すのは、丁寧な説明と謝罪。理不尽だと感じる日もあるけれど、それでも対応しなければいけないのが司法書士。疲れるけれど、逃げられない。
ひとり事務所という孤独
事務所をひとりで切り盛りしていると、誰にも相談できない時間がどんどん増える。法務局にも聞けないことはあるし、ネットの情報もあいまいだ。結局、自分の責任で判断しなければならない。その孤独感は、ふとした瞬間にどっと押し寄せてくる。夜、事務所でひとり残って作業していると、「なんでこんなに頑張ってるんだろう」と思うこともしばしばだ。
でも、不思議と辞められない
ここまで読んで「じゃあ辞めたら？」と思う人もいるかもしれない。でも、そう簡単にはいかない。何度も「もう限界かも」と思ったことはある。それでも、ある一言やある瞬間が、また明日もやろうと思わせてくれる。気づけば、この仕事から離れられない自分がいる。
依頼者の「ほっ」とした表情が救い
何件か登記を抱えていた老夫婦の案件があった。とても複雑な相続で、説明にも時間がかかった。でも手続きが終わった時、お二人の顔がパッと明るくなって、「本当に助かりました」と言ってくれた。その時、自分がやっていることの意味を思い出した。あの「ほっ」とした顔を見るために、頑張っているんだと思った。
感謝の言葉ひとつで踏ん張れる
「先生じゃなきゃダメでした」――たったその一言が、どれだけ心の支えになるか。疲れ果てた夕方、その言葉がすっと心に沁みる。どれだけつらくても、その日の最後にそれを聞けると「もうちょっと頑張ろうか」と思えてしまう。単純だけど、それでまた回り始める。
自分にしかできない役割を感じる瞬間
司法書士は地味な職業かもしれない。でも、誰かがやらないと社会は回らない。登記も、相続も、誰かの「次の人生」を整える仕事だ。その「橋渡し」の瞬間に立ち会えるのが、この仕事の魅力でもある。自分にしかできない仕事だと実感できる瞬間が、少しずつこの職業への誇りにつながっていく。
「先生がいてよかった」と言われた日
ある日、少し複雑な登記で苦戦していた案件がようやく完了したとき、依頼者の方が「先生がこの町にいてくれてよかった」と言ってくれた。地味に涙が出そうになった。派手な成功ではないけれど、たしかにこの地域の誰かの力になれている。その感覚が、また自分を机に向かわせるのだ。
