独立=自由、のはずだったけど
独立する前は、「時間に縛られず、好きなように仕事ができる」と思っていました。朝ゆっくり起きて、好きなタイミングで仕事を始める。休みたい日は休む。そういうイメージを描いていたんです。でも、現実はその逆。むしろ時間に追われる毎日が待っていました。自由というのは「誰にも管理されない代わりに、すべて自分で責任を持つ」ということだったんです。
最初に描いていた「自由な働き方」って何だったのか
あの頃の私は、平日昼間に喫茶店でのんびり仕事する自分を想像してました。ノートパソコンを開いて、軽やかに登記書類をまとめている自分。完全にイメージだけの話ですが、そういう「自由な働き方」ができると思ってたんです。ところが実際は、電話は鳴るし、飛び込みでお客さんが来るし、まったく集中できない。静かな時間を求めて早朝に出勤する羽目になりました。
時間は自由でも、心は不自由になった
「今日は午後から休もう」と思っていても、急な連絡や書類の不備で全て崩れます。土日だって電話が来れば対応しないといけない。自由なはずの時間が、むしろ常に仕事に引きずられていて、気が休まらない。雇われていた頃は、「明日は有給です」と言えば済んだけど、今は誰も代わってくれないんです。
収入は上がると思ってたのに
「独立したら稼げる」と思ってました。実際、成功している司法書士の先輩もいて、月に100万円以上稼ぐ話も聞きました。でも、その影には膨大な労働時間と、営業努力と、運もあるんですよね。地元で地道にやってる私には、そんな派手な成果は訪れませんでした。
固定給の安心感、今になってわかるありがたみ
開業して最初の数ヶ月は、まったく収入がなくて、貯金を切り崩して生活していました。「給料日」が来ないというのは、地味に精神的にキツイんです。どれだけ頑張っても、翌月の売上が読めない。今思えば、月20万円でも決まって入ってくる給料って、すごくありがたかったなとしみじみ思います。
「年収は自分次第」のプレッシャーが重い
収入が自分次第って言葉、最初はワクワクしてました。でも実際は「何もやらなければゼロ」「頑張っても運が悪ければゼロ」なんです。そのプレッシャーがずっとつきまとう。「今日も一件も問い合わせがなかった…」そんな日が続くと、本当に不安になります。
営業・広報・事務すべてが自分の肩にのしかかる
事務員さんは一人いますが、基本的に営業は私の役割です。HPを作ったり、SNSを更新したり、DMを送ったり…司法書士の仕事とは全然違う仕事ばかり。しかも、それがなかなか成果につながらない。疲弊します。
ミスは全部自腹、誰も守ってくれない現実
登記のミスがあったとき、会社員時代なら上司がなんとかしてくれたり、保険でカバーできたりしたけど、今は違います。責任は全部自分。時には自腹で補償することもあるし、信用も失う。胃が痛くなります。
人間関係のストレスは減ったけど…
会社勤めの頃は、上司や同僚との人間関係に悩まされることもありました。そういう意味では、独立後は人間関係のストレスは確かに減りました。でも代わりに、「誰にも相談できない孤独感」がのしかかってきます。
孤独という名の重圧と責任
何かトラブルが起きたとき、判断を仰ぐ相手がいない。「これでいいのか?」と迷っても、自分で決断するしかない。間違ってたら全部自分の責任。周囲に仲間がいないと、そのプレッシャーは倍増します。
相談できる相手がいないことの不安
簡単なことでいいんです。「この言い回し、どう思う?」とか「こういう依頼、断った方がいいかな?」みたいなことを聞ける人がいない。それがすごく不安で、夜眠れなくなることもあります。
思ってたより「雑務」が多すぎる
独立したら「本業に集中できる」と思っていたんですが、現実は真逆。雑務に追われる日々です。誰もやってくれないから、細かい仕事も全部自分でやらなきゃいけないんです。
登記業務だけが司法書士の仕事じゃなかった
名刺発注、封筒の在庫チェック、プリンタのインク交換、町内会との付き合い…司法書士っぽくない仕事が本当に多い。でも、それを怠ると信用を失います。専門職って、意外と泥臭いんですよ。
IT、労務、会計、法改正…追いつかない日々
システム更新、労務管理、税理士とのやりとり、法改正のチェック…毎日が情報の波に溺れそうです。しかも誰も教えてくれない。全部自分で調べて、対応して、疲れ果てます。
後悔してる?それともやっぱり独立してよかった?
独立して数年。後悔してないかと言われれば、正直、何度も「やめとけばよかった」と思いました。でも、「じゃあ戻りたいか?」と聞かれると、それも違う。矛盾してますが、そういう感情がずっとつきまとっています。
「戻れるなら会社員に戻りたい」と思う夜
夜、疲れ果てて布団に入ると、「あのとき辞めなきゃよかったかも」と考えてしまいます。安定、福利厚生、有休…全部が恋しくなります。でも、もう戻れない。だからまた明日も仕事に行くんです。
でも、苦しい中にある小さな自由と誇り
確かに苦しい。でも、依頼者から「本当に助かりました」と言われたとき、「ああ、やっててよかったな」と思えるんです。自分の名前で仕事をして、自分で選んだ道を歩いている。そこには小さな誇りがあります。
依頼者からの「ありがとう」が唯一の救い
ある高齢の依頼者の方が、手を合わせて「ありがとう」と頭を下げてくれたことがあります。その瞬間だけは、全部報われた気がしました。忙しい日々の中で、そういう瞬間がたまにあるから、続けていけるのかもしれません。
これから独立を考えている司法書士さんへ
もし、この記事を読んでいるあなたが独立を考えているなら、伝えたいことがあります。「楽になる」ことを期待しているなら、やめた方がいい。でも、「覚悟がある」なら、それはあなたの人生にとって大きな一歩になるはずです。
やめとけとは言わない。でも覚悟は持って
独立にはリスクも不安も付きまといます。楽ではありません。でも、他人の評価ではなく「自分が納得できる仕事」をしたいなら、挑戦する価値はあると思います。ただし、その道は甘くない。それだけは強く伝えたいです。
自分がどう生きたいかを先に決めておくこと
お金?自由?やりがい?自分が何を一番大切にしたいのか。それを明確にしてから独立してください。でないと、理想と現実のギャップに押しつぶされてしまいます。私は…まだ迷ってるけど、それでもこの道を選んだ自分を、少しずつ肯定できるようになってきました。