独立して見えた景色、事務所では気づけなかったこと

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独立して見えた景色、事務所では気づけなかったこと

事務所勤めと独立、何がどう違うのか

司法書士として働いてきた中で、勤務時代と独立後のギャップに驚かされることは多かった。特に、思考の質が大きく変わった。勤務時代は「依頼が来れば対応すればいい」という受け身の姿勢だったが、独立すると「どうやって依頼を呼ぶか」からすべてを考える必要がある。何もかもが自己責任になる世界で、日々の重みが違って感じられるようになった。

そもそも「独立」って誰にでも向いてるの?

独立すれば自由になれる、というイメージは根強い。しかし現実は、自由の裏には「決断と責任」がセットでついてくる。誰にでも向いているとは言えない。決して楽ではないが、意思決定にやりがいを感じるタイプには向いているかもしれない。向き不向きを誤ると、独立はただの苦行になる。

思ってたのと違った「自由」の正体

「好きな時間に働ける」「自分の裁量で動ける」と期待していた自由。それは確かに存在するが、代償として休みもなければ、誰にも相談できない孤独がついてくる。クライアントが「今すぐに」と言えば、休日でも出ることになる。その意味では、自由は「不自由」でもあった。

独立して見えた現実:収入の不安と自由の代償

月末、通帳の残高を確認するたびに感じるプレッシャー。事務所勤めでは固定給があったが、独立後は売上がなければゼロ。たった一ヶ月案件が来ないだけで生活に不安が走る。自由とは、常に不安と隣り合わせの生活でもある。

月の売上ゼロ、夜中に目が覚めた日

独立して3ヶ月目、依頼が一件も入らなかった。夜中に目が覚め、天井を見ながら「本当にこれで良かったのか?」と何度も自問した。勤務していたときには想像もしなかった不安感がそこにあった。

勤務時代は「お金」のことを他人事にしていた

勤務司法書士の頃は、毎月の給与は当たり前に振り込まれていた。収支や経費、税金のことは代表がやってくれていたし、自分はただ目の前の案件をこなせばよかった。でも、独立すると「今月いくら残るのか」「税金を払えるか」が現実の問題として突き刺さってくる。

請求と入金のラグに胃が痛くなる

登記が終わって請求書を出しても、入金が翌月になることもある。しかも「振り込み忘れてました」と言われると、笑顔で対応しつつも内心は真っ青。資金繰りは、地味だが精神的にかなりの負担だ。

経費という魔物との戦い

開業した途端に襲ってくる固定費の波。家賃、水道光熱費、ソフトウェアの月額利用料、郵送代……。売上が出る前から出ていくお金に、最初は震える。特に毎月の細かい支出の積み重ねが、思った以上に家計を圧迫する。

プリンターのインク代で小さく絶望する

事務所勤めのときは「備品が減ったら補充すればいい」だけだったが、独立すると「このインク、あと何枚刷ったら元取れるかな」と考えるようになった。細かい出費ひとつひとつが、心に刺さってくる。

人間関係の自由、でも「孤独」がすぐ隣にいる

人間関係のストレスから解放されるのが独立の魅力と語る人は多い。しかし実際には、気軽に雑談する相手もいない日常が待っている。孤独との付き合い方を知らないと、メンタルにじわじわと効いてくる。

誰も注意してくれない、でも誰も助けてくれない

ミスをしても気づくのは自分だけ。誰も「それ、おかしくない?」とは言ってくれない。逆に、何かあっても「大丈夫?」と声をかけてくれる人もいない。その孤立感が、じわじわと精神を削っていく。

雑談できる相手がいない日常

昼休みに「今日寒いですね」って言える相手がいるだけで、案外心は落ち着く。けれども独立後は、事務所内の空気が静かすぎて、時々息が詰まる。ラジオの声が唯一の会話、という日もある。

業務の相談、どこですればいいのか

分からないことが出た時、誰かに聞ける環境がないのはとてもつらい。検索で解決できればいいが、登記の世界はケースバイケースが多く、結局自分の判断で進めるしかない状況に追い込まれる。

士業のネットワークに助けられた瞬間も

そんな中でも、研修会やSNSで知り合った士業仲間に相談して助かったこともある。同じ立場の人がいるというだけで、少し気が楽になる。独立してからこそ、意識的に横のつながりを持つべきだと痛感する。

事務員一人、それでも「雇う」ことの重さ

たった一人でも、誰かを雇うというのは相当な責任が伴う。「給料を払う」「環境を整える」「指示を出す」すべてが経営者としての責任になる。人を雇うことの重さは、やってみないと本当にわからない。

ミスは全部、最終的にこっちの責任

事務員が入力ミスをしても、それを見逃したのは自分。お客様に説明するのも、自分。信頼を失えば、すべてが自分の責任として跳ね返ってくる。人に任せるというのは、信頼と責任のバランスが問われる行為だ。

「辞められたら詰む」プレッシャーと戦う

事務員が風邪を引いた日、仕事が完全に止まった。「もしこのまま辞められたら」と想像すると、胃がキリキリする。だからこそ無理もさせられず、でも頼らざるを得ない。小さな組織の脆さが身に染みる。

勤務時代にはなかった「決める責任」

勤務司法書士としては「決められたことを正確にやる」ことが求められた。しかし独立すれば、何をどうするかを決めるのはすべて自分。逃げ場のない意思決定に、最初は戸惑うばかりだった。

お客様対応も価格設定も全部自分で決断

どこまで対応するか、いくらで受けるか、すべて自分で決める必要がある。判断を誤ればクレームにもなるし、赤字にもなる。経験を積むことでようやく「自分なりの正解」が見えてくるようになった。

正解がない中で「腹を括る」経験

登記の現場では「正解」が見えないケースも多い。そんな時、自分なりの方針を打ち出してお客様に説明し、責任をもって対応する。それが、経営者としての「腹を括る」瞬間なのだと感じる。

それでも独立してよかったことも、少しはある

たしかに愚痴も多い。しんどいことも多い。けれど、独立して得たものも確かにある。それがなければ、きっと続けられていない。

自分の看板で依頼される喜び

初めて「先生にお願いしたい」と言われた時の感動は、今でも覚えている。事務所の名前ではなく、自分の名前で依頼される。これこそが独立した者だけが味わえる瞬間だと思う。

やりたい仕事だけを選ぶ自由(に近い感覚)

すべての案件を受ける必要はない、というのは精神的に大きい。もちろん経済的に余裕があるわけではないが、自分の考え方やスタンスに合わない仕事を断る自由がある。これもまた、独立の醍醐味のひとつだ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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