登記が終わった“後”に届いた一本の電話──あの名前、間違ってますよ?

登記が終わった“後”に届いた一本の電話──あの名前、間違ってますよ?

登記が終わったのに、訂正の電話が鳴る現実

ようやく一件落着――そう思ったその翌朝のことでした。「あの、名前が違うんですけど…」。電話の向こうで依頼人の声が硬くなっていくのがわかりました。胸が冷たくなる感覚。登記が完了し、すべて終わったと安心していた矢先に届いたこの一報は、私の一日を重く沈ませるには十分でした。司法書士として15年以上やってきていますが、こういった“あとからくる地雷”は、慣れたくても慣れられないものです。

まさかの「終わった後」に始まるトラブル

登記申請は時間との戦いです。期限もあれば、他の業務との兼ね合いもあります。そんな中、細かい字面のチェックがつい甘くなることも……いや、言い訳ですね。だけど本当に、誤字脱字って、恐ろしく目に入りにくい。特に名前に関しては、「依頼人が正しいと思ってた」なんてケースもありますから、信じてしまうんですよね。

あのとき、どこで間違えたのか

結局、元の委任状の時点で誤字がありました。依頼人が自分の名前を間違えて書いたのが始まりでしたが、それをこちらもそのまま信じてしまい、修正しないまま申請してしまった。チェックはしたつもりだったんです。「したつもり」。その言葉ほど怖いものはないと、この仕事をしていると本当に痛感します。

誰が悪い?誰の責任?

誰が悪いのか、と聞かれれば、たしかに依頼人の記載ミスも原因です。でも、最終的に書類を確認して提出したのは私。責任を取るのも私。結局、依頼人の中では「司法書士に頼んで間違えられた」と記憶されてしまうのが現実です。信頼って、積み重ねるのは何年もかかるのに、崩れるのは一瞬なんですよね。

登記簿の誤字──たかが一文字、されど一文字

名前の「高橋」が「髙橋」になっていた、という程度の違い。機種依存文字とか異字体って、パッと見じゃ分からないことが多い。けれど、登記簿は“公式記録”。このたった一文字の違いが、後々の手続きで「本人確認ができない」という大問題につながることもあるから怖い。

依頼人の信頼を失う一歩手前のヒヤリ

「自分の名前が間違ってるってどういうことですか?」と、やや怒り気味の口調で言われた時のあの沈黙。誤字の内容を説明しても、法律的な理由を話しても、納得はしてもらえない。依頼人の中では「間違えた人=信用できない人」になるからです。心から反省しつつも、どうしても気が滅入ります。

「これ、ほんとに直るんですか?」という冷たい声

訂正登記をすれば直る、と答えます。けれど、依頼人にとっては「直せるか」より「間違えられた」という事実のほうが重要だったりします。怒りというよりも、呆れに近い反応をされると、言い訳の余地もなくなります。心の中で「もっと余裕があれば…」と何度思ったかわかりません。

訂正の流れと費用の説明でさらに気疲れ

訂正登記には訂正の申請書を作成し、原因説明書や委任状なども再度整えなければいけません。そして、「追加費用は?」という話になる。こちらの責任であれば無償でやるしかない。でも、それが当然とされる空気の中で、「こっちも人間だ」と思ってしまう自分もいます。

訂正登記という二度手間の現場

誤字があった場合、訂正登記という形で修正することになります。これがまた地味に面倒で、かつ地味に緊張する。二度手間とはいえ、手続きはゼロからやり直すような気分になります。申請内容の確認も一層厳しくなります。

法務局は淡々と、こっちはヒリヒリ

法務局の窓口では訂正申請も日常業務の一部なので、特に咎められることはありません。でも、こちらとしては「何やってんだろう…」という気分になります。書類のチェックを受ける間の沈黙が、胃に来るんですよ。

原因説明書の作成が地味にしんどい

「なぜ間違えたのか」を文章にする作業、これがしんどい。言い訳っぽくならず、でも事実を明確に伝えるバランスが難しい。経験があるからこそできるとも言えるけど、経験しないに越したことはないです。

訂正登記に必要な書類と注意点

訂正申請書、委任状、原因説明書、そして添付書類。もう一度チェックリストを作って一つひとつ確認。再提出時にまた誤字があれば目も当てられない。そう思うと、指先が震えたりもします。

事務員のサポートがあっても防げないミス

うちには優秀な事務員が一人いて、いつも丁寧に書類を見てくれます。でも、それでもミスは防ぎきれない。最終確認の責任は私にあるし、見落としって一緒に働いていてもゼロにはできないんです。

ダブルチェックしてもすり抜けるヒューマンエラー

二人で何度も見ていても、疲れていたり、慣れていたりすると、見逃しが起きる。「そこじゃないと思ってた」と、視点がズレることもあるし、人間の集中力には限界があります。完全なミス防止なんて夢の話かもしれません。

忙しいときに限って起きる法則

なぜか、仕事が立て込んでいるときに限って、こういうミスが出る。焦っているときこそ落ち着いて、と頭ではわかっていても、実際には逆の行動をとってしまう自分がいます。これもまた、プロとしての課題です。

責任の所在と心のモヤモヤ

事務員のせいにするわけにはいきません。でも内心では、「気づいてほしかったな…」なんて思ってしまうことも。とはいえ、最終責任は私。だからこそ、黙って処理して、自分で抱え込むことが多くなります。

司法書士という仕事の“見えない疲労”

司法書士は一見地味な仕事ですが、精神的なプレッシャーがかなり大きい職業です。細かいところを見続ける集中力、失敗できないという重圧、それを日々抱えていると、気づかないうちに心がすり減っていきます。

形式的な書類の奥にある、精神的プレッシャー

間違いが許されない世界です。書類が正しくないと、相続登記や売買登記が無効になる可能性もある。その責任を感じながら書類を作ることは、意外とメンタルにきます。

「絶対に間違えてはいけない」という呪縛

何度も何度も確認し、「これで完璧だ」と思っても、やっぱり怖い。誤字一つで全体が台無しになる。そんな緊張感が、毎日じわじわとストレスになっていくんです。

「ミス=信用失墜」の構図に疲れる

一度ミスをすると、「あの人、間違える人だよね」となる。それが怖くて、さらに神経をすり減らす。そして、完璧を求めすぎて、自分のミスを誰よりも自分が許せなくなってしまう。そんな悪循環の中にいる司法書士は、きっと私だけじゃないと思います。

後輩やこれから司法書士を目指す人へ伝えたいこと

ここまでの話を聞いて、「司法書士、大変そうだな」と思った方もいるかもしれません。正直、楽な仕事ではありません。でも、それでも続けていける理由もあるんです。失敗をしても、そこから学ぶことができる。そう信じて、今も私は登記簿と向き合っています。

完璧は目指すべきだが、現実は厳しい

100点を出し続けるのが理想。でも人間はミスをするものです。だからこそ、ミスが起きた時にどう対応するか、そのあとの対応が一番大事なんだと思います。

間違えたとき、どう対応するかが“本当の力”

平謝りして、すぐ動いて、訂正して。真摯な姿勢と行動があれば、信頼は取り戻せると思います。逃げずに向き合うことが、司法書士としての本当の“実力”かもしれません。

自分を責めすぎない工夫と心の持ち方

反省は必要。でも、自分を責めすぎると続かない。私は最近、少しだけ「まあ、人間だからね」と自分に言い聞かせるようにしています。ゆるめることで、次はもっと丁寧にやろうと思えるんです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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