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「相談したいんだけど」と言われて期待したら雑談だった
「先生、ちょっと相談したいことがあって…」という電話が入るたびに、こちらは身構える。登記か、相続か、それとも借金の整理か。予定を調整して、資料を準備して、お茶を出す手配までして――それなのに。蓋を開けてみると、世間話で1時間。何の相談だったのか、聞きそびれたまま「また来ます」と帰られてしまう。あの時間、何だったんだろう。こっちは相談に備えて心と時間を用意しているのに。
ドアを開けた瞬間の“相談モード”じゃない空気
なんとなく、その空気はわかる。ドアを開けた瞬間に「今日は本題に入らないだろうな」と感じるときがある。表情が柔らかすぎたり、手に手帳も資料も持っていなかったり。「まぁまぁ座ってよ」と始まり、「最近暑いですね」「駅前のパン屋潰れたの知ってる？」という話題で時間がどんどん過ぎていく。最初は笑って付き合っていても、途中から「このまま終わるのか？」と焦りが顔に出る。
一時間話して、結局「また考えるわ」
雑談の末、ふとした沈黙のあとに「ま、また考えておくわ」という一言で面談が終わる。資料も受け取らず、相談内容も曖昧なまま。「とりあえず、話を聞いてほしかった」という雰囲気だけが残る。相談に来たというより、“話し相手を求めて”来られた感じ。人としてはわかる。でも、士業としては何とも言えない虚無感が残るのも正直なところだ。
なんでこうなる？雑談だけで終わるパターン
もちろんすべての相談がこうなるわけではない。ただ、年齢層が高めの方や、近所付き合いの延長線上で来られる方は、この「雑談だけ」パターンになりやすい。最初から何かを決めるつもりがない。思考の整理のために話す。でもそれって、こっちの時間も使ってるんですよね。
話すことでスッキリしたいだけの人
特に相続や離婚、借金など、重いテーマほど「まずは気持ちを吐き出したい」という段階の方が多い。わかる。でも、だったら「雑談でもいいですか？」と言ってほしい。相談の構えで来られると、こちらも“仕事モード”で準備してしまうのだ。
本題に入る前にエネルギーが切れる人
「あの話をしよう」と思って来たのに、つい関係ない話をしすぎてしまい、本題に触れる前に疲れてしまう方もいるように感じる。特に高齢者に多い。体力的にも精神的にも、本題を切り出すには“勢い”がいるのだろう。
「いやー最近ね」のループから抜け出せない
「いやー最近、腰が痛くてね」から始まる話は、だいたい10分以上かかる。しかも「それでね、あの薬が…」と展開が続き、気づけば話が3本くらい枝分かれして戻ってこない。本来の“相談したいこと”が何だったのか、聞くタイミングを完全に見失ってしまう。
“無料相談”の心理的ハードルと依存性
「無料だからこそ来やすい」というのはよくわかる。だけど“無料だから真剣にならない”という側面も確実にある。相談＝価値あるサービスという認識が薄いと、どうしても「ついでに世間話」になってしまう。
お金が発生しないと人は真剣にならない
面談の途中で「ちなみに、今日ってお金かかりますか？」と聞かれることがある。そういう時ほど、手続きに入る気はなさそうなケースが多い。逆に、報酬の説明をすると急にトーンダウンする方も。「ああ、本気じゃなかったんだな」とこちらも察する。
「相談」＝「おしゃべり」の感覚の人もいる
昔ながらの感覚の方にとって、「先生に相談する」というのは「世間話を交えながら状況を話すこと」という意味に近いようだ。特に地方では、士業＝町のお兄さん／おじさんのような立ち位置になりがちなので、この“曖昧な距離感”がややこしい。
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書類は進まないのに時間だけが消えていく
雑談面談の最大の問題は、「手元に何も残らない」ことだ。申請書も、契約も、進展もない。ただ、話だけがあって、時間だけが消えていく。もちろん信頼関係の構築だと思えば意味はあるのかもしれないが、忙しいときには正直キツい。
こっちは仕事の段取りをずらしている
「ちょっと話したい」と言われた時間に、他の案件の対応をずらしたこともある。重要書類の確認を後回しにして、机の上のスペースもあけて準備した。でも終わってみれば何もなし。クタクタになって、「あの時間を返してくれ」とつぶやく。
一番つらいのは「何も残らない感覚」
商売として動いていないのは資料すら受け取らないケースもある。相手にとって“来た”という行為で満足されてしまうと、こちらは何の達成感もない。たとえるなら、調理したのに誰にも食べてもらえなかった料理のようだ。
断りきれない自分の優しさがしんどい
「今日はちょっと忙しいんで」と言えればいいのだが、それがなかなかできない。結局、「せっかくだし話くらい聞くか」と思ってしまう。結果、時間は過ぎていく。相手に悪気がない分、強くも言えないのがもどかしい。
つい「いいですよ」と言ってしまうクセ
電話や玄関先で「ちょっとだけ相談なんですけど…」と言われたら、反射的に「どうぞどうぞ」と返してしまう。あとで自分に「バカだな」と言いたくなるが、性格的に断れない。それが地味に精神を削る。
愚痴や近所話にも付き合う羽目に
「最近の町内会がね」「息子が仕事辞めちゃってね」など、完全に業務外の話に巻き込まれることもしばしば。それでも最後に「先生に聞いてもらえてよかった」と言われると、なんとも言えない気持ちになる。
「また来ます」で終わる無限ループ
面談の最後に「また来ます」と言われると、内心で「また雑談コースか…」と構えてしまう。もちろん来てくれるのはありがたい。でも、次も結局“何も進まない”予感がして、モヤモヤが残る。
次も本題に入らない可能性大
雑談がクセになっている人は、次も自然とその流れになる。お互いに話の切り出し方を見失っているのかもしれない。「あれ、何の話でしたっけ？」で始まり、「また考えておきます」で終わる、そんなループ。
来ないなら来ないで気になるのも地味にストレス
逆に「また来ます」と言われて来なかった場合も、こちらはちょっとだけ気になる。「本当に相談したいことがあったのでは？」と考えてしまい、どこかで引っかかる。何というか、精神的に振り回される。
これって“相談”だったのか？と思う瞬間
話を終えて、椅子から立ち上がる瞬間にふと思う。「今日って何のための面談だったんだ？」と。雑談も必要だと思っているが、あまりに続くと“相談”の定義がわからなくなってくる。
相手は満足して帰るけど…
話し終えてスッキリした顔で「ありがとうございました」と言って帰っていく依頼人。その姿を見ると、こちらだけが取り残されたような感覚に陥る。まるで、情報も収穫もない雑談カフェを一人運営している気分だ。
こっちは何のアウトプットも残ってない
業務的には“ゼロ”。書類も進まず、契約もなし。相談の記録すら取れない。報告する相手もいない。残るのは、疲れた頭と空になったカップだけ。虚しさの積み重ねが、じわじわと効いてくる。
実は相談者自身も本題に触れるのが怖い
本当は深刻な相談をしたいのに、切り出せない。そんな人も多いように思う。雑談の中に、ぽろっと本音が混ざることもある。それを見逃さないようにするのも、こちらの役割なのかもしれない。
相続・離婚・借金…重い話題に向き合えない心理
人生の節目に関わるような重いテーマほど、面と向かって話すには勇気がいる。だからこそ、何度も来て雑談だけして、ようやく本題にたどり着く人もいる。遠回りだけど、それが必要なプロセスなのかもしれない。
雑談という“回避”に逃げてしまうケース
「今日はいいや」「また次にしよう」。そうやって本題を先延ばしにするうちに、いつの間にか雑談が“居場所”になってしまう。それを変えるには、こちらが空気を読んで背中を押してあげるしかない。
時間管理と心の距離感をどう取るか
雑談にどこまで付き合うか、これはいつも悩ましい。あまりにドライになれば信頼を失うし、付き合いすぎれば業務が回らない。そのバランスを毎回探っている。
「雑談10分まで」と割り切る勇気
最近は、最初の10分は雑談OK、それ以降は本題に入るよう意識している。時計を見ながら話すのは申し訳ないが、時間を可視化するだけでも違う。自分のためでもあり、相手のためでもある。
でも冷たくしたくないジレンマ
「もう結構です」と切り上げることはできる。でも、それをしてしまうと、相手が二度と来てくれなくなる気もして、結局踏み切れない。優しさというより、優柔不断かもしれない。
それでも雑談に付き合う日々の中で思うこと
何も残らないように見える雑談にも、意味があるのかもしれない。信頼は、実は“相談”ではなく“雑談”の中で育っているのかもしれない。そう思えば、少しは気が楽になる。
信頼関係はそこから生まれる場合もある
何度も雑談を重ねて、ようやく「先生、実は…」と本音が出てくる瞬間がある。そのとき、「ああ、この雑談は意味があったんだ」と実感する。遠回りだけど、それがこの仕事のリアルなのかもしれない。
でもやっぱり、こっちの余裕がないと無理
こちらが忙しいときには、雑談すら苦痛になる。心に余白がないと、人の話は聞けない。だから今日も、深呼吸してからドアを開ける。「相談したいんだけど」に、また付き合う覚悟を決めて。
