立会の最中に青ざめた…本人確認書類が期限切れだった話

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立会の最中に青ざめた…本人確認書類が期限切れだった話

立会の最中に青ざめた…本人確認書類が期限切れだった話

その瞬間、背筋が凍った…本人確認書類の“有効期限切れ”

不動産の決済立会いの現場。それなりに場数を踏んでいる司法書士なら、ある種の“ルーティン”のように業務をこなす日もあるでしょう。私もそうでした。ところがある日、本人確認の最中に提示された免許証を見て、血の気が引きました。「あれ? これ…期限切れ?」。そこからの時間は、妙にゆっくりと、でも現実は容赦なく流れていきました。

「ちょっと確認させてくださいね」から始まる崩壊

何気なく発した「ちょっと確認させてくださいね」という一言。その時点では何の疑いもありませんでした。依頼者は慣れたように免許証を差し出し、私はそれを受け取って機械的に目を通す。ところが、有効期限の“平成の表記”が目に入り、ゾワっとしました。西暦換算すると、1ヶ月以上前に切れていたのです。

まさかの免許証“1ヶ月前に失効”の現実

それが古い免許証ではなく、明らかに本人の最新のもの。ところが、更新手続きを失念していたようで、本人も驚いていました。「あれ? つい最近更新したと思ってたんですけど…」と動揺している様子に、こちらの冷や汗も止まりませんでした。登記はこの状態では本人確認が完了せず、取引自体が進められないのは明白でした。

場の空気が凍る中、私はただ無言だった

売主も買主も、仲介業者も、その場にいた全員の顔がこわばっていました。誰も声を出さず、重たい沈黙だけが漂う時間。私の中でも、「どうする? いや、どうしようもない」という考えがぐるぐる回り、何も言えませんでした。せめて“有効期限”だけでも先にチェックしておけば…と後悔ばかりが募りました。

なぜこの確認を見逃してしまったのか

「なんでこんな初歩的なことを見逃したんだろう」――あとの祭りですが、何度も自問しました。経験が増えるほど、確認が雑になっていたことに、ようやく気づかされたのです。

「いつもの書類」で油断していた

相手が提示したのは、確かに普通の運転免許証でした。何百回と見てきた形式で、写真も本人の風貌と一致していた。「これで間違いないだろう」と思って、細かく見ることを怠っていたのです。日々の業務の中で「これは大丈夫」と思い込むクセが染み付いていたんでしょう。

事務員に任せっきりだった確認業務

本人確認資料のコピーや準備は、事務員が行うことが多い我が事務所。普段はそれでも問題なかったのですが、この日は現地で初めて現物を確認する流れになり、私自身がそのチェックをしたにも関わらず、見逃した。事務員に任せっきりにしていたことが、いざという時に判断力を鈍らせた気がします。

責任の所在が曖昧になる現場の怖さ

「誰がチェックした?」「なぜ気づかなかった?」――現場でそんな話をしている余裕はありませんでしたが、後から事務所に戻ってから、この曖昧さが一番のリスクだと痛感しました。結局、最終的な確認をするのは司法書士本人。それを再認識するには、あまりに痛い出来事でした。

実は本人確認書類の期限切れ、意外と“あるある”

この件があってから、他の司法書士や行政書士仲間に話してみたところ、似たような経験をしている人が案外多くて驚きました。特に年配の依頼者や慣れすぎた人ほど、期限切れ書類を堂々と出してくることがあるそうです。

高齢者に多い「更新忘れ」の落とし穴

特に高齢の依頼者の中には、「免許証はずっと持ってるから大丈夫」と思っている人も多く、更新手続きに無頓着なケースが見られます。身分証明書として提示されたものが、実は失効していた――というのは決して珍しい話ではないと聞きました。相手に悪意がなくても、こちらの責任は問われる可能性があるのが怖いところです。

保険証もマイナンバーも期限があるのを忘れがち

運転免許証以外にも、健康保険証やマイナンバーカードにも有効期限があります。でも、日常的に“使う”機会が少ないからこそ、依頼者側もこちら側も、チェックを怠ってしまう。形式が整っていれば安心しがちですが、そこに大きな落とし穴が潜んでいます。

立会い中に中断するとどうなるか

この出来事は、単なる本人確認ミスでは終わりませんでした。取引そのものが中止になり、関係者全員に多大な迷惑をかけることになりました。

売主・買主・仲介業者…全員に迷惑がかかる

決済が終わらなければ、融資は実行されず、所有権移転もできない。つまり、売主はお金を受け取れず、買主は鍵をもらえない。仲介業者は手数料の回収が遅れ、金融機関も段取りを再調整しなければならない。すべてが滞るのです。

時間と信頼の損失、回復に時間がかかる

事後処理の電話連絡、書類の修正、再訪問の調整…。物理的な手間もありますが、一番きつかったのは、「あの司法書士さん、大丈夫?」という空気。どれだけ丁寧に説明しても、一度失った信頼は簡単には戻ってきませんでした。

私が取った“その場しのぎ”の対応とは

完全に立ち止まってしまった現場で、私にできたことは少なかったです。けれど、せめて迷惑を最小限にするため、必死で動きました。

とにかく謝るしかなかった

「私の確認不足です。本当に」――この一言を何度繰り返したかわかりません。誠意を見せることしか、その場ではできませんでした。泣きそうな気持ちをぐっと堪えて、頭を下げ続けました。

再スケジュールと交通費の自腹負担

買主・売主の再調整、書類の再確認、そして交通費の精算。すべてこちらで持たせていただきました。事務員の手配も含め、何とか一週間後に再立会いを実現。それまでの間の胃痛は今も忘れません。

精神的ダメージが数日続いた

正直、その一件のあと数日はまともに寝られませんでした。「またやってしまうのでは」という不安、「あの場面が再現されたらどうしよう」という恐怖。それが、疲労感として毎日身体に残っていました。

それ以来、私が徹底している3つのこと

この失敗をきっかけに、事務所の運用や自分自身の確認作業にいくつかの改革を加えました。些細なことですが、少なくとも“あの失敗”はもう繰り返さないと思えるようにはなっています。

本人確認書類の“有効期限チェック”は必ず声に出す

まず、有効期限の読み上げをルールにしました。「○○様の免許証、有効期限は◯年◯月ですね」と確認するだけで、こちらも落ち着くし、相手も「あ、確認されてる」と感じてくれるようです。

事務員とのダブルチェック体制を整備

一人の確認では見落としが出る。だから、事務員が事前にコピーした段階で一度チェックし、私が現場で再確認する流れに改めました。「見るだけ」でなく、「確認を記録に残す」形にしたことで、安心感が変わりました。

「チェックしました報告書」の導入

簡単なチェックリスト形式の報告書を1枚用意しました。確認者の名前と日付を記入するだけのものですが、「記録として残す」と思うと、確認作業に対する意識が一気に引き締まります。

これから司法書士を目指す人に伝えたいこと

この仕事は、地味だけど責任が重い。特に本人確認のような“当たり前”の業務ほど、失敗が命取りになります。だからこそ、確認を“義務”ではなく“自分の身を守る行為”として捉えてほしいと強く思います。

失敗は必ず起こる、でもそこから何を学ぶか

どれだけ注意していても、人間である限りミスはゼロにはなりません。大切なのは、同じ失敗を繰り返さないために、どう自分と業務を見直すかです。恥ずかしいけど、この失敗を晒すことが、誰かの助けになるなら…と願ってこの記事を書きました。

「確認」は自分を守るための防衛本能だ

司法書士にとって確認は義務であり、命綱です。信頼を失うのは一瞬。でも、信頼を築くには地道な確認作業の積み重ねが必要です。そのことを忘れず、今日も私は「ちょっと失礼して、有効期限を確認させてください」と声に出すようにしています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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