紙の山に囲まれて、ふと思う「このままでいいのか?」
気づけば、机の上にはまた紙の書類が山積み。クリアファイルに分けたはずの書類も、探す時にはなぜか見つからない。忙しさにかまけて整理が後回しになり、週末にまとめて片づけようとするも、結局その時間すら取れない。そんな自分にイライラしながら、「これ、いつまで続くんだろう」とぼんやり思うことがある。
机の上の書類が片付かない日常
この仕事、気を抜くとすぐに紙だらけになる。申請書、添付書類、委任状、そして控え。正直、要るか要らないか分からない書類まで残してしまう。「念のために取っておこう」が積もり積もって山になる。誰に見せるわけでもないのに、「捨てたら怒られるかも」と不安で、捨てる決断ができない。
一通のFAXが今日も業務を止める
デジタルで送ればいいのに、未だにFAX文化が根強いこの業界。しかも、送られてきた書類がかすれて読めない、順番がバラバラ、そもそも届いていない…と問題は尽きない。自分が送る側のときも、送信後に相手に電話して「届いてますか?」と確認する。これ、ほんとに2025年の話か?と思ってしまう。
印刷ミスと送信ミスのイライラ
インクが薄くなってるのに気づかずに印刷→FAX→相手から「読めません」と言われる。そしてまた印刷し直して送信。時間も紙もインクも無駄になる。こういう“ちょっとしたこと”の積み重ねが、気づかないうちにストレスになっている。
電話での確認がまた時間を奪う
「届きましたか?」と毎回電話で聞くのが習慣になっている。相手も忙しいし、こちらも忙しい。たった30秒の確認が、その日のリズムを崩すことがある。電話しながら、机の書類を探して、メモを取りながら、次の案件の準備をして…。マルチタスクが得意じゃない自分にとっては、けっこうしんどい。
「デジタル化しなきゃ」と思ってはいるけど
デジタルの便利さはわかっている。紙が減れば机がスッキリするし、検索も簡単。だけど「じゃあ今すぐデジタル化しますか?」と聞かれたら、やっぱり躊躇してしまう。理由はいろいろあるけど、一番は「不安」なのだと思う。
導入コスト、誰が負担するのか問題
例えば、スキャナ付き複合機やクラウドサービスの導入にはコストがかかる。月々のサブスク費用や初期費用を見積もるだけでげんなりしてしまう。事務員一人の小さな事務所には、そういった「未来への投資」がなかなか踏み出せない現実がある。
操作ミスが怖くて結局紙で保存してしまう矛盾
PDFで保存しても、万が一の消失が怖い。外付けHDDもクラウドも信じきれなくて、結局プリントアウトしてファイルに綴じてしまう。意味ないじゃん、と自分でも思うけど、それが“安心”なのだ。紙は「触れる」という安心感がある。
PDFにしても心配だから印刷する
あるとき、データを誤って上書き保存してしまったことがある。そのときの絶望感が忘れられない。それ以来、重要書類は必ず印刷して保存するようになった。ミスを防ぐには紙が一番、というのは時代遅れかもしれないけれど、それでも経験から染み付いてしまっている。
クラウドの仕組み、よくわからない
「Dropbox?Googleドライブ?なんか聞いたことあるけど、どれが安全でどれが有料なの?」そういう基本的なところからつまずいてしまう。誰かに相談できる環境があればいいのだけれど、地方の司法書士なんて、基本は“孤独”な仕事なのだ。
紙文化が根強く残る“業界の事情”
司法書士の業界自体が、そもそも紙文化にどっぷりと浸かっている。法務局も、裁判所も、いまだに紙書類が前提。電子申請も進んでいるとはいえ、「結局、紙での控えも残しておいてください」と言われることも多い。
法務局は未だに“紙”が基本
法務局に持参する登記申請書は、原本・写し・補正資料と、とにかく紙のオンパレード。電子申請をしたところで、「原本を別途提出してください」と言われるケースがある。結局、紙を捨てられない仕組みになっているのだ。
お客様も「紙でくれ」と言う現実
こちらがPDFで渡そうとしても、「紙で見たい」とおっしゃるお客様はまだ多い。特に高齢の方や、相続関係の相談者にとっては「紙の契約書」が安心材料なのだ。世代間のギャップもあり、デジタルだけで完結するには、もう少し時間がかかるのかもしれない。
年配の依頼人にiPadは通用しない
あるご高齢の依頼者に、iPadを使って説明資料を見せたことがあった。でも、「字が小さくて読めない」と返され、結局紙で印刷しなおすはめに。相手が安心して話を進められる方法を選ぶなら、やっぱり紙なのだと実感した。
事務員一人の現場で、改革なんてできるのか
毎日の仕事に追われながら、システム導入やマニュアル作成なんてやってられない。事務員さんに任せるにも、そっちも手一杯。現場は回してるだけで精一杯なのに、これ以上“新しいこと”を取り入れる余裕が本当にない。
任せられる人がいないストレス
事務員さんが休むと、すべての業務が止まる。仮にデジタル化したとしても、それを教えるのも、トラブル対応するのも結局自分。むしろ、紙なら最悪「置いといて」と言えるけど、デジタルはそうはいかない。
デジタル化=仕事が減るわけじゃない
よく「デジタル化で業務効率UP!」なんて言うけど、それは初期設定や習熟が済んでからの話。最初はむしろやることが増える。その導入ハードルの高さに、疲れて手が止まる。導入だけで疲弊してしまっては、本末転倒だ。
結局、覚える手間とリスクが増えるだけ?
ソフトの使い方を覚える、IDやパスワードを管理する、操作ミスのリスクを背負う。そんなリスクを考えたら、「今のままでいいかも」と思ってしまう自分がいる。でも、それってただの“現状維持バイアス”なのかもしれない。
それでも一歩踏み出したいときに考えたいこと
何も全部をデジタルにしなくていい。自分にとって「ちょうどいい」バランスを見つければいい。全部紙でも、全部デジタルでもない、その間にある“自分なりのやり方”があってもいいのだ。
完全デジタルじゃなくてもいい:併用という選択肢
例えば、請求書だけはPDFにしてメールで送る。日報だけはGoogleスプレッドシートで管理する。そんな小さな一歩からでも、充分変化になる。完璧主義を手放して「できることから始める」ことが、結果的に継続につながる。
「効率」より「安心感」で決める導入基準
便利さよりも、“自分が安心して業務を続けられるか”のほうが大切。その視点で選べば、「これは今の自分に合わないな」と判断できる。無理して最先端を追いかける必要なんて、どこにもない。
精神的な負担を減らすためのツール選び
見た目がシンプル、操作が直感的、サポートが手厚い――そういった「不安にならない」ツールを選ぶだけでも、気持ちはだいぶ楽になる。導入しても不安になるようなものなら、まだ紙の方がマシだと割り切るのもアリだ。
無理しないことが、長く続けるコツ
変化に疲れてしまっては元も子もない。大切なのは、自分がストレスを感じずにやれる範囲を知ること。紙も、デジタルも、どちらも「道具」だという意識で、それぞれと上手につきあっていけばいいと思う。