“紹介されたから断れない”がつらいときに読んでほしい話

“紹介されたから断れない”がつらいときに読んでほしい話

「紹介」という重圧に押しつぶされそうになる日々

司法書士という職業柄、「○○さんに紹介されて…」という依頼は日常茶飯事です。本来、ありがたい話のはずなのに、正直、憂鬱になることも多い。なぜかといえば、その一言がすでに“断ってはいけない”空気を作り出してしまうからです。しかも地方では人間関係が濃い分、「紹介者の顔」を立てなければならない場面も多く、毎回胃がキリキリします。感謝したいのに、怖い。そんな矛盾を抱えている方、きっと少なくないのではないでしょうか。

断る選択肢が最初からない不自由さ

紹介案件には「選ぶ自由」がないのが厄介です。たとえば、初めて電話をかけてきた人が「○○先生に紹介されて…」と言った瞬間、こちらはもう断るカードを持たされていない気分になります。本当は業務内容的に合わないとか、既にスケジュールが詰まっているとか、色々な理由があるのに、それらを伝えると「冷たい人」と思われるリスクすら感じてしまいます。誰も悪くないのに、自分だけが板挟みにあう不条理さを、あなたも味わったことがあるはずです。

「○○さんの顔に泥を塗るなよ」という空気

一番苦しいのは、「紹介者のメンツ」を守ることを優先しなければならない空気です。相手の希望に応えられないと、「あの人を紹介したのに、断られた」と紹介者の立場が悪くなるんじゃないか、と無用な心配までしてしまう。以前、知り合いの弁護士から紹介された方の案件で、どう考えても業務対象外だったのですが、断れずに結局赤字で対応してしまいました。あとで「なんであんなの受けたの」と妻に言われて、情けなくなったのを覚えています。

紹介案件にありがちなトラブルパターン

「紹介案件」は必ずしもトラブルを招くわけではありませんが、問題を抱えた依頼が混じっている確率は高い印象です。これは経験上の話ですが、最初から「これ誰も引き受けなかったから回ってきたのでは…?」と思うようなケースも少なくありません。特に、内容が曖昧なまま「とりあえず相談だけ」という形で押し込まれてくるのは、注意が必要です。

最初から無理筋の依頼が多い

紹介された案件の中には、どう考えても無理なものが混ざっていることがあります。たとえば、すでにトラブルが激化していて、感情の整理がつかない相続人同士の仲介を頼まれたことがあります。そんなの、司法書士の業務ではないのに、「知り合いだからどうにかならない?」と頼まれると、むげにもできません。紹介者は善意でも、こちらには地雷処理班のような役割が課されてしまうのです。

費用の話ができない・しにくい空気

紹介案件でもっともやっかいなのが「お金の話」がしづらくなることです。依頼者は「紹介されてきたから、きっと安くしてくれるんだろう」と勝手に思っていることが多く、こちらが正規の料金を提示すると微妙な空気になります。私は過去に、「そんなにかかるとは思っていなかった」と言われて、その場が気まずくなったことがあります。

「友達価格で頼むね」と言われたときの絶望

あるとき、紹介者と一緒に依頼者が事務所に来て、「この人、困ってるから、できるだけ安くしてあげて」と言われたことがあります。いや、善意なのはわかります。でも、こちらもボランティアでやってるわけじゃないんです。それを言った瞬間の空気の冷たさ…いまだに忘れられません。結局、その案件は最低限の報酬でこなしましたが、残ったのは疲労感と虚しさだけでした。

値引きを断ると「冷たい」と言われる理不尽

断ろうとすると、「あの人に紹介してもらったのに」とか「冷たいねぇ」なんて言われることもあります。いや、それおかしくない?と思うけど、言えません。紹介者に対する気遣いが、こちらの自由な判断をどんどん奪っていく。割に合わない仕事がどんどん増えていって、正直「紹介」って、ありがたいけど苦手です。

業務の境界線が曖昧になる

紹介案件では、頼まれる内容がだんだん広がっていく傾向もあります。最初は登記だけのはずが、「ついでにこれも」「あれもできませんか?」と、気づけば業務外の相談まで受けてしまっている。そうなると、責任の所在も不明確になり、トラブルの元になります。紹介されたがゆえに「NO」と言いづらくなってしまうのが、本当に悩ましい。

「紹介されたから」は魔法の呪文じゃない

紹介されたからといって、すべてを受け入れる必要はありません。でも、「紹介された」というだけで、心理的な縛りが強くかかるのもまた事実。私たちは無意識のうちに、「断ることは悪」だと感じてしまっているのかもしれません。

紹介≠信頼ということもある

紹介されたという事実だけで、相手を信用してしまうのは危険です。過去に、紹介者は信頼できる人だったけど、紹介された側の依頼者が非常にクセの強い人だったことがありました。紹介って、あくまで「きっかけ」に過ぎないんですよね。こちらが信頼するに足る関係かどうかは、結局、目の前の人を見て判断しなければなりません。

相性が悪くても断れないつらさ

紹介された方との相性がどうにも悪くても、こちらからは断りにくいという地獄もあります。話していて全然かみ合わない、説明しても通じない。だけど紹介者の手前、なんとか関係を続けようとしてしまう。結果、消耗戦のような日々に突入する…何度もありました。「紹介」が人をつなげるのではなく、人を縛る鎖のように感じる瞬間があります。

どう断るか、どこで線を引くか

だからこそ大事なのが、自分の中で「断る基準」「引き受ける基準」を明確にしておくことです。紹介者にどう思われるかよりも、自分の仕事を続けられるかどうかのほうが大事。経験上、それをはっきり持っている人ほど、仕事も長続きしています。

紹介者に嫌われずに断る言葉の選び方

断るときに相手の顔を立てながら、自分の意志も伝えるには、「言い方」が大切です。紹介者に配慮しつつ、「今回は難しい」と伝えるのは勇気がいりますが、その一言で自分を守ることができます。

「今はキャパ的に難しい」が使いやすい

実際に私がよく使うのは、「ありがたい話なんですが、今ちょっとキャパオーバーで…」という断り方です。依頼内容にケチをつけるわけでもなく、紹介者を否定するわけでもない。相手にも悪い印象を与えづらいので、非常に便利です。

責任の所在をあいまいにしない伝え方

「紹介だから…」とモヤモヤしながら仕事を引き受けると、あとで揉めたときに余計に傷つきます。だからこそ、最初から「ここまでは対応できます」「ここから先は専門外です」と線引きを明確にするのが、結果的には自分と相手のためになるのです。

紹介文化とうまく付き合うために

地方で仕事をしていると、「紹介文化」と無縁ではいられません。でも、流されてばかりでは疲弊する一方です。紹介はありがたいけれど、自分の価値を安売りしない姿勢もまた、大切な仕事の一部だと私は思います。

紹介を断ることで得られる自由

すべてを受ける必要はない。断ることで、むしろ大事な案件に集中できたり、心の余裕を持てたりします。私も一度、「紹介ですが今回はお受けできません」と伝えたことで、その後の働き方がかなり変わりました。勇気を出して断ったその日から、少しずつ、自分の仕事を自分で選ぶ感覚が戻ってきたのです。

「自分の仕事を守る」ことの大切さ

紹介文化に飲み込まれそうになったときは、自分の仕事のスタンスを思い出すようにしています。「紹介されたから」は、魔法の言葉じゃない。自分の軸を持ちつつ、人との縁を大切にする。それが、司法書士として長く働き続けるために必要なことだと、今は強く感じています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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