親には黙っててって…それ、こっちが聞きたいわ

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親には黙っててって…それ、こっちが聞きたいわ

「これ、親には内緒で…」――誰が責任取るんだ問題

「この話、親には内緒でお願いします」――この一言、もう何回聞いただろう。司法書士という仕事柄、相続や離婚、家族間のトラブルにまつわる話を聞く機会は多い。中には家族にも話していない深刻な事情も含まれる。話す側は「聞いてもらってスッキリしました」と言って去っていく。でも、話されたこっちは、もやっとした気持ちと責任の重さだけが残る。そんな日々を繰り返していると、ふと「これ、全部俺が背負うことなのか?」と疑問が湧いてくる。守秘義務って、たしかに大事。でもそれが人間としての限界を超えてくると、もう笑うしかない。

司法書士は聞き役じゃない、けど聞かされる

相談に来る人は、こちらが「法律の専門家」として構えているのを見て安心するのか、急に心の内を語り始めることがある。「実は…」と切り出される話には、法律とは関係のない家族の確執、恨みつらみ、過去の罪などが含まれていることもしばしば。聞く態度は大事。でもこちらはカウンセラーではないし、何でも屋でもない。なのに「ついでに聞いてくれる?」という話が、結局一番重たかったりする。

遺産分割の場面で飛び出す“内緒”の破壊力

「実はあの人、昔認知してない子どもがいて…」とか、「父の再婚相手に財産を渡したくない」といった爆弾発言が、遺産分割協議の場で唐突に飛び出すことがある。それを「親には絶対言わないで」と言われる。いや、ちょっと待ってくれ。そこまでの秘密を預けられても、こっちは戸惑うばかりだ。秘密を持つ人は、言うだけで楽になるかもしれないけど、聞いた方はどう処理すればいいのか分からない。

相続のプロだけど、家族の秘密の管理人じゃない

法律的には「誰が何をどれだけ相続するか」を書類で整理すれば終わり。でも、実際はその書類の裏に無数の感情と秘密が積み重なっている。親族同士で睨み合い、言葉を飲み込む瞬間に何度も立ち会ってきた。正直言うと、家族の問題の“ゴミ箱”にされている気がすることもある。そんなとき、心の中で「俺はあなたの家族関係の後始末係じゃないんだけどな」とつぶやいている。

事務員には話せず、自分で抱えることの多さ

小規模な事務所だから、相談の内容も手続きも、最初から最後まで自分が全部やっている。雇っている事務員に、こんな深刻な話を共有するわけにもいかない。だからといって家に持ち帰るわけにもいかない。結局、ひとりで抱えるしかないのだ。人に言えないことを聞いてしまうというのは、なかなか消耗する。

孤独な立場ゆえの“情報の持ちすぎ”現象

気づけば、自分だけが知っている他人の秘密で頭がいっぱいになっていることがある。「この人は親に隠し子の存在を黙ってる」「あの人は兄に黙って不動産を処分しようとしている」…。そんな話が頭の中に渦巻く。飲みに行っても喋れないし、家族に相談もできない。誰にも言えないという状況は、思っている以上に堪える。

相談内容が重すぎて、眠れない夜もある

とくに自分の子どもと同じくらいの年齢の人から「親には絶対言わないでください」と言われて、複雑な家庭の事情を聞かされた日は、正直眠れない。「もし自分の子どもが同じ状況だったら」と考えてしまって、ただの他人事として処理できなくなる。プロとしての距離感を保つのが本当に難しい。

守秘義務はあるけど、それって限界あるよね?

もちろん司法書士には守秘義務があるし、それは徹底して守っている。でも、話す側が“言えば済む”という感覚でどんどん押し付けてくると、こちらは人間としての限界を感じる。守るのは当然だけど、そのことでこちらの生活や心が壊れてしまっては意味がない。

秘密の多さ=信頼ではないという現実

「あなたには話せる気がして」と言われると悪い気はしない。でも、それが信頼なのか、ただの押し付けなのかは紙一重。信頼と依存が入り混じっているケースも多くて、「この人、本当に自立してるのかな」と心配になることもある。秘密を聞かせる側は、自分の気持ちを一方的に吐き出しているだけ、ということもある。

「信用してるから話すね」に隠された無責任さ

「先生には言いやすいから…」という言葉は、一見ありがたい。けれど、それって「責任を取ってくれ」ということでもあるのだろうか?話された側はその後の行動にも配慮を求められ、発言ひとつ間違えるとトラブルにもつながる。聞いた瞬間は「信頼されてる」と思っても、数日後には「面倒な案件になったな」と感じてしまう。

信頼と依存の境界線はどこにある?

たまに「全部先生に任せます」と言われることがある。それって本当に任せたいのか、単に考えるのが面倒だから丸投げしているのか。依存を信頼と勘違いされることほど危険なことはない。特に家族間の秘密に関わる話では、ちょっとした判断ミスが大きな火種になる可能性がある。

自分の精神衛生との折り合いのつけ方

何でも聞く姿勢は大切だけど、全部を引き受けていたら潰れてしまう。だから最近は「それは他の専門家の領域ですね」とやんわり線を引くことも覚えた。すべてを真に受けて対応していたら、こちらの心がもたない。精神衛生を保つのもまた、仕事のうちだと割り切るようにしている。

話を聞いたあと、どう気持ちを処理するか

ひとつの手続きが終わったあと、誰にも言えないまま心に残った秘密はどうするのか。最初の頃はストレスがたまり、寝付きも悪くなった。でも最近は、手続きが完了した時点で「これは仕事」として気持ちを切り替えるようにしている。あくまで“代行者”であって“当事者”ではない、という意識が必要だ。

“ただの相談”のはずが、感情を消耗する日々

「ちょっと相談なんですけど…」と始まった話が、結局は相手の人生の核心部分だったりする。それを軽い気持ちで受け止めるわけにはいかず、どうしても感情的に揺さぶられる。そんな日々を過ごしていると、「これはもう、法律相談じゃないよな…」と、内心ツッコミを入れたくなる。

司法書士を目指す方へ伝えたいこと

司法書士の試験に合格するためには、確かに法律の知識が必要だ。でも、現場に出たら求められるのは、むしろ人としての“耐久力”だと思う。知らないうちに他人の秘密を背負い、無意識に心がすり減っていく。その覚悟を持ってこの仕事に向き合ってほしい。

資格の勉強では教えてくれない「人間の重さ」

テキストに書かれているのは条文や判例ばかり。でも現場では、泣きながら語る依頼者や、誰にも言えない過去を吐き出す人たちが待っている。法律は正しくても、感情は割り切れない。それに対応するには、ただの“知識”では到底足りない。

正解のない相談を抱えてしまう覚悟

「これはこうした方がいいですよ」という答えが出せない案件は山ほどある。「どちらを選んでも誰かが傷つく」場面では、こちらも辛い。でも、誰かがその判断をサポートしないと前に進まない。それが司法書士という仕事の現実でもある。

“知識”より“耐性”が求められるときがある

相手の感情に引きずられず、でも冷たくもなりすぎず、そのバランスを取る力こそが大事だと思う。目の前の人がどれだけ取り乱しても、自分の軸を持ち続けられるか。そんな“耐性”が、この仕事には必要だ。

割り切りと逃げ道をつくることの重要性

すべてを真面目に受け止めすぎると、ほんとうに潰れてしまう。だからといって、いい加減な態度も取れない。その中間を探りながら、自分なりの“逃げ方”を見つけていくしかない。私にとっては、それが今のところ「愚痴を書くこと」かもしれない。

全部真面目に受け止めすぎると壊れる

「誰かの力になりたい」という気持ちは大切。でも、それが自分を壊してしまっては元も子もない。真面目な人ほど抱え込みやすいこの仕事では、自分を守ることも立派な仕事の一部だと自覚してほしい。

「それは弁護士さんに…」と逃げる勇気

ときには「そこまでの内容は弁護士にご相談ください」と線を引くことも必要。それが冷たい対応だと感じる人もいるかもしれない。でも、すべてを受け止められるわけじゃない。それを自覚しておくことが、長く続けるためのコツでもある。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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