資格があれば何とかなると思ってた
「資格さえ取れば食える」と思っていた過去の自分へ
司法書士という資格を目指していた頃、私は「資格さえ取れば人生なんとかなる」と本気で信じていた。実際、あの頃は目の前の試験に合格することが唯一の目標だったし、資格の先にある“リアル”について考える余裕なんてなかった。ところが、現実はそんなに甘くなかったのだ。
資格取得後に感じた「達成感」の落とし穴
試験合格の通知を受け取った日。あの瞬間の達成感は確かに格別だった。でも、それと引き換えに「これからどうするのか」という不安が、一気に襲ってきた。正直、資格を持っていても、何も始まっていないという現実を突きつけられた気がした。
開業すれば客は来るという誤解
資格があれば自然と依頼が舞い込むと思っていたが、そんなうまい話はない。地方で開業した私は、チラシを撒いても、ホームページを作っても、電話一本鳴らない日が続いた。「資格だけじゃ飯は食えんぞ」と先輩に言われた言葉が、身にしみて理解できた。
集客のスキルが必要だと気づいた瞬間
結局、業務の実務スキルよりも、まずは「知ってもらう力」、つまりマーケティング力がなければ、誰にも頼られないのだと痛感した。資格というのは、あくまで「最低限の入場券」に過ぎなかった。
精神的な負担は資格が軽くしてくれるわけじゃない
仕事が安定してきても、プレッシャーは減るどころか増える一方だった。ミスできない、期日に追われる、依頼者との関係性など、心がすり減る要因が山ほどある。これもまた、資格取得前には想像すらできなかった現実だった。
責任の重さに押し潰されそうになる日々
登記の一つ一つに、依頼者の人生がかかっていることもある。だからこそ、責任感は常に重くのしかかる。誰かに「ここ、間違ってましたよ」と言われるのが怖くて、夜に目が覚めることだってある。
「資格=安定」は幻想だった
司法書士として開業して10年以上経って思うのは、「安定」なんてどこにもない、ということ。むしろ、不安定な仕事をどうやって継続していくか、その力のほうがよほど大事だった。
顧客の信頼は一朝一夕では得られない
依頼者との信頼関係を築くには、時間も労力もかかる。特に地方では、地元の人とのつながりがモノを言う場面も多い。そこに辿り着くまで、地道な努力を続けるしかない。
若い人に伝えたい「資格取得後」の準備
もし今、司法書士を目指している人がいるなら、試験の勉強と同じくらい、「開業後のリアル」を知っておいてほしい。資格は“スタート地点”でしかない。むしろ、そこからが本当のスタートなのだ。
実務経験と現場感覚の重要性
もし可能なら、試験合格後すぐに独立するよりも、事務所勤務で実務を積んだ方がいい。実際の業務は教科書には書いていない「感覚」が求められるからだ。私も、実務経験ゼロで独立したことを何度も後悔した。
結論:「資格がある」だけでは通用しない世界
司法書士という仕事に夢や希望を持つことは悪くない。でも、現実は資格だけでは何ともならない場面が山ほどある。開業、営業、接客、ストレス耐性…すべて自分で背負う覚悟がなければ、潰れてしまう。だからこそ、資格を取るだけじゃなく、「生き抜く力」を育ててほしいと、今なら心から思う。