郵送で登記?思わぬ落とし穴にご注意を

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郵送で登記?思わぬ落とし穴にご注意を

郵送登記が楽に見える、その落とし穴とは

登記申請といえば、窓口でのやり取りが基本と思われがちですが、現場では郵送での登記申請が増えてきています。特に遠方の依頼者が多いと、郵送で済ませた方が効率的だと感じる場面もあるでしょう。けれども、実務を重ねるほどに「これは危ない」と思うことも多くなります。私のような地方でやっている司法書士にとって、郵送は助かる反面、リスクの塊でもあるのです。

「書類送るだけで終わる」なんて幻想

郵送登記を軽く見ていた時期が私にもありました。依頼者から必要書類を送ってもらい、記入して返送するだけ。そう思っていた時期に、実印の押印が一部抜けていたり、委任状の記載が不完全だったりと、何度もやり直しを経験しました。「簡単に終わる」なんてのは幻想です。確認できる相手が目の前にいないというのは、こんなにも不安なのかと痛感しました。

依頼者との温度差がもたらす不安とリスク

郵送でのやりとりになると、依頼者とのコミュニケーションに温度差が出ます。「書類届きました。これで大丈夫ですよね?」という連絡がきたので確認すると、登記原因証明情報に記載すべき内容がまるっと抜けていたり…。依頼者にとっては「一回出したら終わり」でも、こちらは「これじゃ法務局に蹴られるぞ」と青くなることもしばしば。正直、胃に悪いです。

郵送でしか対応できない現実もある

郵送登記がすべて悪いわけではありません。遠方の依頼者や、体調面で来所が難しい方、高齢の相続人が各地に散らばっているケースなどでは、郵送でしか対応できない状況もあります。だからこそ、「郵送=危険」と決めつけるのではなく、適切に使い分ける意識が大切なのです。

遠方の依頼者とのやりとりに救われた経験

以前、北海道にいる依頼者の相続登記を担当したとき、全員に来てもらうのは現実的ではありませんでした。結局、全員と郵送でやりとりすることになりましたが、丁寧な説明書を同封し、電話で一人ずつ確認を取りながら進めた結果、スムーズに申請までたどり着けたのです。郵送でも、工夫すれば十分に仕事はできると実感した出来事でした。

郵送の利便性を否定しきれない理由

正直、こちらの事務所も少人数で回しているため、郵送である程度完結する業務は助かるというのが本音です。来所の予約対応やお茶出し、雑談などにかかる時間がない分、作業に集中できます。ただし、それが「ミスの温床」にもなりうるので、常にピリピリした緊張感と背中合わせなのです。

書類不備の恐怖:戻ってくるのはミスだけじゃない

郵送登記で一番怖いのは、「申請ミスに気づけないこと」です。窓口ならその場で訂正できる内容も、郵送ではタイムラグが発生します。しかも、不備のある書類が戻ってくるまでの間、依頼者もこちらも宙ぶらりんな状態に。最悪、申請期限を過ぎてトラブルに発展することもありました。

印鑑の押し忘れ?そんな甘いもんじゃない

実印の押印漏れなんて可愛い方で、そもそも誤って別人の印鑑証明書を送ってきた依頼者がいました。事前に何度も確認していても、「うっかり」は発生するものです。そしてその「うっかり」の尻ぬぐいをするのは、最終的にこちらの責任。正直、なんでこんな緊張感を強いられながら報酬は据え置きなんだろうと、愚痴の一つもこぼしたくなります。

本当に怖いのは「読み違い」や「思い込み」

依頼者側の「こう書いてあったからそうした」「ネットにそう書いてあった」という誤解が、予想外の誤記を招きます。記載例を送っても、全く違う文言で返ってくることも珍しくありません。郵送は相互の「思い込みリスク」が大きくなりがちで、それが大きな落とし穴になります。

添付書類の抜け、誰が気づく?

本人確認書類の裏面のコピーがなかった、住民票にマイナンバーが載っていて受理されなかった…そんな添付書類まわりのミスも郵送ならではの悩みです。チェックシートを送っていても、完璧に守ってもらえるわけではない。誰も気づかなかった小さなミスが、登記全体を遅らせる。これが本当にしんどい。

誰も教えてくれない、郵送登記のストレス

正直に言えば、郵送登記は神経がすり減る仕事です。表面上は「書類を整えるだけ」の作業に見えますが、その実態は、想像以上に「確認」「修正」「再確認」の繰り返し。その度に依頼者との信頼関係も少しずつ揺らぎかねず、精神的な疲労感が蓄積していきます。

電話→確認→再送→訂正→また電話

一度ミスが発覚すると、電話、確認、書類の差し替え依頼、再送、そして訂正印。終わったと思ったらまた別の確認が必要になる…。一日一件の郵送登記でも、気づけば半日がつぶれている。時間も労力も、全く割に合わないと感じることすらあります。

精神的なコストは、報酬に含まれていない

郵送登記の手数料、報酬設定はたいてい対面と同じです。でも手間は1.5倍、ストレスは2倍。にもかかわらず、報酬は変わらない。依頼者には「郵送なら楽でしょう」と言われることもありますが、いやいや、こっちの胃袋が破れそうなんですと声を大にして言いたい。

それでも郵送を選ぶとき、最低限の防衛策

郵送登記を避けて通れない以上、リスクを少しでも減らす努力が必要です。大事なのは、チェック体制の徹底と、想定外を「想定内」にしておく準備です。それでも完璧は難しいですが、少なくとも被害を最小限に食い止めることは可能です。

チェックリストは「作って終わり」じゃない

登記用のチェックリストを作ってはいるものの、それを「送るだけ」にしていては意味がありません。依頼者に電話で説明する、印刷後に手書きで補足する、再確認のタイミングを設けるなど、使い方こそが肝心。手間ですが、ここを怠ると後で後悔するのはいつもこっちです。

事務員さんの存在が命綱になる瞬間

一人でやっていたら、たぶん郵送登記は続けられていないと思います。事務員さんの「これ抜けてませんか?」という一言が、何度トラブルを防いでくれたことか。日々の感謝は絶えませんが、それと同時に、「ミスの共有」「気づきの言語化」がいかに重要かを痛感しています。

ダブルチェック体制の意義

私が最終確認をしているつもりでも、抜けるときは抜ける。だからこそ、事務員さんとお互いにチェックをする体制が不可欠です。人はミスをする生き物です。それを前提にしておかないと、郵送登記は成立しないとすら思っています。

それでも起こる「ヒューマンエラー」

どんなに注意しても、どこかでヒューマンエラーは起きます。誤字脱字、日付のズレ、ファイルの取り違え…。完璧は無理です。だからこそ、リカバリーできるだけの「余白」をスケジュールにも気持ちにも持っておくことが、自分を守る方法なのだと日々実感しています。

若手司法書士へのメッセージ:郵送=効率ではない

最近では「オンライン申請と郵送で業務効率アップ」みたいな話も聞きます。でも、郵送登記においては、効率よりも「確実性」の方がずっと大事です。小さなミスが、大きな信用損失につながる。その怖さを忘れず、慎重に進めてほしいと心から願っています。

実務で求められるのは「安全な仕事」

依頼者からすれば、登記が無事完了すれば「よかった」で済みます。でも我々の立場からすると、そこに至るまでのプロセス一つ一つが大切で、「事故を起こさない仕事」が信頼に直結します。楽に見える道ほど、足元をすくわれやすいもの。それを忘れずにいてほしいです。

失敗事例から学ぶのが一番コスパがいい

失敗を経験した人の話を聞くのが、結局は一番学びになります。このコラムも、そんな誰かの教訓になればと思って書いています。「あの人も苦労してるんだ」と思ってもらえたら、少しでも郵送登記に対する心構えが変わるかもしれません。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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