頑張っても“すごい”とは言われない——普通の壁にぶつかる人へ

頑張っても“すごい”とは言われない——普通の壁にぶつかる人へ

「普通」と言われ続ける日々に、心がすり減っていく

司法書士として開業して20年近く。小さな町で地道に仕事をしていると、時々ふと「自分って何者なんだろう」と思う瞬間がある。誰かから評価されたいわけじゃない。でも、どれだけ頑張っても「すごい」とは言われず、「普通ですね」と流される。そんな日々が続くと、じわじわと心がすり減っていく。

成果を出しても「無難ですね」と言われる現実

たとえば、登記申請をミスなく完了させたとしても、「問題なかったですね」で終わる。いや、問題がなかったのは自分が神経をすり減らして準備したからだろう、と言いたくなる。けれど、それを声に出すのは野暮だと思って我慢してしまう。成果があっても、注目されるのは失敗のときばかり。だから、「普通でよかったです」という言葉が、皮肉にすら聞こえてしまう。

資格を取っても、周囲の評価は変わらない

司法書士の資格を取ったとき、少しは「すごいね」と言ってもらえるかと思った。実際、最初の数日はそういう反応もあった。でもそれはすぐに「仕事としては普通だよね」「司法書士って何するの?」という空気に変わる。努力して得た国家資格も、地元ではただの職業の一つに過ぎない。それが現実だ。

地元では「司法書士」も“ただの人”扱い

都会ならまだしも、地方では司法書士という職業がどういうものか、そもそも知られていないことも多い。「それって税理士さんと同じ?」「遺言書の人?」なんて聞かれることもしょっちゅうだ。誤解されることにも慣れたけれど、誇りを持ってやってる自分としては、ちょっとだけ胸が痛む。

努力の結果が見えないと、自分を責め始める

「普通」と言われ続けると、努力してきた自分の価値を疑い始める。あれだけ勉強したのに、必死に案件を回しているのに、誰からも特別視されないと、「自分の努力は間違ってたのか?」とすら思えてくる。成果は出してるはずなのに、手応えがない。それは、意外とつらいものだ。

比べる相手は、東京の大手事務所ばかり

SNSを開けば、バズってる司法書士や、YouTubeで人気の士業の投稿ばかりが目につく。自分とは別世界のようでいて、同じ資格を持っているというだけで比べてしまう。「あの人たちはすごい、自分は…」と卑屈になる。別に自分は有名になりたいわけじゃないのに、置いていかれているような気持ちになる。

事務所経営者=何でも屋=誰も褒めない

実際のところ、司法書士業務以外にもやることは山ほどある。請求書の処理、パソコンの不具合対応、掃除、備品の補充…事務員さんに頼めないことは全部自分でやる。でもそれを「経営者として当然」と片付けられてしまえば、どれだけ頑張っても評価されることはない。

誰のために頑張ってるのか、わからなくなる瞬間

「ありがとう」と言われる仕事ではある。でも、それが聞こえなくなる瞬間もある。時間に追われ、神経をすり減らし、それでも“普通”でいようと踏ん張ると、ふと「何のために頑張ってるんだろう」と立ち止まってしまう。

依頼人の「ありがとう」が聞こえないとき

登記が終わっても、「ふーん、じゃあこれで終わりですね」と言われて帰られると、心の中で「お疲れさま」とつぶやくしかない。感謝を求めてるわけじゃないけど、人としてのリアクションがあってもいいんじゃないかと思う。人間、承認欲求がないわけじゃない。

事務員には気を遣い、家庭では空気

事務員さんには変なプレッシャーを与えたくないから、愚痴も言えない。逆に気を遣う日々。家庭でも「今日はどうだった?」なんて聞かれることもなく、仕事の話をしようにも空気のように流される。自分がここにいる意味って何だろう?と、ふと寂しくなる。

それでも「普通」でいられる強さがある

そんな中でも、「今日も無事に終わった」と思える日がある。何も問題が起きない、それだけで十分すごい。普通でいること、継続していくことが、実はどれだけ大変なことか、身をもって知っている。

継続してるだけで、十分すごいという事実

毎日、書類を整え、期日を守り、ミスなく処理を終える。その当たり前を10年、20年と続けるのは、簡単なことじゃない。誰にも言われないけど、それって本当に「すごい」ことなんじゃないか。

地方の一人事務所で潰れずにやっているということ

営業も事務も実務も全部ひとり。プレッシャーもあるし、数字の不安も尽きない。それでも潰れずに続けているのは、自分なりの信念があるからだと思う。普通に見えるけど、普通でいるための努力を、誰よりしてきたつもりだ。

「すごい」と言われない仕事こそ、本当にすごい

世の中には、目立たないけど大事な仕事がある。司法書士もそのひとつ。「すごい」と言われなくても、毎日をきちんとやっている。その誠実さが、誰かの生活の土台になっている。そう思えるようになってから、少しだけ自分の仕事が誇らしくなった。

「普通」扱いされる司法書士が持つべき視点

評価されないことに落ち込むのではなく、自分の“軸”をどう持ち続けるか。それが司法書士という職業を続ける上での、ひとつの鍵だと思う。

成果より継続、評価より信頼

数字や評価に一喜一憂するのではなく、「信頼される人」であり続けること。依頼人から「またお願いしたい」と思ってもらえる存在。それが、結果として一番強いと最近感じている。

誰も見ていない努力が、最後に残る財産

誰にも評価されない努力、誰にも気づかれない工夫。それらが積み重なって、ようやく「信頼」になる。結局、一番すごいのは、「普通を続けている人」なのかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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