NOが言えない自分がイヤ…それでも人間関係を壊さずに断る方法

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NOが言えない自分がイヤ…それでも人間関係を壊さずに断る方法

「断れない」は職業病?司法書士としての苦悩

司法書士という仕事は、「人の相談に乗る」「困っている人の力になる」ことが前提にあります。だからこそ、依頼を断るという行為には強い罪悪感が伴います。「この人の役に立ちたい」と思う気持ちが裏目に出て、自分のキャパを超えても引き受けてしまう…。気づけば、予定が詰まりに詰まって身動きが取れない。そんな日々が続くと、「またやってしまった」と自己嫌悪に陥ります。いや、正直に言えば、もう慣れすぎて反省することすら忘れてきてるのが現実です。

依頼を断ると「冷たい人」になる気がしてしまう

相手からの相談が、たとえば「明日までに登記できませんか?」という無茶なものであっても、「今は無理です」と即答するのは気が引けます。相談者の切実な事情が透けて見えると、「ここで断ったら、この人はどうなるんだろう」と想像してしまうんですよね。しかも地方だと口コミが命。冷たい対応が変な形で広がったら…という不安もあります。

法律家としての責任感が、優しさを邪魔する

依頼者のためを思う気持ちはもちろん大事。でも、「受けた以上はしっかりやらなければ」という責任感が強すぎると、自分の心や時間の余裕を食いつぶしてしまいます。過去に「急ぎで!」と言われて無理に引き受けた案件で、結局期日に間に合わず、感謝されるどころかクレームになったこともありました。あのとき、「できません」と言えなかった自分が悔しかったです。

相手の事情がわかると、つい引き受けてしまう

「父が亡くなって急いで相続手続きをしたいんです」「明日が期限で…」といった話を聞かされると、こっちも感情が動いてしまうんですよね。特に高齢の依頼者だと、「ああ、もうこの人に残された時間は少ないのかも」と思ってしまって、「よし、やるか…」と口走ってる。冷静に考えたら完全にキャパオーバーなんですけど。

「つい受けてしまった案件」が積もり積もって…

断れないまま案件を重ねていくと、やがて自分の首を締めることになります。私は一人事務員と細々とやっているので、業務をさばくにも限界があります。でも、「これぐらいなら…」「今日中に書類だけ見ればいいか」と軽く考えて受けた結果、時間も気力も奪われ、他の仕事が遅れていく。そしてそのしわ寄せが、誰にも頼れない自分に返ってくるわけです。

休日ゼロ、夜間対応、報酬トラブル

たとえば先月、日曜に「どうしても会ってほしい」と言われて面談した依頼者がいました。夜の9時、資料もまとまっていない。それでも話を聞いて対応して、なんとか申請を間に合わせた。でも、終わったあとに「あれ、報酬の話ってしてたっけ?」と気づいて青ざめる。言いづらくて後回しにしてたら、結局半額以下で収まってしまった…。正直、疲労感だけが残りました。

断らなかった自分を後悔しても、後の祭り

「こんなに消耗するなら、最初から断っておけばよかった」と何度も思いました。でも、断ったあとの後悔と違って、受けたあとの後悔って、どこにも吐き出せないんですよね。結果を出してしまった以上、「やらなきゃよかった」とは言えない。だからまた引き受ける…このループが一番つらいです。

断れないことで失うもの

何かを断らないことで得られる安心感よりも、失っているものの方がずっと多い。少なくとも私にとっては、仕事の質、健康、そして人間関係…いろんなものが静かにすり減っていきました。「人にやさしく、自分にもっとやさしく」なんて言葉は、実際の現場ではなかなか通用しません。

事務員との関係もギクシャクしがちに

事務員さんとのやり取りも、断れない案件を増やせば当然ピリつきます。こちらは「申し訳ないな」と思いながら仕事を回しているつもりでも、事務員からすれば「また無茶な案件を持ってきた」と感じるのも当然です。信頼関係がゆるくなってしまうと、仕事そのものがスムーズに進まなくなります。

「またそんな案件受けてきたんですか…?」

このひと言、言われた時のショックは地味に効きました。「また」ってなんだ、「受けてきたんですか」って…。こっちは気を使ってやってるつもりだったのに、実はチームの士気を下げていたことに気づかされました。断れないのは優しさじゃなくて、もはや自己管理能力の欠如かもしれません。

家族との時間、自分の時間がすり減っていく

平日夜も土日も仕事が入り込んでくると、家族と食卓を囲む時間すらままなりません。子どもが寝静まってから帰宅し、朝はバタバタ出勤。これで「うちの仕事は自由がきく」とか言ってるんだから、我ながらよくわかりません。ふとした瞬間に「今、何のために働いてるんだろう」と虚しくなることもあります。

「家族サービスも後回し」が習慣化していく

「今週末だけ我慢して」「この案件が終わったら」…そんな言い訳を続けていたら、いつのまにか“家族より仕事”が当たり前になっていました。先日、子どもに「また仕事?」と言われて、胸がズキンとしました。断れなかったツケを、家族に払わせていたのかもしれません。

「うまく断る力」を身につけるには

断ることは悪ではなく、自分と相手を守るための行動です。感情に流されてばかりでは、結局誰のためにもならない。最近ようやくそのことに気づきました。とはいえ、急には変われないのが人間。まずは“断り方”を学ぶところから始めるのが現実的です。

そもそも“断る”の定義を変えてみる

「断る=冷たい」「迷惑をかける」と思い込んでいたけれど、今は違う捉え方をするようにしています。相手のために責任を持ってNOと言うことも、誠実な対応の一つです。中途半端なYesより、しっかりしたNoのほうが相手の信頼につながることもあるんです。

冷たいのではなく、「誠実な判断」ととらえる

依頼者から「わかりました、他を探してみます」と言われたとき、少し前なら罪悪感でいっぱいになっていたけれど、今は「きちんとお断りできた」と思えるようになりました。無理なスケジュールで引き受けて迷惑をかけるより、誠実に線引きしたほうが長期的には関係が良くなるんだと、経験を通じて理解できるようになってきました。

準備しておきたい「断りの言葉」のテンプレ

「断る力」は感情論だけじゃ身につきません。具体的な言葉のストックがあると、いざというときに助かります。「現在の案件状況から考えると、●●日までに対応が難しい状況です」とか、「お力になりたい気持ちはあるのですが、品質を保てない可能性があるため今回はお断りさせていただきます」といったフレーズを用意しておくと、心が少し軽くなります。

「今は他の案件でいっぱいです」だけでは弱い

「今は忙しいので…」といった曖昧な断り方は、相手に期待を残してしまいます。すると、また後日「そろそろ空きましたか?」と連絡が来てしまう。そうなると結局また断れなくなる。だからこそ、“断るときは断ち切る”覚悟も必要だと感じています。

理由より“納得感”を意識して伝える

断るときに大切なのは、相手に納得してもらうこと。「都合が悪い」ではなく、「今回引き受けると他の方にも迷惑がかかってしまうため」といった全体視点を添えると、相手も理解を示してくれやすくなります。自分を守るためだけでなく、他者への配慮として断る。そう考えると、少しだけ断ることが怖くなくなってきました。

断ることは自分と相手を守ること

「断る」という選択は、必ずしも相手を突き放すことではありません。むしろ、いい加減に引き受けて後からトラブルになる方が、相手にとっても不幸です。自分の限界を知り、その中で最善を尽くす。それが、誠実な専門家としての姿勢だと思います。

中途半端に引き受けることこそ失礼かもしれない

一度だけ、他の士業の方から「それ、あなたの仕事じゃなくない?」と軽く言われたことがあります。その時はムッとしたんですが、今になって思えば、的確なアドバイスでした。専門外のことまでなんとなく引き受けて、結果として相手の期待に応えられなかったら…それこそ不誠実です。

「誰かのYesのためのNo」であると信じる

無理に全員の依頼を引き受けようとするより、自分が本当に力を発揮できる依頼に集中したほうが、結果的には多くの人の役に立てると思うようになりました。誰かのYesのためには、別の誰かにはNoと言う必要がある。それを自分に許してあげることが、長くこの仕事を続ける鍵になるのかもしれません。

まとめ:断れない優しさを、誠実な強さに変える

優しさだけでは、この仕事は続けられません。断る勇気もまた、依頼者と自分自身のために必要な力です。「断れない自分が情けない」と感じていた日々を越えて、今は「誠実に線を引く」ことを覚え始めました。少しずつでいい、自分のペースで変わっていけたら。それが、司法書士として、そしてひとりの人間としての健やかな在り方だと思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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