何も期待しないと、ちょっとだけ生きやすい

何も期待しないと、ちょっとだけ生きやすい

期待するからしんどくなる、司法書士という仕事

司法書士という仕事を長くやっていると、「こうしてくれるだろう」「これは通じるはずだ」と、ついつい人に期待してしまいます。でも、その期待は、思ったほど報われません。登記の依頼を受けても書類が揃ってこなかったり、期限があるのに後回しにされたり。自分が丁寧に説明したつもりでも、「そんな話は聞いてません」と言われる始末。自分の常識は相手にとっての非常識。それを思い知らされる毎日です。結局、期待したぶんだけ腹が立つ。だったら最初から、期待しないでいたほうが、まだ心は穏やかです。

「これぐらいわかってくれるだろう」は通じない

長年司法書士をやっていても、「これくらいは説明しなくても伝わるだろう」と思ってしまう瞬間があります。でも、その「これくらい」が一番危ない。たとえば、登記申請に必要な添付書類。「住民票ぐらい持ってきてくれるだろう」と思っていたら、当日「えっ?そんなの必要なんですか?」。しかも、その声がなぜかちょっと怒ってる。いやいや、怒りたいのはこっちだよと思いつつ、説明不足だったのかもしれないと自己嫌悪。この繰り返しが日常です。

お客さんにも、役所にも、同業者にも

期待が裏切られるのは、何も依頼人だけじゃありません。役所に提出した書類が、謎の理由で差し戻されたり、同業者にお願いした補助業務で、こちらの想定と違う結果が返ってきたり。「司法書士同士だから分かるだろう」という甘えが裏目に出る。信頼はしてるけど、期待はしない。そういう線引きが、精神衛生上とても大事だと最近つくづく思います。

「普通こうでしょ?」は、通用しない現実

「普通はこうするよね」とか、「常識的に考えて〜」という言葉ほど、実務ではあてにならないものはありません。相手の常識は自分の非常識。そう割り切っておいた方がラクです。「そんなことも知らないのか」と思う代わりに、「知らないのが前提」と思って対応すると、無駄なイライラが減ります。期待をゼロにするだけで、心のざわつきがかなり軽減されます。

事務員さんにだって期待は禁物

一人で事務所を回しているわけではなく、うちには事務員さんがひとりいます。長く一緒にやってくれてはいますが、それでも「言わなくてもやってくれるだろう」というのは危険。むしろ、そういう期待を持つと関係がギクシャクします。自分が考える「当たり前」を押し付けるのではなく、伝え続ける努力が必要だと痛感しています。

思い通りに動いてくれるなんて幻想だった

最初の頃は、「このくらいは気づいてやってくれるかな」と思っていたことが、ことごとくスルーされていました。「まだ印紙貼ってないんですか?」「コピーは先に取ってもらえると助かるんですけど…」と言いたい気持ちをグッとこらえる毎日。でも、冷静に考えれば、こちらが勝手に期待していた話なんですよね。相手を責める前に、自分の伝え方を見直すようになりました。

でも、悪い人じゃないんです。ただ……ね

もちろん事務員さんも一生懸命やってくれているし、人柄も穏やかで悪い人ではありません。でも、価値観の違いや、ペースの違いがあるのも事実。こちらが「今すぐ対応して!」と思ってるときに、電話中に笑ってたりすると、なんだか置いてけぼりを食らった気持ちになります。そういうとき、グッとこらえるためにも、「期待しない」が心のブレーキになります。

期待しないって、自分を守るってことかもしれない

他人に何かを期待しないことで、結果的に自分を守ることができる。最近そう思うようになりました。「こうしてほしい」「わかってほしい」と思ってしまうと、その思いがかなわなかったとき、自分が傷つく。だったら最初から「何も求めてない」方がラクです。ちょっと寂しいけれど、そのほうが平和にやっていける気がします。

勝手に期待して勝手に傷ついてた自分

たとえば、登記の相談で何度もやり取りして、こちらがかなり手を動かしたあとに「やっぱり他の事務所に頼みます」と言われたとき。昔の自分ならガックリして、「あんなに親身になったのに…」と落ち込んでいました。でも最近は、「ああ、そういうこともあるよね」で済ませられるようになってきました。期待しなければ、傷も浅く済む。これは間違いないと思います。

「まぁ、そうだよね」と先に思っておく心構え

失望しないために、最初から「期待しない」のが一番です。打ち合わせの時間通りに来ないかもしれない、電話折り返してこないかもしれない、書類間違ってるかもしれない。そう思っておくと、いざそうなっても「やっぱりな」と冷静に対処できる。全部が全部そうとは限りませんが、「まぁ、そうだよね」で受け止めると、気持ちの波が小さくて済みます。

期待されるのが怖くて、人との距離を取っている

逆に、自分が誰かから期待されることがプレッシャーになることもあります。仕事でも、プライベートでも。「あなたにお願いしたい」と言われると光栄な反面、「ちゃんと応えなきゃ」と気負ってしまう。期待って、する方もしんどいけど、される方もしんどい。だから私は、なるべく人との距離を保とうとするようになりました。

結局、裏切られるのが怖いだけかもしれない

誰かに近づいて、仲良くなって、期待して、結果として裏切られる。そのパターンを何度か経験してしまうと、もう怖くなってしまいます。だから、必要以上に人と深く関わらないようにする。「友達がいない」とか「寂しい」と言われればそうかもしれないけど、それよりも「失望したくない」という気持ちの方が強い。弱いのかもしれません。でも、これが自分の防衛手段なんだと思っています。

期待しないけど、信じたい気持ちはある

「期待しない」と言いながらも、心のどこかで「この人なら大丈夫かも」と思いたい気持ちも、正直あります。だけど、信じすぎるとまた同じことになる。だから、あえて信じない。でも、完全に心を閉ざしたくもない。このバランスが難しい。それでも、少しずつ、自分なりに信じられる人を見つけていけたら、と思っています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。