感謝されることなんて、そもそも期待してない
司法書士という仕事は、派手さも華やかさもありません。契約書を確認して登記申請をして、電話とメールをひたすらさばいて、依頼人が滞りなく不動産を買ったり会社を設立できたりすれば、それで仕事は完了です。でも、その過程で「ありがとう」と言われることは、正直ほとんどありません。あっても、あいさつのような形式的なもの。だから、感謝されることを前提にしていたら、精神的にやられてしまいます。
「ありがとう」がなくても、登記は進む
登記って、感謝されにくい業務の代表例かもしれません。トラブルが起きなければ誰も気にしないし、ミスがあれば即クレーム。以前、あるクライアントに完璧なスケジュールで登記を終えたにも関わらず、「え、もう終わったの？」と一言。それだけ。こちらは調整に何日も費やしてたのに、報われない気持ちになりました。それでも、登記は粛々と進めるしかないんです。誰に評価されなくても。
仕事に見返りを求めたら終わり？そんなの理想論
「見返りを求めるな」って、たまに耳にしますが、それができたら苦労しませんよ。仕事なんだから、お金がもらえればいい。そう割り切ろうと何度も思ってきました。でも、心は勝手に「頑張った自分」にご褒美を期待してしまう。わかってるけど、それが人間じゃないですか。司法書士も一人の人間。むしろ孤独な分、心の拠り所が少ないから、なおさら小さな承認が欲しくなる。
黙っていても、誰も気づいてくれない
事務所でひとり、書類を黙々と作っていると、ふと「誰のためにやってるんだろう」と思うことがあります。ミスのないよう何度も見直して、郵送のタイミングも計算して、それでも「当然でしょ？」と受け取られる。努力を声に出さなければ、誰も気づいてくれません。だけど、声に出すと「面倒くさいやつ」扱い。理不尽な話ですが、そんな現実のなかで生きています。
机に向かって一日が終わるときのむなしさ
仕事が片付き、時計を見たらもう19時。ふと窓の外を見ても、誰もいない。そんなとき、なんともいえない空虚さに襲われます。今日は誰にも感謝されなかったし、会話らしい会話もなかった。黙々とこなしただけ。でも、やらなければ誰かが困る。だから、やる。だけど、虚しい。その繰り返しに慣れてしまうと、感情がどんどん摩耗していくように感じます。
事務員さんの気遣いが救いになる日もある
そんな日々のなかで、唯一ホッとするのが事務員さんの何気ない一言。「お疲れさまでした」とか、「今日は大変でしたね」のような些細な言葉が、心に染みるんです。おそらく本人は深く考えず言ってくれているんでしょう。でも、それがあるのとないのとでは、全然違う。たった一言でも、人は支えられるというのを、最近しみじみ感じます。
報酬はあっても、承認はない
お金はもらってる。ちゃんと請求書も送ってるし、報酬も頂いている。なのに、心はどこか満たされない。これは贅沢なんでしょうか？司法書士の仕事は、クライアントにとって「通過点」でしかない場合が多く、感謝される機会が本当に少ない。報酬をもらっても、「よくやったね」と言ってくれる人がいないと、どこか空虚に感じることがあります。
「プロなんだから当然でしょ」と言われる苦しさ
あるクライアントに言われた言葉が今でも頭に残っています。「プロなんだから、ちゃんとやって当然でしょ？」確かにその通りです。私も手を抜いたわけではないし、プロとして当たり前のことをしたまで。でも、その一言で、どれだけ積み重ねてきた努力がスルーされたかを思い知らされました。プロとはいえ、人間。無視されるのは、やはりきついです。
依頼人の一言がずっと引っかかる
過去に、書類提出が遅れたとき、「だから司法書士って信用できないんだよね」と言われたことがあります。もちろん原因は相手側の不備でした。でも、そのひと言が、数年たった今でも忘れられない。たった一言で、ここまで傷つくのかと自分でも驚いたほどです。だからこそ、自分が発する言葉にも気をつけるようになりました。誰かに同じ思いをさせたくないから。
他人の期待に応えるって、報われないことも多い
「この日までにお願い」と言われて、無理なスケジュールでも何とか間に合わせてきました。でも、それが当たり前になると、「次も同じ感じで」と頼まれる。努力は一度報われないと、永遠に報われないサイクルに入るんだなと実感しています。見返りを求めずにやるしかない。でも、どこかで「これって本当に正しいんだろうか？」と、ふと立ち止まることもあります。
じゃあ、なぜ辞めないのか
そんなにしんどいなら辞めればいいじゃないかと、何度も自分に言い聞かせました。でも、辞められないんですよ。生活もあるし、今さら別のことを始める勇気もない。というより、辞めたあとに何が残るのか想像できない。惰性と責任感と、ほんの少しの誇り。それが今の私を支えているんです。
感謝がなくても、自分の中に答えを持つ
最終的には、自分が自分をどう評価するかしかないんだと思います。誰にも感謝されなくても、「今日はちゃんとやった」と自分で思えたなら、それでよしとする。そうしないと、精神がもたない。自分で自分を褒めるというのは、ちょっと空しいけれど、大事な技術です。
「俺しかできない」なんて思ってないけど
この仕事、別に私じゃなくてもできるとは思っています。でも、私がやっている意味はあると思いたい。それは自己満足かもしれないけれど、誰かがやらないといけない仕事を、誰かの代わりにやっている。そう考えることで、少しだけ心が軽くなります。
誇りよりも、しがらみの方が原動力かもしれない
「誇りを持って仕事してますか？」と聞かれると、正直あいまいです。それよりも、「ここで投げ出したら全部崩れる」というしがらみが原動力になっている気がします。それってポジティブではないけれど、現実的な理由です。誇りよりもしがらみの方が人を動かす――そんな日々を生きています。
