婚活アプリと登記簿謄本、どっちが難しい?

婚活アプリと登記簿謄本、どっちが難しい?

婚活アプリの操作に四苦八苦する45歳司法書士

登記簿謄本の読み取りや申請書類の作成なら、いくらでもやれる自信はある。しかし、スマホ片手に婚活アプリのプロフィールをいじっていると、自分がまるで“時代遅れのおじさん”であることを痛感する。アプリを開くたびに出てくる「いいね」や「マッチング」の意味がいまいちピンと来ない。事務員の若い子に聞こうにも、そんなことを聞けるわけがない。司法書士の仕事ではどんな複雑な登記もやり切ってきたはずなのに、婚活アプリの前ではまるで初心者。これが「社会とのズレ」ってやつか、と苦笑いしか出てこない。

プロフィール写真ひとつで人生が変わる?

婚活アプリではまず「写真が命」と言われる。でも、自撮りなんてやったこともないし、鏡に向かって笑顔を作ることすらぎこちない。実際、スマホのインカメを起動した瞬間、「うわ、誰この疲れた中年男」と自分で驚いた。仕事帰りにスーツ姿で撮った写真も試したけど、まるで登記完了報告のLINEスタンプみたいで全然“恋愛感”がない。結局、過去の旅行写真を使ってみたけど、「何年前の写真ですか?」と聞かれて撃沈。たかが写真、されど写真。証明書じゃないんだから…とは思いつつ、ここでつまずくと何も始まらない。

自撮りが下手な自分に突きつけられる現実

何度撮っても表情が固い。スマホのタイマー機能で撮っても、顔がこわばってて“証明写真”感が拭えない。ネットで「モテる自撮りのコツ」なんて検索しては試すけど、どれもしっくりこない。背景を公園にしたら「不審者感」、室内にしたら「生活感全開」。そもそも、普段から自分の顔を見ることもないのに、いきなり“映える写真”なんて撮れるはずがないのだ。そう気づいたとき、なんだか涙が出そうになった。

誰か、自然体で写る方法を教えてくれ

自然体で撮れと言われても、それができたら苦労しない。鏡の前で笑顔を作ってみるが、数秒後には「これはないな」と削除する日々。知人に頼もうかとも思ったけど、「婚活写真を撮ってくれ」と言い出す勇気が出ない。結局、スマホのアルバムには“選ばれなかった俺”が大量に溜まっていく。いつか、この苦労が報われる日が来るのだろうか。いや、来てほしい。

メッセージのやり取りが登記以上に緊張する

マッチングできたとして、次に待っているのは“メッセージ”のやり取り。ここがまた登記よりも難しい。登記なら決められた書式と手順があるが、恋愛には“正解”がない。「こんにちは」から始めたら素っ気ないと言われ、「はじめまして、◯◯です」と丁寧に書いたら事務的すぎると返ってこない。どんなテンションで書けばいいのか、毎回悩む。登記の補正通知のほうがまだ優しい。

敬語かタメ口か、文面で迷子になる日々

「初対面の女性相手だから敬語が基本」と思って送ったら、「もっとフランクに話したいです」と言われ、次は少し砕けた口調にしたら「軽い印象ですね」と言われる。まるで正解のない試験問題を解いている気分。これが恋愛か…? こんなふうに悩むのも久しぶりすぎて、逆に自分が少しだけ“人間”に戻っている気がした。

登記申請書より難しい“いい感じの返信”

司法書士として、補正を避ける完璧な申請書を作るのが当たり前。でも、恋愛のメッセージには“補正ルール”がないからこそ怖い。「楽しかったです。また話しましょう」この一文にどれだけ意味が込められているのか、相手がどう受け取るのかが分からない。結局、翌朝になっても返事が来ないと「何か変なこと言ったかな…」と自己嫌悪に陥る。文字のやりとりが、こんなにも心をえぐるとは。

登記簿謄本なら理解できるのに、婚活相手の心は読めない

登記簿謄本には“ルール”がある。所有権、抵当権、住所氏名、すべてが明確に記載されていて、読めば大体のことは分かる。でも、人の心にはそんな“目録”が存在しない。相手がどう思っているか、次にどう動くか、まったく読めない。仕事では百戦錬磨でも、恋愛では新米以下。自分の無力さを改めて思い知らされる。

登記なら根拠法令があるのに

登記は民法、不動産登記法、商業登記規則など、すべてにルールが存在する。疑問があれば法務省の通達や判例を調べればいい。しかし恋愛には通達もないし、先例も役に立たない。「前の女性にはこれでうまくいった」という方法が、次には通用しない。そんな不安定さが怖くて、つい“無難な返信”を選んでしまい、結果として関係が深まらない。法律でがんじがらめの世界に慣れすぎたせいかもしれない。

恋愛には条文も正解もないという恐怖

普段、条文を武器に戦っている身としては、恋愛の“自由すぎる世界”はどうにも居心地が悪い。たとえば「好きなタイプは?」と聞かれたとき、「誠実な人」と答えるべきか、「面白い人」と答えるべきか、それすら分からない。どちらを選んでも正解かもしれないし、不正解かもしれない。つまり、“予測不可能”なのだ。そんな曖昧な世界に足を踏み入れている自分が、時々とても滑稽に思える。

法務局と違って、相手の都合が見えない

法務局は受付時間が決まっているし、補正もすぐに通知が来る。でも婚活アプリでは、相手のログイン時間も、返信のペースもバラバラで、まったく読めない。既読スルーなのか、単に忙しいだけなのか、それすら判断がつかない。これが相手の“自由”というものなのだろうけれど、それに慣れていない自分はいつもソワソワしている。

“未読スルー”の無音の圧力

一番つらいのは、未読スルーだ。こちらが思い切って送ったメッセージが、何日経っても開封されない。その間、ずっと「何かまずかったか?」「送るタイミングが悪かったか?」と自問自答してしまう。登記であれば、“提出日から3日以内に処理されます”と決まっている。だけど婚活においては、沈黙こそが答えのこともある。その“答え”が、あまりにも冷たくて、胸が痛くなる。

独身司法書士のリアルな日常

独身、45歳、地方の司法書士。そんな自分が婚活アプリに挑むこと自体、無謀なのかもしれない。それでも、仕事と自宅を往復するだけの日々に少しだけ風を入れたくて、スマホの中に希望を探している。仕事が終わってアプリを開くとき、ほんの少しだけ“誰かと繋がれるかもしれない”という希望がある。その希望だけを頼りに、また明日も自撮りを撮り直す。

仕事の合間の婚活は想像以上に過酷

昼は相談対応と書類作成、夕方には法務局へ。そして夜、自宅に戻ってからスマホを開いて婚活。疲れているはずなのに、なぜかその時間だけは目が冴える。うまくいくかどうかもわからない相手とのやりとりに、こんなにエネルギーを使っている自分を、少しだけ誇りに思う。でも同時に、「こんなことで消耗してていいのか」と思う日もある。

夜の面談予約より、週末のデートの方が緊張する

週末に女性と会う予定が入ると、まるで登記完了の電話連絡のように緊張する。何を着ていけばいいか、どの話題を振ればいいか、頭の中がぐるぐるする。司法書士としての打ち合わせよりも、プライベートな顔を出すほうがよっぽど難しい。それでも、誰かと笑い合える時間があるなら、もう少しがんばってみようと思う。

誰にも言えない“失敗談”が山のようにある

うまくいかなかったマッチング、すれ違った会話、スルーされたメッセージ。数えきれない失敗がある。でも、それらを一つひとつ噛みしめながら、自分なりの答えを探している。登記簿謄本と違って、人生には“正解の書式”がない。でも、誰かにとっての“価値ある存在”になるために、今日もまたスマホを開く。

登記ミスよりも、既読スルーが刺さる

登記の補正通知は、ある意味ありがたい。どこが間違っていたかを明示してくれるからだ。でも恋愛では、黙って去られるだけで、何がいけなかったのかすら分からない。その不透明さが、静かに、でも確実に自信を削っていく。それでも、また立ち上がって向き合う。そんな自分を、少しだけ肯定したくなる瞬間もある。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。