“代わりがいない”と言われる重さに、今日も潰れそうになる

“代わりがいない”と言われる重さに、今日も潰れそうになる

「代わりがいない」と言われることの光と影

「先生がいないとこの手続き、進まないんですよ」。そんな言葉をかけられるたび、心のどこかが誇らしくなる反面、胸の奥ではズンと重たいものが沈みます。代わりがいないというのは、信頼の証かもしれない。でもそれは同時に、逃げ場のない責任を意味しています。失敗は許されず、倒れることすらできない。誰かのために頑張ることが美徳だと教えられてきたけれど、それが限界を超えても頑張り続ける理由にはなりません。今日も私は、肩にのしかかる「代わりのいない重み」とともに、静かにキーボードを打ち続けています。

頼られることの誇らしさと、その裏にあるプレッシャー

最初のうちは、誰かに頼られるというのが嬉しくてたまりませんでした。特に、開業して間もない頃は「先生にお願いしたい」と言われるだけで舞い上がっていました。でも、年月が経ち、その頼りにされる範囲が広がっていくにつれて、徐々にプレッシャーが勝るようになっていきました。ミスができない状況、相談されるのは常に“自分だけ”、そして手続きが滞ればすべて自分の責任。気づけば、誇らしさがストレスにすり替わっていました。

誰にも引き継げない仕事が増えていく現実

引き継ぎが難しい仕事が多いのは、この業界の宿命かもしれません。依頼者との信頼関係、案件の微妙な背景、関係各所の“空気感”まで含めて仕事が成り立っている。だからこそ、「マニュアル化すれば済む話じゃない」と何度も思い知らされます。気づけば、事務員にも説明しきれない仕事が山のように溜まり、結果すべて自分でやるしかない状況に。代わりがいない、というより、代われるようにしてこなかった。それが現実です。

司法書士という職業の“孤独な特性”

司法書士は“法律の専門家”と呼ばれながらも、組織に属することが少なく、ほとんどの人が一人で仕事をしています。だからこそ、孤独に強くならざるを得ません。そして、強がっているうちに、孤独が染みついてしまう。気軽に「これどう思う?」と相談できる相手がいないことは、想像以上にきついものです。責任感と孤独がセットでやってくる、それがこの仕事の宿命だと、今では感じています。

法律職なのに、誰にも相談できない矛盾

「法律の専門家」として見られるからこそ、周囲からも「先生が一番詳しいんでしょ」と言われ、逆に相談しづらくなる場面があります。恥ずかしながら、私自身も分からないことはたくさんあります。でもそれを素直に言えない雰囲気が、業界全体にある。聞ける人も少なく、仮にいたとしても、距離があって相談しにくい。司法書士が“相談できない職業”になってしまっている矛盾に、私は日々悩まされています。

周囲に専門職がいない地方の壁

地方で開業していると、横のつながりがそもそも少ない。周囲に弁護士や税理士がいても、畑が違うし、気軽に話せる関係でもない。研修会や勉強会に行こうにも、距離と時間とお金の壁がある。結果、悩みは一人で抱え込むしかなくなります。「誰かと話したい」と思っても、その“誰か”が近くにいない。都会で活動している司法書士が少しうらやましく感じることもあります。

「間違えたら終わり」のプレッシャー

司法書士の仕事は、時として一つのミスが大きな損害に直結します。特に登記や相続案件では、「先生がそう言ったから」と依頼者に言われた瞬間に、自分の判断の重みが突き刺さる。過去に一度、細かい書類の見落としで補正が入り、依頼者に迷惑をかけたことがありました。その夜は眠れませんでした。「次はない」と心に刻みながら、さらに神経質になっていく自分がいます。

一人事務所の現実と限界

現在の私の事務所には、事務員が一人だけ。非常に真面目で頑張ってくれていますが、当然ながらすべての業務を任せるのは難しい。私自身が細部を確認しなければならない場面が多く、結局は一人で処理する割合が多くなってしまう。効率化も限界がある中、業務は積み重なり、休日出勤や残業が常態化していきます。気づけば“忙しい”が当たり前になっていました。

事務員さん一人じゃ回らないけど、雇えない

もう一人雇いたいと思うことも何度もありました。でも、地方の司法書士事務所の現実として、収入は安定せず、月によっては赤字ギリギリという時もあります。将来の保証がない中で人件費を増やすのは怖い。結局、「今いる人でどうにか回すしかない」となり、業務量は減らずにストレスだけが増えていきます。誰かに頼りたいのに、頼れない。そんなジレンマを毎日感じています。

結局、全部自分がやるしかない

「これは先生じゃないと分からないので…」という場面が一日に何度もある。案件ごとに背景や関係者が異なるため、逐一説明するのも時間がかかります。気づけば「自分でやった方が早い」と判断し、どんどん仕事を抱えてしまう悪循環に。こうして、自分の首を絞めていくのが司法書士あるあるなんだと最近思えてきました。けれど、やめられないんですよね。真面目な性格ゆえに。

体調崩した時に初めて知る、“代わりがいない”という事実

数年前にインフルエンザで倒れたとき、業務が完全に止まりました。予定していた決済も延期、依頼者には謝罪、金融機関とのやり取りも全てストップ。「ああ、自分がいないと全部止まるんだ」と思った瞬間、情けなさと無力感で涙が出ました。自分にしかできない体制にしてしまったツケが、そこにあったのです。それ以降、無理してでも出勤するようになり、さらに体力を消耗する悪循環へ突入しました。

(以下省略)

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しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。