止まってほしい時間と、過ぎていく現実
毎日、時間に追われている。司法書士という仕事は、とにかく「締切」と「期日」によって生活が組み立てられていて、ひと息つく間もなく一日が終わってしまう。そんな中でも、たまにふと「この時間が止まってくれたら」と思う瞬間がある。忙しさの合間に訪れるわずかな静けさ、やっと訪れた穏やかな気持ち。そんなときに限って、時計はいつもより早く針を進めるように感じてしまうのだ。心はその時間にとどまりたいのに、現実は進んでしまう。
ゆっくりしたいのに、時計だけは進む
朝から晩まで仕事に追われていると、時間の感覚がどんどん狂っていく。依頼者対応、電話対応、役所とのやり取り、登記申請…。一つひとつは重要だけど、終わりが見えない。まるで時間だけが勝手に前へ進み、自分は取り残されていくような気持ちになる。ゆっくりと、ただ穏やかに何も考えずに過ごしたい。そんな願いは、皮肉にもやらなければならない業務の山によって打ち砕かれていく。
たった10分でも止まってくれたら
ある日、午後の2時半を過ぎた頃だった。次の登記申請まで少しだけ時間が空いた。事務員が外出していて、事務所には自分ひとり。そのとき、ほんの10分でいいから、何も起きず、誰からも連絡が来ないでいてほしいと心から思った。現実にはその10分すら安心して確保することが難しい。メールの通知音が鳴り、依頼者からの相談電話が入り、結局また時間は流れていく。静かに流れる時間を、せめて一瞬でも味わいたいと思ってしまう。
終わらない仕事に追われる日々
司法書士の仕事には「ここまでやれば終わり」という線がない。誰かのために動いている限り、次から次へとやるべきことが生まれる。目の前の業務に集中しても、次の日には別の案件が待っている。そんな日々の繰り返しの中で、「時間が止まってくれたら」と願うことは、贅沢ではなく、生きるための小さな願いのような気がする。せめて自分の心だけでも、その場にとどまっていたいと思うことがあるのだ。
穏やかな時間ほど早く感じる不思議
人と話していて、ほっとすることがある。依頼者との雑談や、たまたま立ち寄ったカフェでのひととき。そういう「無防備な時間」は、驚くほど早く過ぎ去っていく。安心して過ごせる時間がもっとゆっくり流れてくれたらいいのにと、何度も思う。でも現実は、嫌な時間ほど長く、心地よい時間ほど短いという不公平な仕組みになっているようだ。
久しぶりに空を見上げた昼休み
昼休みに、ふと空を見上げた。雲がゆっくり流れていて、風も心地よく吹いていた。ああ、今日はこのままどこかに行きたいなと、ほんの一瞬だけ思った。でも、すぐにスマホが鳴って現実に引き戻される。「先生、至急対応してほしい件が…」という内容。せっかく心が落ち着きかけていたのに、またバタバタと日常に巻き込まれていく。空を見たあの数分だけが、今日という日の救いだった気がする。
一瞬だけ「もう少しこのままで」と願った
たった一瞬の安らぎが、どれほど貴重なものかを知ってしまったからこそ、惜しくてたまらない。休憩中、静かにコーヒーを飲んでいたとき、窓の外から聞こえた鳥の声や、遠くの子どもの笑い声が、妙に心に染みた。仕事に戻らなければいけないことは分かっていたけれど、もう少しだけ、この時間に身を委ねていたいと思った。その「もう少し」が、たまらなく遠く感じた。
司法書士という職業の時間感覚
この仕事は、時間の流れを常に意識させられる。登記の締切、申請書類の期限、相続のタイミング…。すべてが「いつまでにやるか」に縛られていて、少しでも遅れれば信頼を失いかねない。だからこそ、自分のペースで動く時間がほとんどない。時間に追われる生活は、体力だけでなく心も消耗させる。
締切と期限に追われる生活
月末、年度末、相続税の申告期限…。どれもこれも「期限付き」の案件ばかり。カレンダーを見るたびに、胃が重くなる。前もって進めておけばいいと分かってはいるけれど、急な相談や予定外の依頼が日常茶飯事のこの業界では、それもなかなか難しい。気づけば「次はいつまでにやらなければ」という言葉を毎日口にしている。人生が「TODOリスト」でできているような感覚に陥る。
申請期限、登記の期日、スケジュール地獄
期日という名のプレッシャーは、常に背中に張りついている。書類の提出が数日遅れただけで、大きなトラブルにつながることもある。だからこそ、確認と準備に時間をかけたいのに、次の案件がすぐに舞い込んでくる。まるで止まらないベルトコンベアの上に乗っているような感覚だ。どこかで降りたい。でも、降りたら仕事が止まってしまうというジレンマ。
気がつけば一日が終わっている
朝、「今日は早く帰ろう」と思っていたのに、気がつけば夜の8時。結局またコンビニ弁当で済ませ、パソコンに向かっている。「何やってるんだろうな」と呟きながら、予定表を確認する。明日も明後日も予定はびっしり。こんな毎日の中で、「時間が止まってくれたら」と思うのは、きっと弱さじゃなく、正直な感情だと思いたい。