「このくらいなら大丈夫でしょ？」の一言が招く地獄
この言葉、耳にした瞬間から警戒モードになります。「このくらいなら大丈夫でしょ？」──そう言われた仕事ほど、後からとんでもない手間がかかる。司法書士として働いて20年以上、この言葉にどれだけ振り回されてきたことか。最初は軽く引き受けたつもりが、調べてみると書類は足りないわ、関係者に確認が必要だわ、気づいたら夕方になっている。そんなことが日常茶飯事です。善意で動いたはずなのに、結果的に自分の首を締めている。そんな思いを何度したかわかりません。
その一言で、背負わされる責任の重さ
「このくらい」と言っても、相手の基準とこちらの基準は全然違う。特に登記や相続の手続きでは、一枚の書類のミスが大きな損害につながる。相手にとっては気軽なお願いでも、こちらにとっては命綱を預かるようなものです。「ちょっと見てくれませんか？」と頼まれた資料にミスがあれば、責任を問われるのはこちら。感謝どころか、後からクレームが来るのがオチです。善意が仇になるのを何度経験しても、「断る勇気」を持てない自分が情けないやら、悔しいやら。
「ちょっとやっておいて」で済む案件なんて一つもない
依頼者から「ざっと確認してほしいだけです」と渡された書類。表面だけ見れば簡単そうに見える。でも、調べていくうちに、不動産の筆が複雑に絡んでいたり、相続人の一人が海外に住んでいたり。そういう地雷が後から出てくるのが常です。時間がない中、こっちも焦って処理してしまうと、後で自分にツケが回ってくる。結局、簡単な案件なんて一つもないと、何度も肝に銘じてるのに、また繰り返してしまうんですよね。
小さな頼まれごとが、結局一番面倒な結末になる
一番面倒なのは「ついででお願い」されること。主案件とは関係のない、住所変更の手続きとか、名寄せ確認とか。これが地味に手間を取られる。市役所でのやりとり、法務局との確認…これだけで半日潰れる。メインの登記と比べて報酬にもならず、感謝もされない。でもやらなきゃ進まないから結局やる。こういうことが重なると、本当に精神がすり減るんです。
断れない性格が招いたトラブル集
僕自身、基本的に断るのが苦手です。特に高齢の依頼者や、顔なじみの地元の方に頼まれると「まぁ、仕方ないな」と引き受けてしまう。でも、それが大きなトラブルに発展することがある。口頭だけで話を進めたばかりに後で揉めたこともあったし、「そんな約束はしていない」と言われて頭を抱えたことも。気を遣って断らなかったせいで、後で何倍も苦しむ羽目になる。いい加減学びたいのに、性格ってなかなか変えられません。
優しさではなく、ただの“都合のいい人”
ある時、常連の不動産屋から「今回は大したことない案件なんで、ちゃちゃっとお願い」と言われた。結局、その案件は数ヶ月に及ぶトラブルに発展し、報酬も微々たるもの。しかも、ミスがあったわけでもないのに、最後は「ちょっと対応が遅かった」と文句まで言われた。「ああ、自分はただの便利屋扱いだったんだな」と実感しました。優しさで引き受けたつもりが、相手から見れば“断らない人＝使いやすい人”。それだけなんです。
「言ってくれればやったのに」と言われた時の虚しさ
事務員に仕事を頼んだ時、「言ってくれればやったのに」と言われたことがあります。その通りなんですが、自分でやった方が早いと思って抱え込んでしまうことが多いんですよね。でも結局、疲れだけが残って、事務所全体の雰囲気も悪くなる。自分で全部背負うのがカッコいいと勘違いしてたのかもしれません。もう少し人に頼る勇気も必要だったなと、反省ばかりです。
事務員一人では受け止めきれない現実
うちは事務員一人、僕一人の小さな事務所。効率良く回さないと、すぐに詰まってしまう。そんな状況で「このくらいなら…」と軽い気持ちで案件を受けると、事務員にも皺寄せがいく。結果的にお互いが疲弊して、無言で時間だけが過ぎていく日も増えてきました。お互いに気を遣いすぎて、本音が言えなくなる。小規模事務所ならではのつらさかもしれません。
頼れるはずの相棒にも負担がのしかかる
事務員は真面目でよくやってくれる。でも、僕の無理がそのまま彼女の負担になってしまう。忙しい時期に僕が「これ、ついでにお願い」と軽く渡した資料に不備があって、怒られたこともある。事務員に怒る自分も嫌で、でもイライラは止まらない。全部、自分の「このくらいなら」の判断が甘かったせいです。お互い疲れていても、感謝や労いを伝える余裕もなくなっていく。この状況、なんとかしないといけないんですけどね…。
お互いに疲弊して、笑顔が消える日々
昔は、忙しくても笑い合いながら仕事できていたんです。でも今は、朝から無言、昼も黙々と作業、夕方になるとため息の応酬。事務所に笑顔がない。これって完全に悪循環です。原因ははっきりしている。「このくらいなら大丈夫」と仕事を詰め込みすぎているから。でも一度そのペースが当たり前になると、なかなか戻せないんですよね。働き方の見直し、真剣に考えないとダメなんだと実感してます。
「大丈夫」が口癖になっていないか？
「大丈夫です」「任せてください」って、僕の口癖でした。でも、最近はその言葉が自分を追い詰めてる気がしてなりません。体調が悪くても「大丈夫」、気分が落ち込んでても「大丈夫」。でも実際は全然大丈夫じゃない。心も体も限界なんです。誰かが心配してくれても、つい笑ってごまかしてしまう。そんな自分を少しずつ変えていきたいです。
