責任だけが増えていく日々──一人きりの現場で立ち尽くす司法書士の本音

責任だけが増えていく日々──一人きりの現場で立ち尽くす司法書士の本音

今日もまた、一人で現場を回す

朝から晩まで、ひとりで書類とにらめっこ。電話は鳴り止まず、登記の締切は容赦なく迫る。気づけば昼ご飯もまともに食べていない。事務員さんはいてくれるけれど、責任を負うのは結局こっち。たとえば先日、登記申請で法務局に行った帰りにふと思った。「これ、全部一人でやってなかったら、どんなに気持ちが楽だろう」って。けれどそんな「たられば」は叶うことなく、今日も僕はひとりきりで現場を回している。

電話、書類、登記……全部自分でさばく日常

午前中だけで10件以上の電話、メールの対応、急な書類修正。そんな日は珍しくない。特に不動産登記が重なった日などは、朝に確認した内容が夕方には変更になっていることもザラで、そのたびに調整と修正の繰り返し。事務員に任せられる作業もあるけど、結局最後は「司法書士としての確認」が必要になる。つまり、全部目を通さなきゃならない。まるで終わりのないマラソンを走ってる気分だ。

分業の夢、叶わぬ現実

理想を言えば、専門ごとに分業して効率的に回したい。でも現実はそんなに甘くない。そもそも地方の小さな事務所じゃ、人を雇うだけでも精一杯。新人を育てる時間も余裕もない。結局、多少無理をしてでも自分でやるしかない。そしてその「多少の無理」が、いつの間にか慢性的な疲労やストレスに変わっていることに、ふと気づくんだ。

「あとでやろう」が命取りになる怖さ

登記の世界で「あとでやろう」は通用しない。たったひとつの確認漏れや、提出の遅れが致命的なトラブルにつながる。以前、つい「明日でいいや」と後回しにした案件で、相続人の一人の住所が変更になっていたことに気づけず、再提出になったことがあった。その瞬間、冷や汗が出た。責任の重さって、こういう小さな「油断」に牙をむく。

事務員はいても、責任はすべてこっち持ち

事務員がいて助かってはいる。でも、登記の本質的な判断や、顧客への対応の「最終判断」は僕の仕事。責任という名のバケツリレー、最後のバケツはいつも自分のところに来る。事務員が間違えたことでも「司法書士が気づかなかった」となれば、信用を失うのは僕だ。どこかで常に気を張っていなければならない。それが一番、こたえる。

何かあれば「司法書士が悪い」

お客さんにしてみれば、事務所で起きたすべては「司法書士の責任」。例え事務員が対応した部分でも、最終的には「あなたが監督してたんでしょう?」という目で見られる。実際、あるトラブルの際、こちらが直接関与していない手続きだったのに、クレームの電話は僕宛てに来た。名指しで怒鳴られた時、「やっぱり全部俺なんだな」と心のどこかで納得してしまった。

教えながらも、自分の尻も拭く毎日

事務員を育てるって、簡単じゃない。教えるにも時間がかかるし、覚えたと思ったらまた別のミスが出る。その都度、説明しなおして、かつ自分の仕事もこなす。「二人分の責任を一人で持ってる」っていう感覚。おかしな話だけど、誰かのサポートが増えた分、逆に自分のタスクが倍になったような気分にすらなるときもある。

心の支えが見つからない

誰かに弱音を吐きたくなることもある。でも、同業者に愚痴るのは格好悪いし、友人もだんだん司法書士の仕事の話にはついてこられなくなる。気づけば、心の内を話せる人がいない。職場で何かあっても、「まあ、しょうがない」と自分で飲み込む癖がついてきた。でも、その「しょうがない」が積もりに積もって、ふとした瞬間に涙が出そうになることもある。

相談できる相手がいない孤独

ある意味、独立した司法書士って「社長」だ。でも小さな事務所では、社長も雑用も全部自分。経営の話、法律の話、実務の話……相談したいけど、話す相手がいない。業界の勉強会や会合もあるけど、そこでは逆に「ちゃんとしてる自分」を演じてしまう。心の中で「俺、実は全然余裕ないんだよ」って叫びたくなる日がある。

「ミスできない仕事」のプレッシャー

登記の世界に「ちょっとくらい間違ってもいい」はない。ひとつの文字ミスが、大問題に発展することもある。そんな緊張感の中で、ずっと張り詰めて働くのは本当にしんどい。ある時期、胃が痛くて夜も眠れない日が続いた。ストレスだってわかってたけど、仕事を止められない。プレッシャーと戦いながら、静かにすり減っていく。

優しさは弱さと見なされる場面も

顧客対応で「丁寧さ」や「思いやり」は大切。でも、優しさを見せすぎると舐められることもある。特に男性の司法書士は、「毅然とした態度」が求められがち。以前、丁寧に対応していた依頼者に「頼りなさそう」と言われてショックを受けたことがある。その一言で、自分の優しさが否定されたような気がした。難しいバランスの中で、いつも迷っている。

モテないとかいう次元じゃない

冗談みたいな話だけど、マジで恋愛どころじゃない。休日にデートなんて、何年行ってないか思い出せない。婚活アプリに登録してみたけど、メッセージのやりとりすら続かない。職業欄に「司法書士」と書いたら「かたい人ですか?」って聞かれた。夜に一人でコンビニ弁当食べながら、「こんな生活で本当にいいのかな」と思う瞬間がある。

休日に予定なんてあるわけがない

一応カレンダー上では「休み」になってる日曜日。でも実際は、平日に片付かなかった業務を持ち帰ってやっている。登記の資料確認、メールの返信、経理処理……。せめて半日だけでも遊びに出ようとした日も、途中で依頼者から電話が鳴ってUターン。休日は「休むための日」じゃなくて「取りこぼした仕事を片付ける日」になってしまった。

誰かの声が恋しくなる夜

夜、家に帰ってふとテレビをつける。でも、誰の声も聞こえない部屋に戻ると、その静けさが心に刺さる。たまには人と飲みに行きたい。でも誘う相手もいないし、気力もない。そんなとき、コンビニのレジで「温めますか?」と聞かれるだけで、ちょっと救われる。そんな自分が少しだけ哀しくなるけど、それでも誰かの声がありがたい。

責任感が、自分を追い詰める

「ちゃんとやらなきゃ」「間違えちゃいけない」そう思えば思うほど、自分を締めつけてしまう。でもこの仕事は、そういう責任感がなければ続かないのも事実だ。とはいえ、自分の限界に気づけないまま頑張りすぎて、ある日プツンと切れてしまう危うさもある。真面目さゆえに、自分を追い詰めてしまう。それが、この仕事の怖さでもある。

やらなきゃ、という思いが止まらない

誰にも言われていないのに「やらなきゃ」と思ってしまう。それが習慣になっていて、休むことに罪悪感を覚える。ある日、体調が悪くて午後を休もうとしたとき、なぜか「こんなことで休んでいいのか」と自問自答していた。自分で自分を縛ってる。周りがなんと言おうと、自分のなかの「律しなきゃ精神」が止まらない。それがしんどい。

「完璧主義」の罠にハマる瞬間

ミスを恐れて、完璧を求めてしまう。でもその完璧主義が、逆に効率を下げることもある。チェックを何度もしすぎて、時間が足りなくなったり。昔、「ちょっとした修正」に3時間もかけてしまい、他の案件に手が回らなくなったことがある。そのとき思った。「完璧なんて幻想だ」って。でも、やっぱり怖くて、今日もまた何度もチェックしてしまう。

自分を許すタイミングがわからない

一日の終わりに、「今日は頑張った」と思いたい。でも心のどこかで「もっとできたんじゃないか」と自分を責めてしまう。誰かに「それでいいよ」と言ってほしい。でも現実には、自分で自分を許すしかない。でもその「許す」っていうのが、なかなか難しい。気がつけば、何年も自分を責めっぱなしだ。優しくしてやりたいのに、それができない。

同じように頑張っている誰かへ

ここまで読んでくれたあなたも、きっと何かを抱えてる人だと思う。僕は司法書士として書いてきたけれど、別に同業者じゃなくてもいい。責任を一人で背負って、頑張ってる人は、きっとこの社会にたくさんいるはずだ。だから、もしあなたが今日も「しんどいな」と感じたなら、僕と同じように一息ついてほしい。一人で抱え込まないでほしい。

一人じゃないと伝えたい

僕もあなたも、たぶん孤独と責任のなかで踏ん張ってる。でも、そんな人は世の中にちゃんといる。顔も名前も知らないけど、あなたの頑張りを知ってる人間が、ここにいる。僕はあなたに、「一人じゃないよ」って伝えたい。今日もやりきったあなたに、「お疲れさま」と声をかけたい。あなたの頑張りは、ちゃんと意味がある。

顔の見えない仲間がいるということ

ネットやSNS、こうして文章を通じてでも、つながれる人がいる。顔は見えないけれど、同じように背負ってる人がいるって思えるだけで、少しは楽になる。弱音も愚痴も、誰かが受け止めてくれると信じていい。僕もそう思いながら、今日もキーボードを打ってる。誰かの「ちょっとだけ心が軽くなる」きっかけになれたらうれしい。

愚痴っていい、弱音も吐いていい

真面目な人ほど、「弱音を吐いたら負け」って思いがちだ。でもそんなことない。たまには愚痴っていい。弱音を吐くことは、甘えじゃない。むしろ、自分を守るために必要な行動だ。僕も今、この文章を書きながら、たっぷり愚痴をこぼしてる。でも、書いてみたら少しだけ心が軽くなった。あなたもどうか、無理せずに。

自分を責めすぎないための工夫

完璧じゃなくていい。ミスしたっていい。そんな風に思える瞬間が、少しずつ増えてきた。最近は、自分をねぎらうためにコンビニスイーツを買って帰ることもある。それだけでも「今日は自分に優しくできたな」って思える。小さな工夫でも、積み重ねれば意味がある。あなたも、自分にちょっとだけ優しくしてみてください。

「しんどい」と声に出す練習

「疲れた」「つらい」「しんどい」──そういう言葉を、口に出すことが難しい人もいる。僕もそうだった。でも最近、意識的に言うようにしてる。たとえ独り言でも、「今日は疲れたな」と言うだけで、少し気が楽になる。言葉にするって大事なんだ。声に出して、自分の気持ちを受け止めてやる。そんな小さな練習から始めてみよう。

ちょっとした工夫で心を軽くする

忙しい中でも、自分のための「ちょっとしたこと」を意識している。お気に入りのコーヒーを淹れてみたり、帰り道に夜風にあたって深呼吸したり。そんな時間があるだけで、少しずつ心に余裕が戻ってくる。人生は長いマラソン。だからこそ、途中でちゃんと給水を取って、自分を休ませてやらないとね。あなたも、忘れずに。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。