平日休めない時点で不利だと感じる瞬間
司法書士という職業に限らず、自営業やフリーランスで働いている人なら共感してもらえるかもしれない。「自由な働き方」に見えて、実は役所や銀行の“平日稼働”に縛られる日々。平日にしか動かない機関の存在が、自分の行動範囲や選択肢を大きく制限してしまう。好きなときに休めると思っていたのに、実際には「平日が休めない」という事実が、気づかぬうちに不利に働いていることもあるのだ。
自分で選んだはずの自由が足かせに
独立したときは「もう会社に縛られない」と思っていた。ところが現実は、自由とは名ばかりの制約だらけ。たとえば登記業務は、銀行や役所、法務局が稼働している平日しか動けない。土日に作業しようにも、肝心の窓口が閉まっている。おかげで、友人との旅行や家族との用事すら「平日は無理」と断ることが日常になった。結局、会社員時代よりも“平日に縛られる”働き方になってしまったような気すらする。
役所・銀行・法務局のカレンダーが最優先
業務スケジュールは、ほぼすべてが官公庁の稼働カレンダーに依存している。「この日が登記の締切だから」「あの役所がこの曜日しか対応していないから」といった外部要因に支配され、自分の都合は後回し。役所が休みなら自分も強制的に休み、逆に混雑日と重なれば土日返上で準備する。結果として、平日休みを取るという選択肢はどんどん消えていく。そしてそのツケが、私生活にじわじわ響いてくる。
誰とも予定が合わなくなっていく
久しぶりに連絡をくれた友人に「平日の夜に飲まない?」と誘われても、「ごめん、その日は契約が入ってて…」と断る。休日にゆっくり会いたくても、相手は会社員。土日に動けないこちらとは、予定が合わない。気づけば連絡の数も減っていき、「誘っても無理だよね」と言われる始末。自分では変わっていないつもりでも、平日休めない生活が、周囲との関係を少しずつ変えてしまうのだ。
プライベートの充実が犠牲になる
趣味のイベント、美容院の予約、役所関係の個人用手続き…それらはたいてい平日しか対応していない。でも自分もその平日を“業務”で埋めなければならないため、結果的に全部後回しになる。気がつけば、プライベートは仕事の合間に滑り込ませるようなものになり、「何も予定がない休み」は幻の存在に。平日を使えないというだけで、人生の選択肢はこんなにも減るのかと、驚くほどだ。
健康管理すら後回しになる現実
歯科検診の予約も、眼科の定期検診も、「その日は依頼者の面談があるから」とキャンセル。次の予約は数週間後。そんな調子で、自分の体を気遣う暇すらない。土曜診療がある病院は少なく、平日しか行けない場合は、業務を中断する覚悟がいる。だからと言って「午後だけ抜けよう」とすると、逆に午前中に仕事が押して通院を断念、なんてこともある。身体のケアは大事とわかっていながら、日々の業務に飲み込まれていく。
楽しみの予定が「申し訳なさ」に変わる
たまの休みに美術館や映画に行こうと計画しても、平日に行けば空いているはずなのに、その平日が空かない。仮に「行こう」と予定を入れても、依頼の連絡が入れば「予定変更せねば…」と考えてしまう。いつの間にか「休む=申し訳ない」という思考に支配されていた。本来の“楽しみ”が、罪悪感と隣り合わせになってしまった瞬間に、働き方のゆがみを感じるのだ。
一人でやっている不自由さ
補助者がいない事務所では、自分が全てを抱えるしかない。誰かに任せて自由に動くこともできないから、電話当番も、書類の確認も、自分ひとり。だからこそ、「今日は病院に行くから事務所を閉めます」と気軽に言えない。たった1日でも留守にすると不安がつきまとう。責任の所在が自分にしかないからこそ、休みの一歩がとても重たいのだ。
“不利”を受け入れたうえでの生き方
「平日休めない時点で不利」と感じながらも、この仕事を選んだことを後悔はしていない。むしろ、そうした制約の中でどう自分の時間を取り戻すか、その工夫こそが、自営業の醍醐味なのかもしれない。全てをコントロールできなくても、せめて小さな楽しみを見つけて、自分の暮らしを守っていく。そんな姿勢が、これからの“働き方”の鍵になる気がする。
週の中で「休む勇気」を持つ
平日でも「この午前中は休む」と決めたら、ちゃんと休む。それが、意外と大きな変化を生む。無理をして全てに応えようとするのではなく、自分のペースを整えることも、立派な仕事の一部。午前中だけでも映画に行ければ、心に余裕が生まれる。役所や銀行のリズムに合わせるだけでなく、自分のリズムも尊重していいのだと思う。
「できません」と言える関係性づくり
依頼者に「その日は対応できません」と言うのは勇気がいる。でも、それを言わないと自分が潰れてしまう。信頼関係があるなら、きちんと事情を伝えれば理解してくれる人も多い。逆に、無理を重ねた結果、疲れた顔で対応すれば、それこそ信用を失うかもしれない。だからこそ、誠実に、でも無理せず、バランスをとる。その積み重ねが、自分の働き方をつくっていくのだ。