なぜかトラブル案件に限って後回しにできない
司法書士という仕事は、地味に見えて実は「火消し役」のような面があります。普通の登記なら流れ作業で済むところ、トラブル絡みの案件は一筋縄ではいきません。書類の不備や依頼人同士の対立、予想外の相続争い…。経験上、そういった案件を「ちょっと置いておこう」と思った瞬間に、後でとんでもない手間と精神的負担となって戻ってきます。結局、自分で自分の首を絞めるのです。先送りして得られるのは時間ではなく、重たいストレスだけでした。
先延ばしが引き起こす「二次災害」の恐怖
「明日でいいや」が、後になって「なんで昨日やらなかったんだ」と自分を責める元になります。トラブル案件ほど、放置している間に状況が悪化していることが多い。相手の不信感は募り、関係者の感情もこじれます。私の事務所でも、一度クレームになりかけていた相続登記を先延ばししていた結果、依頼人同士が訴訟寸前になったことがありました。急いで仲裁に入りましたが、すでに信用はガタ落ち。手遅れでした。
相手の感情が時間とともに悪化する
人の感情って、時間が解決するどころか、むしろ逆なんですよね。こちらが放置している間、相手はどんどん不安と怒りを募らせていきます。特にお金や相続に絡む話は、ちょっとした放置が「軽く見られている」と感じさせてしまう。実際、以前対応を後回しにしていた相続相談で「ずっと無視されていた」と怒鳴り込まれた経験があります。対応が遅れただけなのに、誠意がないと思われるんです。怖いですよ。
「対応が遅い」という印象は信用を奪う
司法書士という立場上、どれだけ仕事が丁寧でも、「対応が遅い」と思われたらアウトです。世の中、スピード感が大事な場面が増えています。とくにネットからの相談は「すぐ返信があるべき」と思われがち。たとえ丁寧な対応を心がけても、遅ければ信頼は消えていきます。実際、以前の案件で「先生のところは対応が遅くて不安だった」と口コミに書かれ、次の依頼につながらなかったこともあります。
書類の山に紛れていく恐怖
事務所が忙しいと、どうしてもトラブル案件を「あとでゆっくり考えよう」と後回しにしがちです。でも、それが書類の山の中に埋もれてしまうんですよね。ふとしたときに「あれ、あの件どうなってたっけ」と青ざめることになります。私は一度、書類の奥底から1か月以上放置していた契約書が出てきて、冷や汗をかいたことがあります。手をつける勇気さえあれば、早く終わったはずの案件でした。
忘れたころに爆発するのが一番つらい
恐ろしいのは、忘れたころに連絡が来て「どうなってますか?」と聞かれることです。その瞬間、背筋がゾッとします。頭の中が真っ白になって、言い訳も浮かばない。謝るしかないんです。「忙しくて…」なんて通用しません。むしろ「忙しいなら他の先生に頼めばよかった」と思われるだけ。放置したツケは、ある日突然ドカンと爆発します。私にとって、それが一番精神的にきつい瞬間です。
面倒だけど最初に向き合うと案外早く終わる
面倒くさいと思っていた案件でも、いざ手をつけてみると意外とスムーズに片付くことがあります。やる前は「これは大変だ」と思い込んでいるだけ。やり始めたら30分で済む、なんてこともよくあります。先日も、放置しそうになった不動産の名義変更を思い切って朝イチで取りかかったら、意外とシンプルなミスが原因で、サクッと処理できました。取りかかるまでの葛藤が一番の敵なんですよね。
初動の15分が勝負という経験則
私の中で「面倒な仕事こそ最初の15分が勝負」という法則があります。15分だけ手をつけてみると、脳がそのモードに切り替わるんですよね。そうなると意外と集中できて、途中でやめられなくなる。逆に手をつけないままだと、何時間も頭の片隅で「やらなきゃ…」というストレスが居座ります。そのストレスで他の作業の集中力も落ちるんです。だったら最初にやってしまった方が、はるかに効率がいい。
手をつけた瞬間から気持ちが軽くなる理由
不思議なことに、面倒な仕事ほど手をつけた瞬間から気が楽になります。着手前は「うわぁ、重たいな…」と思っていた案件でも、ちょっと調べ始めると「これ、なんとかなるかも」と希望が見えてくる。達成のイメージができると、気持ちがスッと軽くなるんです。元野球部のクセでいうと、練習前の気だるさが、グラウンドに立った瞬間に吹き飛ぶ感覚に近いかもしれません。
なぜ私はトラブル案件を避けたくなるのか
本音を言えば、トラブル案件を避けたくなるのは「怒られるのが怖い」「失敗したらどうしよう」という、情けない理由からです。自分でもわかってます。でも、電話口の声が怒ってるとわかった瞬間、体が固まるんですよね。どうしても「もうちょっとあとにしよう」と逃げたくなってしまう。その逃げ癖が、また自分を苦しめているという悪循環です。
怒られるのが怖い それだけだったりする
結局、怒られるのが怖いんです。子どものころからそうでした。先生に怒られるのも親に怒られるのも嫌で、叱られるかもしれないことは先延ばし。司法書士になってもその癖は抜けていません。理不尽な怒りでも、ぐさっと刺さる。メンタル弱いんですよね。だからこそ、トラブル案件に自分から向かっていくのは、毎回勇気がいる作業です。でも、その壁を越えない限り、楽にはなれない。
根本的に人に嫌われたくないだけかもしれない
私の場合、「怒られるのが怖い」の裏に「嫌われたくない」がある気がします。依頼人に嫌われると、もう一生頼んでもらえない気がしてしまう。独立してると特に、ひとりひとりの関係が命ですから。でもその感情が、自分を縛っていることもあるんですよね。完璧を目指して先延ばしにし、逆に信頼を失う。皮肉な話です。
元野球部のくせにメンタルは豆腐
こういう話をすると「元野球部なんだから根性あるでしょ?」と言われますが、いや、メンタル豆腐です。昔から気にしいで、試合前に吐きそうになるタイプでした。社会に出て、さらに責任が重くなってからは、プレッシャーに押しつぶされそうなことも多いです。そんな自分と向き合うたび、情けないやら悔しいやら。でも、そういう自分を許しながら、毎日なんとかやってます。
同じように悩んでいる司法書士さんへ
もしこの記事を読んでくださっている方が、同じような立場で「自分だけがダメなんじゃないか」と思っているなら、それは違います。みんな同じです。私もダメダメです。でも、毎日少しずつでも前に進んでいけばいい。完璧じゃなくていいんです。トラブル案件は怖い。でも、それを処理するたびに、自分もちょっとずつ強くなっていける気がします。